杏林医学会雑誌
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特集「ここまできたがん免疫療法」
がん免疫療法の進歩,免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカー
緒方 貴次坂東 英明
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2020 年 51 巻 3 号 p. 189-194

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抄録

近年がん免疫療法が脚光を浴び,免疫チェックポイント阻害薬を中心に治療開発が進んでいる。2020年6月時点で使用可能な免疫チェックポイント阻害薬は、抗CTLA-4抗体、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体が6種類となっており,がん種によっては他剤との併用についても承認されている。しかし,免疫チェックポイント阻害薬は効果のある症例が限定的であり,致死的な有害事象が出現する可能性もあることから,効果の期待できる症例を選択することが課題となっている。高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)やtumor mutational burden高値,PD-L1の高発現などが有効なバイオマーカーとして報告され,臨床試験ではtumor-infiltrating lymphocytes,腸内細菌叢やヒト白血球型抗原タイプなどがバイオマーカーの候補として研究されている。特にMSI-Hを有する全固形癌にペムブロリズマブが薬事承認されており,国内初の臓器横断的な承認であり,今後の薬剤開発にも重要であった。また,免疫チェックポイント阻害薬を投与することで急速に腫瘍が増大することがあり,そのような症例は非常に予後不良であることから急速増大を予測するバイオマーカーも検討されている。

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