超音波医学
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症例報告
経胸壁ドプラ心エコー法により冠動脈近位部狭窄の診断が可能であった不安定狭心症の2症例
杉山 祐公鈴木 理代平野 圭一中村 啓二郎高橋 真生清水 一寛野池 博文田端 強志東丸 貴信
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2008 年 35 巻 4 号 p. 443-449

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抄録
経胸壁ドプラ心エコー法による冠動脈の描出が可能となり,冠血流速波形の解析から冠循環の評価が行われるようになってきた.冠動脈遠位部は検出率が高く,その血流評価に対する多数の報告がなされているのに対して,冠動脈近位部を評価した報告は少ない.今回我々は,経胸壁ドプラ心エコー法により,冠動脈近位部狭窄の診断が可能であった不安定狭心症の2症例を経験したので報告する.症例1:79歳,男性.胸痛を主訴に入院.発作時の心電図では II ,III,aVF,V3‐6のST低下を認めた.経胸壁心エコー検査では,左室壁運動が心尖部で若干低下していたが左室駆出率は正常であった.大動脈弁レベルの短軸像で冠動脈近位部を直接描出したところ,左前下行枝近位部に加速血流を認め拡張期最高血流速度は104cm/秒と高速であった.冠動脈造影の結果,分節6に99%狭窄を認め,経胸壁心エコー検査で認められた狭窄部と一致していた.狭窄部にステントを留置し良好な拡張に成功した.術後の経胸壁心エコー検査では,冠動脈内の加速血流は消失し拡張期最高血流速度は40cm/秒と正常化した.症例2:59歳,男性.胸痛を主訴に入院.発作時の心電図で II ,III,aVFの陰性T波を認めた.経胸壁心エコー検査では,左室壁運動異常は認めなかった.大動脈弁レベルの短軸像で冠動脈近位部を直接描出したところ,右冠動脈近位部に加速血流を認め拡張期最高血流速度は108cm/秒と高速血流であった.冠動脈造影の結果,分節1に99%狭窄を認め,経胸壁心エコー検査で認められた狭窄部と一致していた.狭窄部にステントを留置し良好な拡張に成功した.術後の経胸壁心エコー検査では,冠動脈内の加速血流は消失し拡張期最高血流速度は26cm/秒と正常化した.非ST上昇型の不安定狭心症において,経胸壁ドプラ心エコー法により冠動脈近位部の狭窄病変を直接描出することが可能であった.本法は,冠動脈近位部狭窄の有無を心臓カテーテル検査前に予測する上で有用な検査法と考えられた.
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© 2008 一般社団法人 日本超音波医学会
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