「日常身のまわりにあり,わかりやすい」と考えられた20音からなる独自の環境音認知検査を試作し, 結果を解釈する上で留意すべき点について検討した.健常群50名と失語症群40名に (a) 直接応答法 (口頭,書字,動作表現) ,(b) 間接応答法 (1/4選択による絵の選択) の両応答法によって検査を施行した.
検査の結果,健常者でも各検査音についての (1) 聴覚的な特徴の違い, (2) 年代の相違による日常性の違い, (3) 知識の違い, また直接応答法では (4) 表現力の違いなどによっては, 誤りが生じる可能性があること,一方失語症者では (1) ~ (4) に加えて, 直接応答法では失 語症による応答障害,間接応答法でも意味論的レベルの認知障害が影響を与える可能性のあることがわかった.臨床検査では直接, 間接の両応答法を用いることが必要であり, 反応潜時も認知プロセスの時間的側面を評価する上で有用である.個々の認知障害は, 誤りの要因を十分に検討した上で判断する必要がある.
抄録全体を表示