日本文化人類学会研究大会発表要旨集
Online ISSN : 2189-7964
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日本文化人類学会第45回研究大会
選択された号の論文の169件中1~50を表示しています
分科会発表
分科会A 「軍隊がつくる社会、社会がつくる軍隊:トランスナショナルとナショナル、ローカルの接合と再定義」
代表者 上杉 妙子
分科会B 「帰還移民の人類学的研究に向けて:帰還および故郷概念の検討」
代表者 大川 真由子
  • 帰還および故郷概念の検討
    大川 真由子
    セッションID: SB0
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    本国から移住先への一方向的な移動を中心に扱ってきた従来の移民研究に対し、本分科会は帰還という往還的な視点を導入し、議論の俎上に乗せようとする試みである。帰還という歴史的経験が現在に至るまでどのように生きられ解釈されてきたのか、その過程で故郷はどう意味づけられているのか。彼らの経験に基づいた帰還や故郷の概念を通文化的に検討することで、帰還移民に対する人類学的アプローチの理論的な視座を提供したい。
  • 東南アジアからの帰国華僑と「帰国華僑の家」
    奈倉 京子
    セッションID: SB1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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     本発表では、帰国華僑が時間と空間を共有する場である「帰国華僑の家」を事例とし、そこで帰国華僑としての特異性、アイデンティティを再生産させていく様相について報告する。そして個人や家族レベルの記憶・経験や、個別の行き来を中核として構成される社会関係を実証的に検討することにより、「帰国華僑の家」の場の意義と機能の把握を目指す。それにより帰国華僑の多元的かつ動態的な「故郷」の概念を理解することを試みる。
  • オーストラリア在住パプアニューギニア華人の帰郷経験
    市川 哲
    セッションID: SB2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    本発表はオーストラリアに在住するパプアニューギニア華人の帰郷にまつわる観念と実践について検討する。パプアニューギニア華人は19世紀末に中国からニューギニアへと移住し、さらに20世紀後半よりオーストラリアへと再移住した。このような連続的な移住経験の中で、彼ら彼女らがいかにして故郷であるパプアニューギニアや中国を訪問するのか、そして自己の帰郷に対しいかなる意味を付与するのか、という問題について検討する。
  • フィリピン日系人の帰還と国籍取得
    飯島 真里子
    セッションID: SB3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    従来の帰還移民研究においては、帰還先における定住を前提として研究がなされてきた。本発表では、定住化を伴わないフィリピン日系人の帰還現象に焦点を当て、その過程と実態を明らかにする。さらには、定住を第一目的としない日系人が祖先の故郷の国籍を取得することの意義についても検討し、日本への帰還と国籍取得が出身国と帰還先国両方での生活・活動拠点を多世代にわたり維持するという「戦略」的傾向があることを提示する。
  • アフリカ系オマーン人の帰還と歴史認識
    大川 真由子
    セッションID: SB4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    本発表は、本国の植民地化活動に伴い属領の東アフリカに移住したのち、脱植民地化の過程のなかで本国に帰還した入植型帰還移民、アフリカ系オマーン人にとっての帰還およびその後の実践に着目することで、彼らの歴史認識を明らかにすることを目的としている。東アフリカでのオマーン人の歴史を残す作業のなかで彼らが元移住先をどのように語っているのかをみたうえで、その認識を形成する歴史、社会的諸要因について考察する。
分科会E 「知の生成する現場:「動き」としての在来知を描く」
代表者 杉山 祐子
  • 「動き」としての在来知を描く
    杉山 祐子
    セッションID: SE0
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    ここでいう在来知とは、「人びとが自然・社会環境と日々関わるなかで形成される実践的、経験的な知(重田眞義2007)」であり、変化しつづける環境との関係の調整のしかたに関わる知である。この分科会では、「動き」を切り口にすることによって、報告者それぞれの調査事例に基づきつつ、環境・身体・社会をつなぐ知の生成過程として在来知を描く試みを展開する。また、在来知に共通する特徴について検討する。
  • 状況論的アプローチによる記述の試み
    曽我 亨
    セッションID: SE1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    青森県弘前市をながれる岩木川では、毎年春に、シゲタ漁と呼ばれる伝統漁がおこなわれている。これはシゲタと呼ばれる人工の産卵床にウグイをおびき寄せ、投網で獲る漁である。本発表では、シゲタ漁にみられる川漁師の在来知を、「リスト化」する従来のやりかたではなく、状況論的手法で記述する。また、この手法を導入することで、漁師達が仲間の身体・場所・道具・自然などの動きに応答していることを明らかにする。
  • エチオピアの女性土器職人の指使いと土器つくり
    金子 守恵
    セッションID: SE2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    エチオピア西南部に暮らす女性土器職人の技法の生成と確立の機序を理解するために、マイクロサッカード(固視微動)という概念を援用して、3つの「動き」を検討した。その結果、アリの土器つくりとは、異なる社会集団を架橋する「もの」をつくりだす社会的な行為であり、そこには職人が確立してきた個別のスタイル(土器のかたち+それをつくりあげる特有の行為)が内包されていることが示唆された。
  • 日本的「遊動」の一形態
    佐治 靖
    セッションID: SE3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    転飼養蜂は、弧状の日本列島がもつ環境を巧みに利用し、南北に長距離移動することによって成立する独特の養蜂形態である。本発表は、その実態を報告し、移動がつくりだす「動くことによる安定化」、各転飼地の活動とそれらをつなぐ連続性と関係性、絶えず更新と変化をくり返す蜂群とそれに連動する技能、さらに蜜源という資源環境の確保とその変化など、この養蜂が内包するいくつかの〈動き〉について考察する。
  • 在来知:擬人化による相互行為
    竹川 大介
    セッションID: SE4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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     近代知の手法は対象を客体化し、外部から操作するものである。それに対して在来知では、相互行為と交渉によって対象の変化に寄り添い、動きのなかに安定を見つける。在来知では変化する対象を意志があると仮定して理解する。意志あるものの究極の暗喩が擬人化である。自律し意志を持つものは完全に制御はできない。この対象が意志を持つという仮定は、ある種の錯覚であるが、エラーではなくむしろ認知の経済化の結果なのである。
分科会Ia 「支援のフィールドワーク:「研究/実践」の二分法を超えて」
代表者 亀井 伸孝
分科会Ib 「オセアニア環礁州島の景観史:分離融合型研究の成果」
代表者 山口 徹
  • 文理融合型研究の成果
    山口 徹
    セッションID: SIb0
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    自然の営力と人間の営為の絡み合いの歴史的産物として景観を捉える視座から、地球温暖化による海面上昇の最初の被災地として懸念されるオセアニア環礁州島の景観史を議論する。2002年から進めている我われの文理融合プロジェクトでは、現景観をテキストとして観察し、それらが形成されてきた歴史的背景の読解を共通課題としている。特に、ジオアーケオロジー、形質人類学、歴史人類学、文化人類学の4分野の成果を報告する。
  • 山口 徹, 中田 聡史, 茅根 創
    セッションID: SIb1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    空から眺める環礁州島は低平で一様に見えるが、起伏がないわけではない。州島によっては外洋側に海抜3mをこえるストームリッジが伸長し、ラグーン側には1m前後のビーチリッジがある。そのあいだは凹地で、湿地が広がっている。本発表では、環礁州島の景観としてこうした起伏に注目し、その中からとくに砂丘地形とピット耕地を取り上げる。それらのジオアーケオロジー的研究を通して、絡み合う人と自然の景観史を析出する。
  • ―サンゴカルシウムの陸生食物資源を媒体とした身体への循環―
    吉田 俊爾
    セッションID: SIb2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    プカプカ環礁およびマジュロ環礁から出土した先史時代頭蓋の厚さに着目して、サンゴ礁における陸生食物資源を通じて、サンゴカルシウム(可溶性ケイ素)の影響について考察した。プカプカ頭蓋の前頭結節の厚さは12_mm_、マジュロ頭蓋の前頭結節の厚さは10_mm_であり、比較対照の日本人江戸時代人の5_mm_と比較するとほぼ2倍である。このことから、頭蓋骨の成長発育や骨形態維持にサンゴカルシウムが関与している可能性がある。
  • マジュロ環礁とプカプカ環礁の植民地開発と環境改変をめぐる考察
    棚橋 訓
    セッションID: SIb3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    マーシャル諸島マジュロ環礁とクック諸島プカプカ環礁の事例に基づいて、環礁社会の植民地化において生起した環境改変の歴史過程を分析する。両環礁社会の在り方が植民地支配下でのココヤシのプランテーション造成に伴う植生と景観の斉一化によって方向づけられてきたことを指摘し、改変された斉一的環境への集約的な労働投下と管理体制から成る植民地的実践こそが両環礁社会の「脆弱なバランス」を生み出したことを指摘する。
  • ツバル・フォンガファレ島における文理融合型研究の試み
    深山 直子, 山野 博哉
    セッションID: SIb4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    会議録・要旨集 フリー
    ツバル・フォンガファレ島において文理融合型研究を行った結果、土地の人為的な改変、居住地の拡張、居住者の増加によって、近年その景観が大きく変化しており、結果として地球温暖化による海面上昇に対して脆弱性が増大していることが明らかになった。今後は島が水没するという従来の短絡的かつ画一的な先入観を排し、住民の順応性、高い移動性、広い親族ネットワークを正当に評価した上で具体的対応策を案じる必要がある。
分科会Ja 「人間と動物の駆け引き」
代表者 田川 玄
分科会Jb 「文化人類学的日本研究の方法論の開発:「日本人」がどのように日本を調査して日本語で語るか」
代表者 桑山 敬己
分科会Ma 「越境経験の資源化・歴史化:日本の周辺地域における国境変動をめぐって」
代表者 上水流 久彦
  • 日本の周辺地域における国境変動をめぐって
    上水流 久彦
    セッションID: SMa0
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    会議録・要旨集 フリー
    本分科会では、海を挟んで近接する台湾東部と沖縄先島諸島、大韓民国南部と対馬という境界領域(海域)を取り上げる。日本という国家の中で先島諸島と対馬は「周辺」に位置するが、海を越えた台湾や韓国との交流を模索し、地域の活性化を目指している。境界領域で国家と駆け引きをしながら生きている人びとの姿から、国家の力が「周辺」に果たす意味を探る。
  • 東シナ海国境海域をゆきかう漁民たち
    西村 一之
    セッションID: SMa1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    会議録・要旨集 フリー
    台湾東部の漁民の誕生に日本人漁民は大きな役割を果たした。この時より、尖閣諸島周辺は台湾漁民の「伝統的漁場」となった。今、漁業不振の中で老漁民は不可能となった尖閣諸島への出漁経験を語り、漁民の間では過去の沖縄漁民との交流を踏まえたこの海域の共同利用が探られる。そこからは、存在しなかった状態から次第に強化される「国境」が引かれた東シナ海を、台湾漁民がどのように認識してきたのかが明らかとされる。
  • 台湾原住民族パイワンによる「牡丹社事件」をめぐる交渉
    宮岡 真央子
    セッションID: SMa2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    会議録・要旨集 フリー
    明治初め、琉球人と台湾原住民族パイワンとの接触の際に起きた悲劇的出来事は、それに国家が関与することで歴史事件となり、従来幾多の解釈がなされてきた。当事者とその子孫たちは長らく多様な歴史解釈の埒外にあったが、近年事件発生地のパイワンが参画して事件再解釈が活発化し、事件を資源化しようとする動きもある。このパイワンによる事件をめぐる交渉に焦点を当て、過去の接触経験に見出される現代的意義を考察する。
  • 交通と他者表象をめぐって
    村上 和弘
    セッションID: SMa3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    会議録・要旨集 フリー
     本報告では、今日の対馬における錯綜した「交流」現象を解明するためのモデルとして、戦前の生活世界における「韓国(朝鮮)」との接触体験に着目し、南部の厳原、北部の比田勝・佐須奈の3カ所を中心に報告を行う。対馬では同じ「国境の島」という名付け/名乗りのもと、地域/旧自治体単位で異なる活性化戦略を採用してきた。その背景には戦前期の「越境の記憶」があり、特に南北で顕著な違いをもたらしていると考えられる。
  • ―観光動機とナショナリズムをめぐって―
    中村 八重
    セッションID: SMa4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    会議録・要旨集 フリー
    本報告は韓国人による対馬観光を取り上げる。国境を超える韓国人の対馬観光はどのような行為であるか観光の動機と実態を探ることを目的とする。国境の島としての対馬のアイデンティティはむしろ、近接性や経済性そして韓国で広く共有されている「対馬は韓国の領土であった」という認識のもとに理解されて、韓国人観光客が対馬を訪れる動機になっていることを指摘する。
  • 八重山における「観光旅行」を通じた台湾認識の変遷
    越智 郁乃
    セッションID: SMa5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
    会議録・要旨集 フリー
    本報告では沖縄県八重山地域と台湾との間の「観光旅行」という側面からの移動史を取り上げ、八重山における台湾イメージの変遷を示す。植民地期台湾への沖縄出身者の移動過程や「日本人」「台湾人」に対する「沖縄人」の位置づけに関する研究が近年増えているが、ここでは戦後の移動に注目し、戦前の台湾イメージと戦後のツーリズムの発達を通じた台湾イメージの変化の中に、国境の再形成と国家間関係の影響を探る。
分科会Mb 「<アサイラム/アジール空間>の人類学:グローバリゼーション、国家、社会的排除/包摂」
代表者 内藤 直樹
個人発表の部
11日午前の部 B会場
  • インド、アルナーチャル=プラデーシュのモンパの事例から
    脇田 道子
    セッションID: B01
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/20
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    インド北東部の中国、ブータンとの国境地帯に住むモンパとよばれる人びとの主として女性の民族衣装に焦点をあて、その変化が意味する「指定トライブ」としてのモンパ内部のエスニシティの生成と周辺のさまざまな民族集団とのローカルポリティクスについて考察する。同じ州の離れた地域に住むメンバや東ブータンの山岳地帯の牧畜民ブロクパとの関係についても、民族衣装を手掛かりとして考察を試みる。
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