日本小児血液学会雑誌
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T細胞型急性リンパ性白血病 (T-ALL) の分子遺伝学
林 泰秀
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2008 年 22 巻 4 号 p. 300-305

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抄録

T細胞型急性リンパ性白血病 (T-ALL) は約半数で染色体異常がみられ, 染色体とキメラ遺伝子所見により1) T細胞受容体 (TCR) との転座, 2) MLLとの転座, 3) CALM-AF10の転座, 4) それ以外の融合遺伝子, 5) 染色体欠失 (9p-, 6q-など) に分類される.近年ABL1遺伝子との融合遺伝子がみいだされ, この転座は予後不良と推定されている.また, マイクロアレイの発現解析では (1) LYL1高発現のpro-T群, (2) HOX11の発現高値のearly cortical thymocyte群, (3) TAL1高発現のlate cortical thymocyte群の3つに分かれるとされ, HOX11高発現の (2) 群は予後良好と報告されている.近年, NOTCH1遺伝子の変異が約50%にみいだされ, この変異を有するT-ALLは予後良好と思われる.さらにFBW7 (CDC4) 遺伝子の変異が約15%にみいだされた.これらのことにより, T-ALLは分子遺伝学的に分類が可能となり, これらの病態解析を通じて新しい分子標的治療もみいだされると思われる.

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