日本内科学会雑誌
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多彩な臨床経過と,広汎な血行性脳転移を示した, Hodgkin病の1剖検例
岩田 征良秋口 一郎小川 弘道藤原 哲司田村 忠雄若林 章齋明寺 央熊谷 直家河合 忠一田坂 捷雄天野 殖
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1977 年 66 巻 7 号 p. 837-844

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抄録
症例. 25才,女子. 1973年11月lymphocyte depleted, reticular typeのHodgkin病, stage IV B, per disseminatum (pd後述)と診断.化学療法が一時効果を示したが, 1975年1月頃より進行性に精神神経症状を呈して,約3ヵ月後に死亡した. Hodgkin病における組織, stage診断は予後と密接な関係があり,とくに“reticular type, stage IVB”は最も悪い. stage IVをその病巣のひろがり方からper contiguitatum (pc)とpdにわけると, pdの方がさらに予後が悪いとされる.本症例では各種の治療により,全身のHodgkin病の進行をおさえたが,高度の免疫不全をおこした.そして末期に顔や手に疣贅(いわゆるいぼ)が著明に増加するとともに,亜急性に脳炎症状を呈したので, progressive multifocal leucoencephalopathy (以下PML)とその原因と推定されるpapova virusを問題とし,生検,剖検によるvirus groupの検出につとめたが結果は陰性であり,脳内にreticulum cellの広汎な血行性転移を認めた.さらに本症例はHodgkin病と診断がつく以前の1972年頃より,蛋白尿,血尿,黄疸,末梢血液中の異型リンパ球,単球の増加等,種々の臨床症状を呈したので,これらの多彩な臨床経過と病理所見につき検討を加え報告した.
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