2004 年 65 巻 6 号 p. 1607-1612
症例は64歳,男性.スクリーニングの大腸内視鏡検査で下行結腸およびS状結腸に隆起性病変を指摘され,診断的EMRにてMALTリンパ腫と診断された.いずれも免疫グロブリン重鎖の遺伝子再構成で単クローン性が証明され,再構成バンドのパターンから同一クローンと診断された.大腸原発のMALTリンパ腫と診断し, H. pylori除菌療法を2週間施行したが,腫瘍の縮小効果は認められず,左半結腸切除およびD2郭清を施行した.腫瘍は漿膜下層まで浸潤し, 1群リンパ節転移を認めた.術後CHOP療法を6クール施行し,初診時より4年経過した現在無再発生存中である.本症例のMALTリンパ腫は,大腸の二つの病変が遺伝子再構成検索にて同一クローンと診断されたことから,大腸原発で大腸内転移をきたしたと考えられた.