日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
症例
茎捻転で発症した多精巣症に伴う後腹膜原発の混合型胚細胞腫瘍の1例
熊谷 祐朝蔭 直樹鈴木 貴久塚田 健次小林 滋山崎 滋孝
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 69 巻 8 号 p. 2129-2134

詳細
抄録
症例は31歳,男性.突然の左側腹部痛を主訴に当院を受診した.腹部CT検査で下腹部正中に約10cm大の腫瘤を認め,腹腔内腫瘍の診断にて緊急入院となった.血液検査では炎症反応の上昇と共に,AFP 13,000ng/mlと著明な上昇を認めた.その後の検査でも確定診断には至らず,腹部症状も増悪してきたため診断,治療を目的に緊急手術を施行した.腫瘤は左後腹膜から立ち上がる茎を有し,反時計方向に720度回転し茎捻転を起こしていた.摘出標本は10×8×8cm大,腫瘤の割面は暗赤色モザイク状で,大部分は出血壊死に陥っていた.病理組織学的には精巣上体と精巣網を認める精巣由来の混合型胚細胞腫瘍であった.陰嚢内に正常の精巣が2個認められたことから自験例は,多精巣症に発症した混合型胚細胞腫瘍と診断した.多精巣症は検索した限り自験例を含め本邦報告例29例と極めて稀な疾患であり,若干の文献的考察を加え報告する.
著者関連情報
© 2008 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top