日本気管食道科学会会報
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症例
塩基性線維芽細胞増殖因子を用いた声帯内脂肪注入術—臨床応用の試み—
田村 悦代福田 宏之田畑 泰彦岡田 信也渋谷 正人飯田 政弘
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2009 年 60 巻 6 号 p. 476-482

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抄録

はじめに:声帯内自家脂肪注入術は,いわゆる声門不全疾患に対するリハビリテーション手術として普及してきた。しかし,注入後の吸収による効果の減弱は避けられず,注入量の決定が困難であった。イヌを用いた動物実験において,低濃度の線維芽細胞増殖因子の投与により注入後の吸収による減量が軽減できることを確認したので,学内の臨床審査委員会の認定を経て臨床応用をおこなった。
方法:塩基性線維芽細胞増殖因子を,自家脂肪組織に混合して2症例の声帯内に注入し,経時的に観察した。注入後の合併症の有無,効果の持続などについて検討した。
症例1:33歳,声帯溝症
症例2:62歳,男性,食道癌術後反回神経麻痺
結果:現在,いずれの例も術後1年以上経過しており症状は安定している。注入後の脂肪組織の残存量は,脂肪組織のみを注入した従来の方法に比較して,CT画像上,脂肪組織の残存量が多かった。また,注入後に重篤な合併症は認められなかった。
結論:線維芽細胞増殖因子を脂肪組織に混合して声帯内注入術を施行することによって,注入後に脂肪組織の残存率を改善させることができる可能性が示唆された。

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