杏林医学会雑誌
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原著
リードレスペースメーカ植込み後の急性期および長期成績
毛利 崇人佐藤 俊明冨樫 郁子上田 明子三輪 陽介星田 京子野々口 紀子田代 身佳百瀬 裕一勝目 有美副島 京子
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2020 年 51 巻 4 号 p. 257-263

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抄録

 恒久ペースメーカ植込み時の合併症や課題の多くは経静脈リードに関連している。Leadless pacemaker(LPM : リードレスペースメーカ)植込後早期の良好な治療成績は報告されているが,本研究ではLPM植込み後の電気的指標を計測し長期成績を評価した。
方法 : 当院にてLPMを植込んだ徐脈性不整脈患者を,植込み後最長5年間経過観察した。
結果 : 対象は51例(年齢 ; 79±9歳,男性 ; 32例[64%],房室ブロック ; 25例[49%],洞不全症候群 ; 26例[51%],心房細動合併 ; 38例[75%])である。心筋損傷リスク因子総数の中央値は2項目であり,心筋穿孔や心嚢液貯留,脱落,動静脈瘻などの急性期主要合併症は認めなかった。植込み後平均21.5ヶ月の経過観察中にLPM関連死はなかった。1例では植込み54ヶ月後に心不全が進行し,心臓再同期療法へのアップグレード手術を施行した。全ての患者において電気的指標(右室捕捉閾値,右室波高,抵抗値)は安定しており,慢性期の閾値上昇,早期電池消耗による再手術やデバイス感染の合併はなかった。
結論 : LPM植込み後急性期主要合併症は認めず,最長5年の慢性期においても測定値は安定していた。LPMは,徐脈性不整脈に対する新しい治療で,長期的にも安定した治療成績を有することが示された。

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