杏林医学会雑誌
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特集「癌治療とゲノム医療」
婦人科癌のゲノム医療
小林 陽一
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2019 年 50 巻 4 号 p. 199-202

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抄録

 婦人科癌とゲノム医療の関連性については,BRCA,BRCA2遺伝子変異が原因である遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)と,ミスマッチ修復遺伝子(MMR)異常が原因で子宮内膜癌を好発するLynch症候群がよく知られている。HBOCについてはPARP阻害薬であるOlaparibが保険適応となり,卵巣癌治療が大きく変化している。またLynch症候群ではコンパニオン診断においてマイクロサテライト不安定性(MSI)が高い症例について免疫チェックポイント阻害薬であるPembrolizumabが保険適応となり実臨床で応用可能となってきたが,他の領域と比較するとまだまだ使用可能な薬剤が少なく,立ち遅れている感が否めない。近年国際的ながんゲノムアトラスプロジェクト(TCGA)により,卵巣癌,子宮内膜癌,子宮頸癌の遺伝子プロファイルが明らかにされ,ターゲットとなる遺伝子異常の全貌が見えつつある。これらの解析によって,今までの組織型分類とは異なる遺伝子異常に基づいた新たな分類が提唱され,癌腫や組織型を超えた新たな治療戦略が展開されていく可能性が示唆されている。また遺伝子変異と免疫療法は密接に関連しており,婦人科癌においても免疫チェックポイント阻害薬の早期適応拡大に期待したい。

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