抄録
膀胱ヘルニア,閉鎖孔ヘルニアは各々稀な疾患である.今回,無症状の膀胱が嵌入した閉鎖孔ヘルニアを経験したので報告する.
症例は96歳,女性.発熱にて当院受診.血液検査,胸部レントゲンで異常を認めず,感染源精査のために施行した腹部単純CTで右閉鎖孔ヘルニアを認めた.腸管の拡張を認めなかったため,膀胱が嵌入した閉鎖孔ヘルニアを疑い,逆行性膀胱造影を施行した.造影後の腹部CT,レントゲンで右閉鎖孔に嵌入した膀胱が造影されたため,膀胱を嵌入臓器とした閉鎖孔ヘルニアと診断した.逆行性膀胱造影で嵌入した膀胱内へ容易に造影剤が流入したこと,ヘルニア自体が無症状であり,熱源とは関係なかったために,年齢,全身状態を考慮して手術は施行せず,経過観察とした.過去に膀胱が嵌入した閉鎖孔ヘルニアの報告は無く,本邦第1例の報告である.