抄録
上層に落葉広葉樹, 中·下層に常緑広葉樹から構成される二次林の6樹種について, 気孔コンダクタンスの日変化と季節変化を観測した. 観測された気孔コンダクタンスは, Jarvis型の気孔コンダクタンスモデルで表現し, どの環境因子が気孔コンダクタンスに影響を及ぼしているのかについて調べた. 上層木のコナラに関しては, 直達光にさらされる葉 (陽葉) とさらされない葉 (陰葉) とに分けて計測した.
陽樹であるコナラは, 日変化·季節変化を通して, 気孔コンダクタンスの変動量が大きかった一方, 中·下層の常緑広葉樹 (陰樹) は微少な変動に止まった. 気孔コンダクタンスと光合成光量子束密度との関係を光飽和曲線 (light response curve) と定義した場合, 陽樹はその光飽和点 (light saturation point) が高かったのに対して, 陰樹は光合成光量子束密度が小さい領域において, 光飽和曲線の初期勾配 (quantum yield) が大きかった.
Jarvis型の気孔コンダクタンスモデルにおいて, 影響度の低い環境因子をF検定により抽出した結果, この二次林では土壌水分ポテンシャルが当てはまった. 一方, 光合成光量子束密度, 気温, 飽差は気孔コンダクタンスに与える影響が大きい環境因子として重要であった. 落葉広葉樹のコナラでは, 新葉展開後の気孔コンダクタンスがそれ以外の時期とは異なる傾向にあり, 中·下層木のソヨゴ·ネズミモチ·アオキでは, 3月∼5月にかけて, 異年葉の気孔コンダクタンスの特性が異なる傾向にあった. 葉齢と気孔コンダクタンスとの関係については, 将来の研究課題と考えられた.