日本画像学会誌
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50 巻, 6 号
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原著論文
  • 大良 智夫, 面谷 信
    2011 年 50 巻 6 号 p. 498-502
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    人が金色と認識している対象物は,物理的な測色結果によると黄色である.我々は,形状認識が金色認識の前提条件であるとの仮説を提示し,これを支持する実験結果を既に示している.本報告では,金色対象物表面における周囲環境の映り込みに着目した.我々は鏡面状の対象物表面への映り込みが対象物の形状認識を容易にし,結果的に金色認識に寄与すると想定し,これを検証するための実験を行なった.照明条件の調整により映り込みの無い状態と有る状態で金メッキスプーンを撮影し,撮影した画像中の対象物の形状と色を被験者に評価させた.金色認識の主観評価結果は,映り込みの無い画像では金色認識が困難になることを示した.同時に,形状認識の主観評価結果は,映り込みの無い画像では形状認識が難しくなることを示した.これらの結果から,対象物表面への周囲物映り込みは対象物の形状認識を容易にし,結果的に金色認識を容易にすると結論づけた.
  • 中川 秀信, 元 洋一, 赤松 秀一, 猪熊 嘉寛, 宮村 健二, 六車 義宏
    2011 年 50 巻 6 号 p. 503-507
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    近年,印字デバイスの解像度は急速に高くなってきている.当然,解像度が高くなればなる程,印字品質も高くなる.現在,サーマルプリント業界において,特殊な用途を除いては,量産ベースで600dpiが最高解像度である.京セラはサーマルプリント方式での高解像度の可能性を模索するために,2400dpi,4800dpiの超高解像度サーマルプリントヘッドを開発し,印字することに成功した.今回の超高解像度サーマルプリントヘッドによる印字は,目視確認不可能な大きさであり,画質の確認には顕微鏡を必要とするものであったが,十分な画質レベルにあることが確認できた.一方,超高解像度サーマルプリントの問題点も明確となった.この論文では,サーマルプリント方式における超高解像度化という未来の可能性と問題点について紹介するとともに新たな用途について議論する.
  • 中村 卓, 中村 佐紀子, 宮川 信一, 北村 孝司
    2011 年 50 巻 6 号 p. 508-513
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    電気泳動表示素子に用いる正または負に帯電した白色粒子を,以下の2ステップ反応で作成した.1) 重合性二重結合または第4級アンモニウム塩を有するシランカップリング剤による,酸化チタン粒子の表面修飾,および2) シランカップリング処理を行った酸化チタン粒子表面の重合性二重結合を介する疎水性モノマーのグラフト重合による,酸化チタン粒子の樹脂被覆.これらの粒子を青染料を溶解したIsopar G中に分散し,透明電極を有する一対のガラス板の間に担持して表示素子を作成した.この素子の表示特性は,非イオン性界面活性剤であるソルビタン誘導体の添加により著しく改良され,その効果はHLB値の大きいものほど顕著であった.またこれらのソルビタン誘導体は,Isopar Gの導電率を著しく高めることから,HLB値の高いソルビタン誘導体は,Isopar G中でも白色粒子の有するイオン性基の解離を促進し,電気泳動を容易にすることで,表示特性を改良するものと推定している.
  • 尾崎 敬二
    2011 年 50 巻 6 号 p. 514-520
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    商用デジタルカメラによる画像には近赤外域の光が含まれるため,この近赤外画像を植物緑葉の活性度推定に用いる試みが行われてきた.しかし,不可視の近赤外光が取得画像の可視光赤に影響を及ぼすなら,植生指数の算出に問題が生じる.そのため,近赤外光源画像を分析して,色度図上での分布を調べた結果,近赤外光源はxy色度図の紫色領域に現れることを確認した.
    可視光をほぼ遮断する赤外レンズフィルタを使用して取得の近赤外画像と可視光赤の画像の画素値を組み合わせて,正規化差分植生指数 (NDVI) の分布を表す画像を作成し,分光放射輝度計による分光反射率測定値から算出のNDVIと比較した結果,両者は,0.96の高い相関を示した.
    商用デジタルカメラによる近赤外画像と可視光赤色域の画像間の演算で植物の葉の活性度把握に有用なNDVI分布画像を作成でき,植物緑葉の活性度の推定に利用可能となるので,環境状況把握等に有用と考えられる.
Imaging Today
  • 川端 康弘, 川端 美穂, 笠井 有利子
    2011 年 50 巻 6 号 p. 522-528
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    シーンの再認,シーンのgist (本質的情報),物体やシーンの変化発見や変化見落としといった高次視覚で扱われる現象の認知モデルにおいては,伝統的に無彩色の輝度情報の役割が強調され,色情報の貢献はあまり考慮されてこなかった.しかし最近,行動学的研究,ニューロイメージング研究,心理学的研究といった認知科学の諸分野で,対象物の表面色やシーン全体の配色が,認知に影響を及ぼすことが示されている.この論文では,どのような条件下で色が高次視覚の働きに影響するかを扱った研究を紹介して,この働きを媒介するであろう神経基盤についても言及する.また色の知覚や再認において見られる個人差は,高次視覚の可塑性の高さに起因するのかもしれない.色と認知の関係性は,高次視覚のモデルの中でもう少し焦点をあてて扱うべきだろう.
  • 津村 徳道
    2011 年 50 巻 6 号 p. 529-533
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    カラー医療画像の色彩表現として現在注目を浴びているマルチスペクトルイメージングは,生体の各点における分光的情報を画像として計測する手法として,近年のCCDやCMOSなどのイメージセンサの発達や,イメージングシステムの進展により急速に利用が検討されている.本文では,マルチスペクトルイメージング (Multi-spectral Imaging) の基礎から応用まで,生体の反射率計測を対象として紹介する.特に,本文では,肌画像の解析と内視鏡画像における応用について紹介する.
  • 面谷 信
    2011 年 50 巻 6 号 p. 534-538
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    人間の感覚量であるところの 「色」 の認識過程をブラックボックス化することなく分析しその解明結果を工学的に利用するという目標に対し,若干のヒントとなりそうな話題をいくつか提供する.話題としては,視覚認識過程の要素分けから始め,反射物と発光物とは見分けられるか?発光型ディスプレイは本質的に疲れやすいか?色の恒常性とは?印刷物や反射型ディスプレイと発光型ディスプレイとではどちらが照明条件によって表示色が変化して見えがちか?金 · 銀色は本当に色か?その認識メカニズムは?金 · 銀色インク印刷の意義は?人間にとって色彩情報の位置づけは?という素朴な疑問等について順次採り上げ,筆者らの簡単な実験結果の紹介を織り交ぜながら見解を述べる.本報告は必ずしも素朴な思い込み通りにならない実例の紹介を通じて,色の面白さや落とし穴の一端を読者に伝えようとするものである.
  • 矢口 博久
    2011 年 50 巻 6 号 p. 539-542
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    人間の視覚情報処理の流れと対応させながら,CIE色の見えモデル (CIECAM02) の概要について解説する.また,その応用として,均等色空間及び色差式への発展についても述べる.
  • 木下 修一
    2011 年 50 巻 6 号 p. 543-555
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    構造色は自然界に広く分布していて,進化の過程で獲得したさまざまな微細構造は,フォトニクス技術の先取りとして強い関心を持たれている.構造色は,光のエネルギーをまったく失うことなく発色するので,最高にエネルギー効率の良い発色法であり,また,重金属を用いないことから環境にもやさしい発色法として注目されている.ここでは,構造色に関連したさまざまな光学現象,すなわち,薄膜干渉,多層膜干渉,フォトニック結晶,回折格子,光散乱について概説し,特に,発色機構との関連について述べていく.また,自然界での構造色の一般的な法則を明らかにし,生物における構造の多機能性についても述べる.
  • 小林 敏勝
    2011 年 50 巻 6 号 p. 556-562
    発行日: 2011/12/10
    公開日: 2011/12/13
    ジャーナル フリー
    金や銀などのナノ粒子の懸濁液や含有皮膜は赤や黄色に着色する.これは粒子に存在する表面プラズモンが特定の波長の光と共鳴振動し,その波長の光を吸収する結果,吸収された光に該当する色の補色が観測されるためである.本稿では表面プラズモンによる光吸収の機構と吸収する波長に与える要因を平易に解説する.次に,色材として有用な金や銀ナノ粒子の調製について,筆者らが開発した方法を紹介する.この方法を用いれば金コア銀シェルのような複合ナノ粒子も調製可能である.最後にコーティング分野へ金ナノ粒子を応用した例を題材に,コーティング用色材としてのプラズモン発色の特徴を紹介する.
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