日本画像学会誌
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43 巻, 4 号
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Imaging Today
『たかが紙,されど紙,やはり紙』
  • 小高 功
    2004 年 43 巻 4 号 p. 219-226
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    紙は,パルプ化した植物繊維を水の媒介により平板状に成形し,繊維の交差部を水素結合させた,体積の約半分が空気という,ネットワーク構造体である.その製造工程は,植物(木材)繊維を抽出するパルプ化工程,パルプに各種の前処理を施す調成工程,パルプスラリーを紙にする抄紙工程に大別されるが,各工程が単繊維特性や構造特性を決定し,更に応力や水分の履歴も付加されて,紙独特の特性が生み出されている.印刷インクなどの液体吸収性はネットワーク構造の空隙と繊維内部の微細な空隙が担っており,また,このネットワーク構造は要求される強度と弾性特性を比較的容易に両立させることができる.繊維の膨潤性に起因し,それがネットワーク構造を伝播して顕在化する紙の水分伸縮は,応力履歴の記憶に基づく粘弾性的挙動を示し,各種特性の異方性や表裏差も関与して,極めて複雑な寸法安定性やカール特性を決定している.
  • 柴 裕一
    2004 年 43 巻 4 号 p. 227-232
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    JIS(日本工業規格)の定義では,「コーティング,塗工とは印刷,包装などの用途に応じた特性を紙に持たせるために,コーターによって原紙に塗剤を塗ること.coating」とある.印刷に応じた特性とはオフセット,グラビア,感熱,インクジェット,電子写真等の各種印刷方式によって異なる.本稿では大量印刷で主流を占めるオフセット印刷用のコート紙を中心にその分類,特徴,製造方法について述べる.紙は植物繊維などのパルプの集合体であり,厚みを揃え平滑度を付与するためにカレンダー処理という平滑化処理を最終的におこなうが,その表面には数ミクロンから数10ミクロンの凹凸が残っている.コート紙の使用は,非コート紙では達成できない平滑度を得ることを第一の目的としている.また,コート層を設けることにより,任意の光沢度や白色度が設計できるようになり,更にインキ溶剤の吸収を高めるための細孔をコート層に形成することができる.
  • 倉田 俊彦
    2004 年 43 巻 4 号 p. 233-240
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    「機能紙」の概念は定まったものではなく,時代や社会などの環境や個人によっても異なる.それ故,ここでは個人的な判断で「機能紙」について説明する.機能紙は新しい繊維や粉体及び薬品などを用い,抄紙技術や塗工技術などを活用して紙に高付加価値を与えている.
     また,私が関わった機能紙の開発についても紹介する.
  • 井上 正行
    2004 年 43 巻 4 号 p. 241-245
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    筆者の考えている合成紙の定義を述べ,その歴史を概観した.製法についてはユポ・コーポレーション社で纏めた合成紙の製造方法を引用しつつ簡単に解説した.又,合成紙のマーケットについても分野別にふれた.
  • 小池 直正, 加藤 真
    2004 年 43 巻 4 号 p. 246-251
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    インクジェット印刷はあらゆる基材に適用できる汎用性の高い印刷技術であるが,高品質の印刷物を得るためにはインク吸収性およびその均一性,高発色性,耐水性,耐光性,耐ガス性,プリンタ搬送性などについて最適化されたインクジェット専用紙を用いる必要がある.現在最も頻繁に使用されている専用紙としては,ノンコート紙,マット紙,キャスト紙,レジンコート紙があり,それぞれ目的に応じた最適な設計がなされている.最近のプリンタ技術側の進歩に伴い,用紙に要求される特性も変化してきており,従来あまり問題とされなかった特性に対しても改良が求められるようになってきている.
  • 加藤 勝
    2004 年 43 巻 4 号 p. 252-259
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    電子写真用紙の走行性,トナー転写性,トナー定着性について課題と用紙特性について概説した.また,最近市場が拡大しつつあるデジタル印刷機分野に適したPOD用紙としてコート紙,高グロス紙等について特徴と性能を述べた.最近の電子写真複写機・コピー機の技術向上は目覚しく画質の向上,高速化,省エネルギーなどの点で改善が著しい.さらに色材のトナーはオイルレス化,重合トナーの改良で画質向上への寄与が大きい.また,給紙や定着方式の改善など要素技術の改良が進んでおり,市場やシステムの動向に対応し用紙の面からも走行性の安定化,高画質化,高機能化,低コスト化への取組みを継続する必要があると考えられる.
  • 五十嵐 明
    2004 年 43 巻 4 号 p. 260-265
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    紙は記録材料用支持体として最も好まれて使われてきた.しかし,感熱記録材料用支持体としては問題点が多い.代表的なものが,熱伝導率の不均一性である.この不均一性は.記録画像中に濃度ムラをもたらし画像の品位を落とす.本稿では感熱記録材料の支持体設計の考え方についてまとめた.
  • 宮西 孝則
    2004 年 43 巻 4 号 p. 266-275
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    近年,環境に対する意識の高まりにより古紙処理技術開発が進み,日本の古紙回収率は高くなっている.オフィス古紙と雑誌古紙を新聞用紙と印刷用紙に配合するためにはトナーの脱墨と粘着異物除去の技術開発が必要である.
  • 江前 敏晴
    2004 年 43 巻 4 号 p. 276-284
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    画像がもつ情報を印刷メディアである紙を使って伝達する場合には,その情報は紙の特性にも大きく左右される.印刷に関係すると考えられる主な紙の特性について,定義とその測定方法を解説し,それらを規定する規格であるJISを付記した.紙は吸湿性が高く,紙の調湿及び試験のための標準状態は23°C/相対湿度50%と規定されている.構造的な特性としての坪量,厚さ,密度の定義と測定方法を解説した.光学特性はイルミナントCで拡散照明/0°受光で測定するのが標準であり,白色度,不透明度,色,光沢度の意義を示した.紙の不透明性は比散乱係数の高さに由来するものでその計算による求め方及び紙とプラスチックの比較を示した.力学特性として,引張,耐折,引裂の各強度と紙間摩擦係数の測定方法について述べた.最後に,ISO規格の最近の動向として古紙パルプ,再生紙についての規格が整備されていることを報告した.
  • 中村 博昭
    2004 年 43 巻 4 号 p. 285-288
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    製紙産業の起点をたどりつつ,その将来展望を考察した.今世紀における世界的な紙資源需給の逼迫を目前にして,印刷情報用紙分野の最大の課題は,再生パルプの利用が可能な印刷・情報記録材料の基本設計とその生産システムの構築である.シンプルで高性能なインクジェット印刷技術の普及と輪郭コーティング技術の採用で,これまで平版印刷技術とブレードコーターによって造られたコート紙が主導してきた大量生産,大量消費の時代を変革する動きが始まっている.
  • 前田 秀一
    2004 年 43 巻 4 号 p. 289-295
    発行日: 2004年
    公開日: 2006/07/01
    ジャーナル フリー
    電子メディアの出現によって,世の中の情報の絶対量が増えるとともに,代表的なアナログメディアである紙の役割が変ってきた.従来,紙は情報の記録と表示という二つの機能を担ってきたが,記録機能については電子メディアに代替されつつある.一方で,電子メディアでは実現不可能な,紙の高い表示機能が評価されるようになってきた.その優れた視認性の理由から,紙はデジタル情報と人を繋ぐインターフェースとして必要不可欠な存在となっている.今後の紙メディアと電子メディアの関係は,オフィス文書のように共存共栄するもの,新聞のように補完関係が成立するもの,書籍の電子化にみられるように紙が電子メディアに代替されるものなどに分類できる.従って,紙メディアの使用量に多少の減少が見込まれるとしても,バリアフリー,メンテナンスフリーといったユーザーフレンドリーな特長を有する紙がこれからも生き続けることは間違いない.
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