杏林医学会雑誌
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原著
乳癌における可溶性アデニル酸シクラーゼの発現パターン
吉池 信哉藤原 正親井本 滋菅間 博
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キーワード: Soluble adenylyl cyclase, sAC, AC10, breast
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2020 年 51 巻 2 号 p. 103-111

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抄録

Soluble adenylyl cyclase (sAC) は, 従来の AC と異なり細胞膜ドメインを持たず核や細胞質, ゴルジ体に局在する。sAC は, 悪性黒色腫で核内に局在し, 前立腺癌で細胞質における発現量が増加する。前立腺癌と同様に性ホルモン感受性を持つ乳癌では, sAC の発現パターンは検討されていない。本研究の目的は, 乳癌における sAC の発現パターンを免疫組織学的に明らかにし, その意義を細胞の増殖能および下流シグナルに着目して検討することである。Triple-negative (TN) type 乳癌では, 核内局在を高率に認め, luminal B type 乳癌で細胞質の発現が低下していた。sAC が核内に局在する TN type 乳癌は, 高い Ki-67 陽性率を示した。多くの症例で sACの核内局在と pCREB の発現に相関は認められなかった。本研究結果は, 乳癌における sAC の多彩な発現パターンを明らかにし, TN type 乳癌では核内の sAC が増殖に関与する可能性を示した。

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© 2020 杏林医学会
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