抄録
昆虫のGABA制御クロルイオンチャネルに存在する二環式リン酸エステル結合部位の構造に関する知見を得るために, 3位アルキル基置換チオノ型二環式リン酸エステル類を合成し, イエバエおよびチャバネゴキブリに対する共力剤存在下での殺虫活性と [35S] TBPSのイエバエ頭部膜画分への結合阻害活性を調べた. イエバエに対する局所施用で高い活性を示す置換基の順は, i-Pr>Me=H>Et=t-Bu>s-Bu>n-Prであった. チャバネゴキブリへの注射では, t-Bu=i-Pr>Me=Et>n-Pr=s-Bu=Hの順となった. n-Buとi-Buの場合は, 両アッセイ系においてほとんど活性がなかった. また, [35S] TBPS結合阻害活性は, t-Bu, i-Pr,s-Buの場合が高く, Me, Et, n-Pr, H, n-Buがそれに次いだ. i-Buの場合は活性が弱かった. 3位への炭素数3個までの長さのアルキル基の導入は作用部位への親和性を高め, t-Buとi-Prが最適であった. ただし, アルキル基2位での分枝は親和性を低下させた.