杏林医学会雑誌
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特集「公認心理師」
医師の立場から「公認心理師」に期待すること
渡邊 衡一郎
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2020 年 51 巻 1 号 p. 27-29

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抄録

2018年,ついに「公認心理師」が始動した。これまで主であった「臨床心理士」は認定協会による認定資格であり,心理分野における待望の国家資格の誕生である。
精神科医は当事者をとかく現症などから横断的に捉えがちである一方で,心理師は心理テストなどの技法を駆使し,縦断的に捉える。心理師からの情報は,我々精神科医が目の前の当事者について,より奥行きを持って捉え,正確な判断を行うための一助となっている。
現在の精神医療において,当事者からの精神療法へのニーズは増しているが,限られた時間の中で医師がその全てに応えることは難しい。そこで心理師の出番であるが,認知行動療法が「看護師」が行った場合にのみ保険上算定されて来たことからも分かるように,心理師達の労力に対して,これまで適切な対価が支払われてこなかった。今後,「心理師」が国家資格となったことで認知行動療法を初めとする心理師達が行う精神療法が算定されるようになれば,これまで以上に様々な治療法を呈示することが可能になると考える。
認知行動療法などの精神療法の実施,リサーチアシスタントなど,医療施設における心理師の活躍の場は多岐に亘る。国家資格化を機に,これまで以上に精神科医と心理師が密に連携することで,より当事者のニーズに応えることが可能となり,ひいては臨床の質の向上につながることが期待される。

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