日本消化器外科学会雑誌
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アラジール症候群と診断され長期経過観察中の患者に発生した肝細胞癌の1例
増田 雄一三輪 史郎名取 恵子宮川 雄輔横井 謙太鈴木 史恭横山 隆秀小林 聡宮川 眞一田中 榮司
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2008 年 41 巻 10 号 p. 1803-1808

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抄録
アラジール症候群 (Alagille syndrome; 以下, AGS) は常染色体優性遺伝の疾患で, 特異な顔貌, 心血管異常, 組織学的には肝内胆管の消失・低形成などが特徴とされる. 患者は49歳の男性で, 10歳時に当院にて開腹肝生検を施行され, 肝内胆管消失を認めAGSと診断されて以降, 近医にて治療経過観察されていた. 49歳時に腹部超音波検査にて肝右葉に巨大腫瘤を指摘され, 検査目的に当科へ紹介された. 精査にて肝腫瘍は肝細胞癌と診断され, 肝切除術が施行された. 術後経過は良好で術後第19病日に退院した. 切除肝の肉眼検査所見上, 腫瘍の最大径は12.5cmで, 部分的に壊死を認めた. 病理組織学的検査上, 腫瘍は中分化型肝細胞癌と診断され, 背景肝に胆管消失はなく, 慢性肝炎あるいは肝硬変の所見も認められなかった. AGSの長期観察症例, 肝硬変非合併症例の肝細胞癌発生・切除の報告はまれであり, 文献的考察を加えて報告する.
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