日本画像学会誌
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46 巻, 5 号
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原著論文
  • 中山 和広, 面谷 信
    2007 年 46 巻 5 号 p. 352-356
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    電気泳動表示方式等に用いられる非水系の液体においても水系理論が拡張適用され,液中微量イオンが粒子周囲に集まり粒子電荷として駆動力を発生させると説明されてきたことに関し,本研究ではその妥当性について検証を試みた.非水系液体中,液中イオン濃度を増減させた液を用いた泳動実験,典型的な粒子材料に関して空気中と液体中での帯電極性・帯電量の対応を調べた結果,非水系液体中の微量イオンの増大が粒子の帯電に寄与せずむしろ粒子の泳動を抑制する場合があること,また空気中で確認された粒子極性・帯電量が液中での粒子極性・帯電量と対応を示す場合があることが確認された.これは,非水系における粒子電荷が,液中微量イオンに由来するとは考えにくい場合があることを示すものであり,水系の電気泳動理論を非水系においてそのまま拡張適用することには無理があり,非水系に特化した新たな泳動理論の体系化が必要であることを示唆する.
  • 小島 聡, 面谷 信
    2007 年 46 巻 5 号 p. 357-362
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    人間が金色を認識するメカニズムは未解明であり,人が金色と感じる対象物についての物理的な測定結果は黄色である.本報告では,対象物の形状(3次元情報)の認識により初めて金色が認識できるという仮説をたて,形状認識と金色認識の関係について検証実験を行った.金色の対象物を含む画像を認識させる3つの条件,(1)ぼかし画像,(2)モザイク画像,(3)短い画像呈示時間,における認識実験を行い,認識が困難な条件から次第に容易な条件へと呈示条件を段階的に変化させたとき,全実験の全被験者において形状認識が金色認識と同時または先行して確認された.本実験結果は,対象物の形状認識が金色認識の必要条件であるという前記仮説を支持している.支持された前記仮説は,金色は青色や赤色と同格の単なる「色」の概念ではなく,色の分布情報から対象物の形状に対応した特定の反射特性(金属光沢)を確認できたときに初めて得られる,より上位の認識概念と位置づけることが妥当であることを意味する.銀色の認識メカニズムについても同様な説明が可能である.
  • 加藤 陽子, 姫野 龍太郎
    2007 年 46 巻 5 号 p. 363-370
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    生体組織に負荷されるせん断応力および応力は疾病の進行と関連がある.せん断応力は流速分布に,応力は組織形状に依存する.せん断応力,応力共に時間と共に変化するため,同時刻に計測することが望ましい.Phase-contrast法は,位相を用いて速度を計測する手法であるが,静止領域における位相分布特性が把握できれば生体組織形状を評価することが可能となる.更に,緩和時間は組織によって異なっている.以上のことから本研究では,緩和時間が静止領域の位相分布に与える影響を評価した.分割された位相範囲に含まれ,互いに接する点を1つのparticleとし,その伸張方向を評価パラメータとして用いた.その結果,particleの伸張方向は緩和時間によって影響を受けていた.Particleの伸張方向は緩和時間の違いを評価し,組織形状を把握することに有効であると考えられた.
Imaging Today
  • 鈴木 明
    2007 年 46 巻 5 号 p. 372-384
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    紙の様に薄く,文字や画像が表示できる電子ペーパーは,1990年後半辺りから提案されている.次いで,2004年に松下電器社から“ΣBook”(液晶タイプ),ソニー社から“Librie”(電気泳動タイプ)が市場に投入され,この年が電子ペーパー元年と言われている.その後,多くの電子ペーパーのプロトタイプや商品が続々と登場し,色々な用途に広がり,賑わってきた.一方,それを担う関連技術も多岐にわたり,それぞれ進化してきている.
    本稿では,“電子ペーパーとは”から始まり,現状の用途,市場,技術内容を紹介し,さらに一年以内で開催された有力な関連学会であるInternational Display Workshop(IDW)2006('06年12月,日本),SID2007('07年5月,米国)等から,最近の電子ペーパー技術動向を報告し,各技術の達成状況,及び今後の課題を整理し,まとめてみた.
  • 有澤 宏
    2007 年 46 巻 5 号 p. 385-389
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    われわれは赤緑青の表示層を積層する構成で光アドレス電子ペーパーのカラー化を検討している.この構成は原理的に明るい表示が可能である.しかし,それぞれの色を独立に制御する方法がなく,新たに発明しなくてはならないという課題がある.その課題を解決するために,外部からの電圧制御だけでカラー選択を可能にしたしきい値シフト法,異なる色のアドレス光を照射することによって各層の反射状態を選択的に制御する補色OPC法を考案し,検証してきた.そして,フルカラー化の現実的な手段として,これら2つの方法を組み合せたハイブリッド法にも取り組んでいる.
  • 川居 秀幸
    2007 年 46 巻 5 号 p. 390-395
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    我々は,マイクロカプセル型電気泳動材料(MEP)とLTPS-TFT回路転写技術であるSUFTLATMを組み合わせることにより,フレキシブル電気泳動ディスプレイ(EPD)方式電子ペーパーを実現すべく研究開発を進めている.MEPは,印刷物に近い表示特性を有する上にフレキシブル化が容易であり,電子ペーパーへの利用に適している.しかしその一方で,応答が遅く閾値特性を持たないことから駆動のためにはアクティブマトリクス(AM)を必要とする.我々は,高精細表示パネルを実現するために,a-Si TFTと比較して圧倒的に高い性能を有するLTPS-TFTを選択し,さらにTFT回路をフィルム基板上に転写形成するための技術であるSUFTLATMを独自に開発した.転写手法は,フィルム基板上へTFTを直接形成する手法と比較して,LTPS本来の性能を引き出す上で大きな優位性がある.SUFTLAで作製したフィルムTFT基板と,EInk社のMEPシート(E Ink Imaging FilmTM)を張り合わせることにより,7.1インチQXGA(397ppi)フレキシブルAM-EPDパネルを開発し,曲げた状態での動作を確認した.
  • 田沼 逸夫
    2007 年 46 巻 5 号 p. 396-400
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    我々は電子粉流体®を用いたカラーディスプレイとフレキシブルディスプレイを開発中である.カラーディスプレイは着色した電子粉流体®を用いたものとカラーフィルターを用いたものがある.また,同時にフレキシブル化にも取り組んでおり,ポリエステルフィルム基板を中心に開発を進めている.本誌ではQR-LPD®の可能性に関して実用例を入れて紹介する.
    加えて,新開発のフレキシブルドライバICを用いたオールフレキシブルディスプレイに関しても紹介する.
  • 藤田 博之, 年吉 洋
    2007 年 46 巻 5 号 p. 401-406
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    本論文では,静電駆動のプルイン現象を利用して,指先がトレースした軌跡を電気機械的に保持する方式の電子黒板の試作例を報告する.指先などで押しつけて記録したイメージは,電子黒板への駆動電圧を解除することによって一斉消去が可能である.また微小な磁石を用いて電子黒板の膜の一部分を持ち上げることによって,部分的に画像を消去することもできる.駆動原理は非常に単純であるため,ロール印刷やエンボス加工等の製法によって大面積デバイスに拡張することができる.また,同様のプロセスによって製作可能な,透過型のカラーピクセルについても報告する.このカラーピクセルは,静電駆動によって干渉長を変化できるファブリペロ干渉計が駆動原理となっている.
  • 石井 隆一
    2007 年 46 巻 5 号 p. 407-410
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    2006年10月ソニーは,マサチューセッツ工科大学が開発した「E INK」方式電子ペーパーを搭載した携帯読書端末「Reader」を米国に投入したが,販売も好調に推移している.90年代以降,ソニー以外にも米国において電子書籍の導入を試みた会社はあったが,いずれも需要は大きくは伸びず,市場はほぼ無いに等しい状態が続いていた.かかる状況下,ようやくReader投入により市場の可能性が見えてきたと言える.ここでは,市場の動向,消費者の潜在ニーズ,出版社のニーズ,他社の動向を述べた上,成功理由を考察し,将来,更なる市場拡大のための電子書籍端末を展望する.
  • 有澤 宏
    2007 年 46 巻 5 号 p. 411-415
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/10/13
    ジャーナル フリー
    日本画像学会電子ペーパー部会では,「電子ペーパーの将来像を考える」を部会課題に設定し検討してきている.2004年からオフィス用途の電子ペーパーを議論した.オフィスの使用シーンを分類することにより,十人十色であった電子ペーパーは,紙のような表示媒体を複数枚用いて閲覧するペーパータイプと電子書籍のように1画面の表示媒体をページ送りして使うディスプレイタイプの2つのモデルに集約された.オフィス用途の電子ペーパーの技術予測も行なった.
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