当科では1996年以降, 75歳以上の高齢者乳癌症例に対し,腋窩リンパ節郭清を省略し,術後の抗エストロゲン剤投与をprospectiveに行ってきた.今回その妥当性を検討した.高齢者乳癌119例(N1b以上の症例を除く)を対象とし, 1990～1995年の47例をA群, 1996～2000年の72例をB群とした.腋窩リンパ節郭清施行率はA群68%, B群24%であった. ER陽性率,年齢,組織型,両側例,重複癌,化学療法,術後照射,初再発臓器に有意差はなかった. B群では早期例および部分切除例が多く認められた.累積5年生存率はA群56.5%, B群91.3%とB群で良好であった.観察期間の相違があるが, B群で良好な生存率が得られたことから,高齢者乳癌では腋窩リンパ節郭清を省略し,抗エストロゲン剤の補助療法で良好な成績が得られることが示唆された.
