日本画像学会誌
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45 巻, 1 号
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原著論文
  • 星野 勝義, 工藤 宝, 平澤 雄輔, 金 商国
    2006 年 45 巻 1 号 p. 3-10
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/11
    ジャーナル フリー
    ガラス基板上に有機顔料粒子を堆積する新規コーティング法あるいは画像形成法を提案する.この手法は,均一系光触媒反応を利用するものであり,堆積浴としては,顔料(フタロシアニン),顔料を分散するための界面活性剤,光触媒(Ru(bpy)3Cl3, bpy=ビピリジン)そして電子受容性犠牲試薬([Co(NH3)5Cl]Cl2 )を分散あるいは溶解した水性媒体を用いる.フォトマスクとガラス基板を通して光照射(450nm)を行ったところ,フタロシアニンと水酸化コバルトから成るハイブリッド膜(パターン)が得られた.膜形成に及ぼす露光時間,露光強度,及び界面活性剤タイプの影響を検討し,膜堆積機構に関するモデルを提案した.また,得られたハイブリッド膜の暗時及び光照射下での,表面型セルを用いた電気伝導度の測定から,ハイブリッド膜は光電感度を有することがわかった.
  • 松井 利一, 久保田 健一
    2006 年 45 巻 1 号 p. 11-21
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/11
    ジャーナル フリー
    協調視覚モデルの応答から導出された濃度ムラ評価値と画点構造ノイズ評価値を特徴とする画像ノイズ評価法が既に提案され,ディジタルカラー複写機の画像ノイズ評価へ適用された.本論文では,本評価法の基本性能をさらに明確化すると同時に,画像形成方式に対する不変性を検証する為,出力解像度を変化させたインクジェットプリンタ出力画像(単色画像と色重ね画像)から両評価値を算出し,主観評価値との一致性を調べた.その結果,単色画像に対する画点構造ノイズ評価値以外は,出力解像度の増加に伴う画像ノイズ量の減少傾向が理論的に導出でき,主観評価値との相関性も高くなる(相関係数値は0.951~0.989)などの特性が明確化された.以上は,本画像ノイズ評価法がインクジェットプリンタにも基本的に適用可能であり,画像形成方式に不変な画像ノイズ評価法になり得ることを示唆する.さらに,インクジェットプリンタに必要な出力解像度は,単色均一濃度の理想的条件で3600×3600dpi以上と予想された.
  • 物部 祐亮, 山下 春生, 黒沢 俊晴, 小寺 宏曄
    2006 年 45 巻 1 号 p. 22-31
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/11
    ジャーナル フリー
    近年,撮像装置は目覚しい進歩を遂げ,ダイナミックレンジの広い画像を容易に撮影できるようになってきた.しかし,ディスプレイデバイスで表示できる輝度レンジは依然として狭く限られている.本論文では,RetinexCenter/Surround モデルに基づき,注目輝度と周辺輝度の比から推定した反射率画像を入出力画像で不変に保つことにより,自然なコントラストの見えを維持してダイナミックレンジを圧縮する手法を提案する.提案手法は,[1]空間可変型の変換オペレータLCRTLocal Contrast Range Transform)の作用により,入力画像と同等の視覚的コントラストを維持する,[2]領域内での明るさのバランスや自然な陰影が維持される,[3]単一スケールの周辺領域のみ参照して行う処理であるにも拘らず,輝度差の大きな領域境界付近においても帯状妨害(Banding)がほとんど現れない,などの特徴を有している.本論文では,Retinexとの動作特性の違いを理論的考察に基づいて議論するとともに,評価実験を通して提案手法の特徴および有効性を明らかにする.
Imaging Today
『有機半導体材料の光電物性—有機ELの材料と将来動向』
  • 松末 哲征
    2006 年 45 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/11
    ジャーナル フリー
    有機材料に電流を流すことで発光する有機EL 現象は,1960年代に確立され,1987年,コダック社の発表により実用化への検討が加速された.そのブレイクスルー技術の一つが機能分離型積層構造である.有機EL 素子の更なる高性能化には,材料面のみならずデバイス構造の更なるブレイクスルーが必要である.本章では,近年検討されている有機EL 素子の新規デバイス構造を紹介する.有機EL 素子を複数積層した構造を有するマルチフォトンエミッション素子は,内部量子効率が100%を超える画期的なデバイスであり,有機EL 素子の課題である素子寿命も大きく向上させる技術として注目されている.その他,複合機能を有する有機EL 素子も併せて紹介する.
  • 中村 雅一
    2006 年 45 巻 1 号 p. 40-46
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/11
    ジャーナル フリー
    有機薄膜トランジスタ(OTFT)に関して,動作の基本原理と研究の流れを紹介する.有機に限らず,典型的なTFTでは,ゲート電極/絶縁体/半導体層状構造の半導体側にゲート電圧によってどのようにキャリアが蓄積するかによって基本的な動作が決まる.チャネル幅やキャリア移動度は大きいほど,またチャネル長は小さいほど,出力電流が多く流れる.従って,キャリア移動度が高い半導体材料の探索,ならびに,チャネル幅/チャネル長をいかに簡単なプロセスで大きくするかが研究の主要な流れである.前者については,現在飽和傾向であり,根本的なブレークスルーが待たれる.現状でTFT として用いる場合,アモルファスシリコンと同程度の性能である.後者については,短チャンネルデバイスの例として,我々のグループで研究している縦型トランジスタの作製法とそれによって得られた素子を紹介する.
  • 服部 励治
    2006 年 45 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/11
    ジャーナル フリー
    有機ELディスプレイを有機薄膜トランジスタ(TFT)によって駆動する場合に必要な有機TFTの条件(移動度,接触抵抗,寄生容量,ON/OFF比など)を最も基本的なピクセル回路であるスイッチングTFTと駆動TFTから成る2TFT回路において検討した.それぞれのTFTにおいて移動度は両者ともアモルファスシリコン程度が必要であるが,その他の条件は各TFTにおいて要求値が異なる.有機TFT開発では移動度の向上だけが注目されがちであるが,それ以外の特性も大切である.
  • 小林 隆史, 内藤 裕義
    2006 年 45 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/11
    ジャーナル フリー
    π共役系高分子は,ウェットプロセスによりEL デバイスを作製することが可能であり,大型平面ディスプレイの本命材料として期待されている.しかし光電物性が製膜条件に強く依存するため,分子配列を制御しなければ目的に応じた特性を引き出すことは難しい.例えばポリフルオレンでは凝集構造により発光波長が17nmも変化し,また蛍光量子収率も大幅に変化する.またポリチオフェン薄膜は高秩序化することで,大幅に蛍光量子収率が減少する反面,ある特定の向きでは非常に高いFET移動度が得られる.π共役系高分子を用いて高性能なデバイスを作製するためには,用いる高分子における凝集構造と物性の関係を把握することが極めて重要である.
  • —高効率電子注入・輸送機構と材料開発—
    小山田 崇人, 安達 千波矢
    2006 年 45 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/11
    ジャーナル フリー
    現在,有機EL(OLED)は三重項励起子の利用によって,100%に迫る内部EL 量子効率が実現されたが,更なるエネルギー変換効率の向上が期待されている.本論文は,特に,電子注入・輸送過程に焦点を絞り,低駆動電圧化のための素子構造設計について述べる.特に新しい電子注入輸送材料としてPOPy2を用いることにより,4V の印加電圧で100mA/cm2以上の高電流密度が実現された.
  • 都築 俊満, 時任 静士
    2006 年 45 巻 1 号 p. 66-69
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/11
    ジャーナル フリー
    燐光材料を発光材料として用いた有機EL 素子は,従来の蛍光材料を用いた素子に比較して,高い発光量子効率が得られるため,高効率・低消費電力のディスプレイや照明機器への応用が期待されている.1998年の白金ポルフィリン誘導体を用いた素子,1999年のイリジウム錯体を用いた素子の報告以来,国内外の研究機関やメーカーにより活発な研究が行われてきた.現在では,赤,緑,青の三原色の燐光を示す材料が開発され,これらの燐光材料およびその誘導体を用いた有機EL 素子の研究が多数報告されている.発光効率については,外部量子効率で20%を超えた報告例もある.本稿では,有機EL 素子用の低分子燐光材料の研究開発状況について概説する.
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