日本救急医学会雑誌
Online ISSN : 1883-3772
Print ISSN : 0915-924X
ISSN-L : 0915-924X
症例報告
市中型MRSA(CA-MRSA)感染により,toxic shock syndromeを来した1例-抗菌薬の選択についての考察-
桑名 司木下 浩作上原 由紀古川 力丸杉田 篤紀小豆畑 丈夫丹正 勝久
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 22 巻 2 号 p. 70-75

詳細
抄録
市中型メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(community-acquired methicillin-resistant Staphylococcus aureus: CA-MRSA)による感染症がまだ少ないわが国で,toxic shock syndrome(TSS)の初期治療を計画する上で,どのように介入すべきかを検討した。症例は生来健康な31歳の男性。入院8日前に下腿II度深部熱傷(一部III度に伸展)を受傷し外来治療中であった。入院当日にTSSの診断基準を満たし,下腿熱傷部の壊死組織からmethicillin resistant Staphylococcus aureus(MRSA)が培養された。同菌の薬剤感受性が,一般的には院内感染によるMRSAでは感受性のないST合剤やCLDMに感受性が認められたため,CA-MRSAを疑い,菌株の遺伝子検索を行った。その結果,SCCmec type IVであり,CA-MRSAと判断した。現在,本邦のTSSの起因菌はMSSAの頻度が高く,CA-MRSAの頻度は低いと考えられるため,penicillin(PC)系もしくはcephalosporin系抗菌薬に加えてCLDMが第一選択薬となる。本邦のようにCA-MRSAの頻度が極めて低いと考えられる地域では,TSS症例に対してルーチンの抗MRSA薬の使用は避けるべきであるが,第一選択薬で症状の改善が認められない場合は,CA-MRSAによるTSSを考慮しCLDMに加えて,抗MRSA薬の投与を考慮する必要がある。今後,本邦でもCA-MRSAの割合が増えてくることが予想されるためCA-MRSAの疫学変化に注意が必要である。
著者関連情報
© 2011 日本救急医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top