2010 年 41 巻 4 号 p. 44-56
腹部大動脈瘤の発生・進展の特徴を明らかにするため,主として高齢者剖検例で著明な瘤形成例を除外した121例の病理組織学的標本について,計量組織学的検討を行った。大動脈内周と弾性線維層の厚さには相関は認められなかったが,瘤好発部位とその直上部における内周比率および弾性線維層の厚さの比率の検討から,弾性線維層の高度菲薄化が瘤形成の前段階となる可能性が示唆された。また,軽度瘤様拡張症例の一塊摘出標本の観察では,拡張部分に対応した弾性線維層の高度の減少が認められた。このことから弾性線維層減少は動脈壁に瀰漫性に生じるのではなく,部分的な高度欠損のパターンをとること,そしてこれによる壁の部分的脆弱化が瘤様拡張の要因であると考えられた。