2020 年 51 巻 1 号 p. 3-10
がん患者血中microRNA(miRNA)は,診断や予後予測のための低侵襲性マーカーとして期待されてきた。しかし,これまで肺癌の再発マーカーとして確立したmiRNAはない。近年,各種組織や細胞のmiRNA deep sequencing解析により,miRNAデータベースmiRBaseに登録されているmiRNA(miRBase型)と末端の長さが僅かに異なるisoform(isomiR)が多数存在することが分かってきた。本研究において,肺腺癌の再発マーカーの検索を目的とし,患者1例について,RNA deep sequencingにより外科的切除前,切除後,および再発5ヶ月前の血清miRNAプロファイルを比較した。患者血清中には約550種の成熟miRNAが検出され,isomiRの総read数はmiRBase型miRNAの総read数を上回った。また,13種類の新規miRNA候補を同定した。既知のmiRNAの解析において,血清サンプル間でread数が顕著に異なるisomiR 3種,miRBase型miRNA1種を選出した。このうちのisomiR2種,および新規miRNA候補のうちの1種は,再発5ヶ月前のread数が切除7週後の約7.0〜14.9倍であった。これら3種は,肺腺癌患者血清において,再発前に顕著に上昇する可能性が考えられる。