水稲品種オオチカラとその短根性準同質遺伝子系統IL-
srt1を供試し, 出穂期における地上部と根の形質, 出液速度および止葉の光合成関連特性を比較した. IL-
srt1の草丈はオオチカラより有意に低く, 株当たり茎数と地上部乾物重も有意に少なかったが, 茎当たり地上部乾物重に有意差はみられなかった. 株当たりの出液速度はIL-
srt1の方がオオチカラよりも有意に低く, IL-
srt1/オオチカラ比は56%であった. そこで, この差を根量と根量当たり出液速度に分けて検討した. その結果, 総根長と総根重のIL-
srt1/オオチカラ比は30%と35%, 総根長および総根重当たり出液速度の同比はそれぞれ188%と163%であり, いずれにも有意差が認められた. すなわち, 根量はオオチカラの方が多く, 根量当たり出液速度はIL-
srt1の方が高かった. これらより, IL-s
srt1は根の量が少ないために根全体の生理機能はオオチカラより低くなったが, 個々の根の生理活性はオオチカラを上回っていると推測された. また, 光合成関連特性に関してはIL-
srt1とオオチカラとの間に有意差は認められず, 短根遺伝子
srt1は光合成に影響しないと考えられた.
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