2002 年 43 巻 2 号 p. 121-124
症例は56歳, 女性. 単純性肝嚢胞の経過観察中に嚢胞内に充実性部分の出現を認め, 精査入院となった. 腹部超音波では嚢胞壁は全周性に肥厚し, 一部隔壁様構造を認めたが, CTでは超音波で見られた充実部は不明瞭で, 造影効果を認めなかった. また, 嚢胞壁の組織診で悪性所見は認めなかった. 嚢胞径は当初11cmであったが, 超音波上, 変化が見られた3週後には7cmと自然縮小した. 以上より, 単純性肝嚢胞内に出血が生じ, 凝血塊が超音波上腫瘍様に見えたと考え, 外来にて経過観察中である. 嚢胞径は更に縮小し, 9カ月後には4cmとなっている.
肝嚢胞内出血は画像上, 嚢胞腺癌を否定できないとして大半が手術を施行されているが, 腹部超音波像とCT像に解離が見られる場合, 嚢胞内出血の可能性を考え, 特に自然縮小傾向にあるような症例では, 経過観察が可能と考えられた.