抄録
低コストな湿式法で作製できる色素増感型太陽電池は,約10%の変換効率が報告されており,さらに高効率化が可能となれば低コスト高効率太陽電池としての実用化が期待できる.色素増感型太陽電池では,太陽光は色素によって吸収されるため,シリコン太陽電池などの半導体を用いた太陽電池に比べ利用できる波長領域が限られる.本研究では,利用できる波長領域の拡張,特により長波長側の太陽光が利用できる色素増感型太陽電池の作製を目指した.約10%の効率が報告されているRu(bipy)2(SCN)2色素での吸収をできるだけ妨げずに長波長側の吸収を拡張するために,ポルフィリンの一種であるPheophorbide aに注目し,これら色素を混合担持した「増感色素複合型太陽電池」を作製した.混合することによる効率向上には至らなかったものの,利用できる波長領域を広げることに成功した.また,対極の作製方法や両色素の混合比を変化させ収集効率の波長依存性および電流電圧特性を測定し,これら条件と太陽電池の諸特性との関係を調べた.