抄録
症例は59歳,女性.某年7月の検診にて肝機能異常,血小板減少を指摘され当院を受診した.以前にC型肝炎を指摘されたことがあり,肝臓の精査目的で腹部CT検査を行ったところ,偶然,尾骨前面に6×4cm大の鶏卵型の腫瘤を認めた.嚢胞成分が主体の腫瘤で,混在する充実性部分や腫瘍壁内に石灰化や脂肪成分を認めた.奇形腫を疑い経仙骨的アプローチにて摘出術を行った.摘出標本は黄土色膿状の液体が充満した多胞性の嚢胞性腫瘍であり,病理組織検査にて平滑筋と線維性結合組織,扁平上皮,円柱上皮の三胚葉由来の成分から構成され奇形腫と診断した.悪性所見や未熟な成分は認めなかった.
成人の仙尾部奇形腫の本邦報告例は自験例を含め37例のみで,非常に稀な腫瘍である.