杏林医学会雑誌
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原著
ラット肝損傷モデルを用いたキチン類スポンジ止血材の止血効果に関する研究
山田 賢治徳永 尊彦新倉 保黒住 誠司藤岡 保範樽井 武彦後藤 英昭松田 剛明島崎 修次山口 芳裕
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2013 年 44 巻 1 号 p. 3-11

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抄録

 10週令以降のWistar系雄ラット20匹に対し,全身麻酔下に腹壁正中切開にて肝臓を露出,肝外側左葉辺縁から5mmの位置に直径3mmの貫通創を作製し肝損傷モデルとした。脱脂綿とスポンジ型に加工されたキチン類を試料として創内部に充填し,2 分,3 分,5 分経過後に除去して,30 秒毎に創内に溜まる血液を吸引しながら,止血までの時間と出血量を測定した。また非充填と脱脂綿,キチン類とコラーゲンを試料として,それぞれ比較した。結果,2 分,3 分,5 分に対して止血時間と出血量は,脱脂綿でそれぞれ中央値14.5(9.0~17.0)分,11.0(10.0~13.0)分,10.8(7.5~13.0)分,及び中央値0.7(0.7~2.5)g,1.2(0.8~1.6)g,1.2(0.5~1.5)g,キチン類で中央値6.5(6.5~6.5)分,7.5(6.5~10.0)分,8.0(7.0~8.5)分,及び中央値0.8(0.7~1.0)g,0.6(0.3~0.9)g,1.5(0.7~1.6)g であった。キチン類止血材は脱脂綿に比較して短い時間で止血が得られた。コラーゲンとの比較では,キチン類の方が止血時間で短い傾向にあった。キチン類を試料とした組織標本では,止血面にフィブリンの析出は認められず,血小板血栓の形成が促進された可能性がある。

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