日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
モサプラミンのラットドパミンD3受容体への親和性―定量的in vitroオートラジオグラフィーによる解析―
二村 隆史下川 智子森尾 保徳芳賀 慶一郎福田 武美
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 106 巻 5 号 p. 339-346

詳細
抄録
Iminodibenzyl系抗精神病薬である塩酸モサプラミン(以下モサプラミンと呼ぶ)のラット脳内ドパミンD3受容体に対する親和性を,D3受容体選択的リガンドである[3H]7-OH-DPATを用いた定量的in vitroオートラジオグラフィー法により検討した.ラット脳薄切片を作製し,終濃度0.5nMの2-(N,N-Di[2,3(n)-3H]propylamino)-7-hydroxy-1,2,3,4-tetrahydronaphthalene([3H]7-OH-DPAT)と反応させると,リガンドの結合は中脳―辺縁系のカレハ島,嗅結節および側坐核に認められ,尾状核被殻や小脳第10葉においても弱いながら認められた.リガンドの結合は1μMドパミンにより完全に阻害された.モサプラミンは濃度依存的に[3H]7-OH-DPAT結合を阻害し,その作用は,測定した全ての部位においてハロペリドール,クロザピンに比べて強力であった.モサプラミンの阻害作用には脳部位間で差が認められ,尾状核被殻よりも嗅結節およびカレハ島で強かった.一方,ハロペリドール,クロザピンはどの部位においても同等の効力で結合を阻害した.モサプラミンのドパミンD3受容体に対する強力な親和性は,本薬物の抗精神病作用の発現にD3受容体への作用が一部関与することが示唆された.また,黒質一線条体系の尾状核被殻に比べて中脳一辺縁系の嗅結節,カレハ島のドパミンD3受容体に強く作用することと併せ,モサプラミンが錐体外路系副作用の発現が少ない抗精神病薬である理由の一つと考えられる.
著者関連情報
© 社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top