日本泌尿器科学会雑誌
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原著
α1受容体遮断薬投与後に過活動膀胱症状が残存する患者に対する酒石酸トルテロジンの臨床効果
辻村 晃高尾 徹也内田 欽也山本 圭介福原 慎一郎中山 治郎植田 知博平井 利明木内 寛宮川 康高橋 徹児島 康行奥山 明彦
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2009 年 100 巻 7 号 p. 686-692

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抄録
(目的)過活動膀胱(OAB)を合併する前立腺肥大症(BPH)患者に対する抗コリン剤の位置づけは未だ明確ではない.今回, 我々はα1受容体遮断薬単独療法では十分な効果が得られなかったOABを合併したBPH患者に対して, 酒石酸トルテロジンを追加することによる治療効果を検討した.
(対象と方法)対象は 4 週間以上のα1受容体遮断薬の内服でもOAB症状が持続したBPH患者47例.平均年齢は72.9歳, 平均前立腺体積は29.8mlであった.すでに服用中のα1受容体遮断薬とともに酒石酸トルテロジン4mgを 8 週間服用させ, 併用療法前後での排尿状態を各種質問紙と残尿測定で評価した.
(結果)8週間の併用療法を完結できたのは41例であった.IPSS, QOL-index, OABSSはいずれも有意に改善し, IPSSの蓄尿症状も有意に改善した(P<0.01).KHQについては, 生活への影響, 仕事・家事への制限, および身体的活動の制限において, 有意な改善を認めた(P<0.05).残尿量は変化せず, 尿閉を含めた重篤な副作用は全く認めなかった.
(結論)α1受容体遮断薬単独療法ではOAB症状が改善されなかったOABが合併したBPH患者に対して, α1受容体遮断薬と酒石酸トルテロジンの併用療法は効果的かつ安全な治療法であった.
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© 2009 一般社団法人 日本泌尿器科学会
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