日本作物学会紀事
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79 巻, 2 号
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研究論文
栽培
  • 森 静香, 横山 克至, 藤井 弘志
    2010 年 79 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    共同籾調整乾燥貯蔵施設利用地域における産米の食味向上については,地域全体で産米のタンパク質含有率の制御を目的とした食味向上栽培技術の導入と同時に個別の産米に対する評価の方法を構築する必要がある.そこで,登熟期の葉色と玄米タンパク質含有率の関係,その年次間・地域間変動および登熟期の葉色による産米の仕分けについて検討した.乳熟期,糊熟期および成熟期における葉色と玄米タンパク質含有率の関係は,止葉および次葉とも,糊熟期での相関が最も高く(r=0.814***),次いで成熟期(r=0.727***),乳熟期(r=0.704***)であった.また,1999年から2001年での年次別および地域別の止葉の葉色と玄米タンパク質含有率の相関関係を比較すると,糊熟期>成熟期>乳熟期の順に高くなる傾向であった.糊熟期の葉色で玄米タンパク質含有率を推定した場合,乳熟期および成熟期と比較して,地域・年次による差が小さかった.1999年から2001年の八幡町・酒田市・鶴岡市において,玄米タンパク質含有率が75 g kg-1となる糊熟期の止葉の葉色値(10株の最長稈の平均値)32を境界値とした場合,葉色値32以上と32未満のグループにおける玄米タンパク質含有率の差が5.4~7.8 g kg-1での仕分けが可能であった.
  • 付 杰奇, 星野 幸一, 平井 英明, 加藤 秀正
    2010 年 79 巻 2 号 p. 120-129
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    本研究の対象地域である茨城県奥久慈地方の大子町における茶栽培では,慣行施肥区での深度100cmでの土壌溶液の窒素濃度が130 mg L-1で推移すること,この地域と降水量・気温が類似する宇都宮大学附属農場で行われた幼茶樹のポット試験による慣行施肥区の化学肥料窒素の利用率は約28%で低かったこと,等の研究結果をもとに化学肥料の低減が必要と判断された.そこで本研究においても宇都宮大学附属農場内の幼茶樹のポット試験により,茶園における化学肥料の低減を目的に,堆肥および被覆尿素肥料の利用が一番茶にどのような影響を及ぼすかを調べた.堆肥施用量を変えて化学肥料窒素を施肥基準量に対して25%削減しても,全遊離アミノ酸含有量を有意に低下させることはなかった.このことから,適切な堆肥の施用によって,一番茶への負の影響を緩和できると推測した.3水準(標準施肥,25%減肥,50%減肥)の被覆肥料による低減試験においては,施肥基準区の全遊離アミノ酸含有量が最も多かったが,すべての施肥方式のなかで,25%減肥区と標準施肥区の生育量と全遊離アミノ酸含有量に有意差は認められなかった.また,秋肥に被覆肥料を用いることによって一番茶の全遊離アミノ酸含有量を増加させ,タンニン含有率を減少させる傾向が確認できた.したがって,化学肥料による環境負荷を低減するには被覆肥料による25%削減は可能で,かつ秋肥に被覆肥料を施用することによって一番茶の品質を向上させることができると判断された.
  • 廣瀬 大介
    2010 年 79 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    焼酎もろみ粕肥料の施用量の違いがオオムギ(ニシノホシ)の収量と品質に及ぼす影響を調査し,焼酎もろみ粕肥料の肥効を明らかにすることを目的に行った.その結果,子実重と整粒重は窒素施用量が慣行区の2倍になるように焼酎もろみ粕肥料を施用した区で慣行区と同等以上の値となった.一方,品質面では,タンパク質含有率は焼酎もろみ粕肥料の施用量の増加に伴って高くなったが,澱粉価は逆に低くなった.これらのことから,化学肥料を施用した場合と同程度の収量をあげるには焼酎もろみ粕肥料は,化学肥料に比べて2倍程度多く施用する必要性が示唆された.一方,品質は焼酎もろみ粕肥料の増量に伴って低下することが示された.
品質・加工
  • 八田 浩一, 関 昌子, 小田 俊介
    2010 年 79 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    九州地域のコムギ品種について登熟期間中の遭雨が小麦粉色相に及ぼす要因解明を試みた.3回の遭雨によって,種子容積重は1%程度低下し,SKCS種子硬度は7ポイント低下した.さらに電子顕微鏡観察により遭雨小麦粒種皮を観察したところ,遭雨処理したコムギ種子の外皮細胞層間の空隙の増大が観察された.この空隙部分の増加が外皮の脆弱化,ひいては製粉性の低下の要因と考えられた.すなわち,脆弱化した外皮部が製粉時に崩壊するため,製粉効率が低下し,さらに小麦粉に混入することにより,小麦粉の色相が悪化すると推察した.
  • 高田 聖, 坂田 雅正, 亀島 雅史, 山本 由徳, 宮崎 彰
    2010 年 79 巻 2 号 p. 142-149
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    水稲10品種を用いて,西南暖地の早期栽培における高温多照年および高温寡照年の玄米品質低下に影響を及ぼす白未熟粒のタイプを調査するとともに,遮光率の高いハウス内(遮光率66%)で登熟させることによって,水稲品種の高温寡照条件下での登熟性を評価できるかどうかを検討した.圃場試験の結果から,高温多照年には背・基白粒の発生が,高温寡照年には背・基白粒および乳白粒の発生が玄米品質低下に影響を及ぼしていることが明らかとなり,高温寡照条件下での登熟性を評価するためには,背・基白粒割合だけでなく乳白粒割合を加えて検討することが適当であると考えられた.また,高温寡照年の圃場における乳白粒割合と高温多照年に遮光ハウス内で登熟させた場合の乳白粒割合との間には有意な正の相関関係が認められ,高温多照年に遮光ハウス内で登熟させることによって,水稲品種の高温寡照条件下での登熟性を評価できるものと考えられた.さらに,高温寡照条件下での登熟性を評価する場合においても,高温登熟性の基準品種として使用されているふさおとめ(強),あきたこまち(中),初星(弱)はそれぞれの基準品種として使用できると考えられ,ふさおとめ,初星と同程度の乳白粒割合を示したとさぴか,おきにいりもそれぞれ 「強」 および 「弱」 の基準品種として適するものと判断された.
  • 高田 聖, 坂田 雅正, 亀島 雅史, 山本 由徳, 宮崎 彰
    2010 年 79 巻 2 号 p. 150-157
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    高温登熟条件下でも玄米品質が優れる品種の選抜に有効な基肥窒素施肥量について検討するため,水稲22品種・系統(以下,品種と記す)を供試して基肥窒素施肥量の違いに伴う白未熟粒割合の変動の品種間差を明らかにしようとした.多くの品種では基肥窒素施肥量を増やし登熟期間の窒素栄養状態を高めることで基白粒は減少したが,1穂籾数が増加し炭水化物の分配量が低下することによって乳白粒は逆に増加した.また,基肥窒素施肥量の増加による乳白粒の増加程度が大きい品種(ふさおとめ,南国そだち等),基白粒の減少程度が大きい品種(ひとめぼれ,コシヒカリ等)およびそれらの変動が小さい品種(高育69号,はたじるし等)が認められ,基肥窒素施肥量の違いに伴う白未熟粒割合の変動には品種間差があることが明らかとなった.さらに,基肥窒素施肥量の増加に伴って乳白粒が大きく増加する品種は,窒素施肥量の増加によるm2当たり穂数,同籾数の増加程度が大きく,玄米千粒重および登熟歩合が低下しやすい特性を有するものと考えられた.以上のように,異なる基肥窒素施肥条件下では白未熟粒割合の品種間の傾向が異なったことから,高温登熟条件下でも玄米品質が優れる品種の選抜精度を高めるためには,基白粒割合,乳白粒割合をその発生が助長されるそれぞれ少肥および多肥条件下で評価し,それらの評価を総合して選抜することが有効と考えられた.
  • 谷藤 健, 加藤 淳
    2010 年 79 巻 2 号 p. 158-165
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    北海道で生産される主要な豆腐用ダイズ品種の品質特性の差異を,品種,栽培地,年次の3因子による分散分析にて解析した.主要成分含量,百粒重には全因子において有意差が認められたが,品種の違いによる影響は小さく,栽培地または年次の影響が大きかった.一方,豆腐破断応力(硬さ)には品種が最も大きく影響し,年次の影響は小さかった.破断応力と最も相関が高い形質は百粒重と浸漬増加率であった.また,破断応力を除いた各形質による主成分分析を行ったところ,第1主成分は登熟中期~後期の気温,第2主成分は登熟日数と有意な正の相関を示した.特に,低温年において栽培地間の気温の差が第1主成分スコアに及ぼした影響は顕著であり,登熟日数が短くタンパク質含有率が抑制された高温年は第2主成分スコアが低下した.さらに,破断応力を目的変数とする主成分回帰分析を行った結果,有意な回帰式が得られ,これら主成分による説明が可能であった.以上より,豆腐用ダイズの加工品質に対しては,品種の選択に加え,適度な登熟気温および登熟日数を確保できる気象条件の重要性が示唆された.
  • 寺尾 富夫, 千葉 雅大, 廣瀬 竜郎
    2010 年 79 巻 2 号 p. 166-173
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    登熟時の高温に耐性があるイネ品種・系統を選抜する目的で,穂温を上昇させる装置を開発した.OHPフィルムで作成した透明な筒を穂に被せることにより,昼間の穂温を,10日間の平均で約0.8℃上昇させることができ,またその中に,幅2cm,厚さ5mmの黒色ゴムスポンジを接着することにより,昼間の穂温を2℃以上上昇させることができた.この処理による温度上昇に比例して,整粒割合は減少し,白未熟粒割合は増加した.この処理により,夜温は約0.15℃低下するが,白未熟粒の発生割合には影響しなかった.この装置により,高温耐性の基準品種を評価したところ,高温耐性の順位に対応した結果が得られ,他の評価法と同様の耐性の選抜が可能と考えられる.本装置による高温処理は,簡便であり,光合成を阻害せず,1個体で評価可能であることから,分離系統の高温耐性評価等に利用でき,高温登熟耐性の遺伝解析に有用であると考えられる.
品種・遺伝資源
  • 早田 一也, 大川 泰一郎, 本林 隆, 平沢 正
    2010 年 79 巻 2 号 p. 174-183
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    水稲の個体群受光態勢にかかわる形質の遺伝解析,個体群受光態勢の育種による改良に向けて,葉身の水平からの傾斜角度(以下,葉身傾斜角度)を用いて個体群受光態勢の簡易評価が可能か否かをインド型品種のタカナリ,密陽23号,日本型品種のコシヒカリ,愛国,関取を用いて検討した.葉身傾斜角度には主茎と第1次分げつ茎に着生する葉身の間で違いはなく,主茎着生葉の葉身傾斜角度を測定することによって株全体の葉身傾斜角度を推定できることがわかった.葉身傾斜角度,個体群吸光係数の品種間差は出穂期以降に大きくなった.葉身傾斜角度は出穂期から登熟期にかけて減少したが,その程度はタカナリ,密陽23号に比較してコシヒカリ,愛国,関取が大きかった.個体群吸光係数はいずれの品種も登熟期に増加したが,その程度は密陽23号に比較して,コシヒカリ,愛国,関取,タカナリで大きかった.タカナリの登熟期における個体群吸光係数の増加要因は葉身傾斜角度が小さくなることではなく,大きく重い穂が傾くことにあると考えられ,登熟期における個体群吸光係数の増加要因は品種間で異なった.葉身傾斜角度と個体群吸光係数の間には穂が直立している出穂期は密接な関係があり,葉身傾斜角度によって個体群吸光係数を比較できることがわかった.しかし,穂重が大きくなる登熟中期以降は葉身傾斜角度のみでは個体群吸光係数を比較できない場合のあることがわかった.
作物生理・細胞工学
  • 曽根 千晴, 津田 誠, 平井 儀彦
    2010 年 79 巻 2 号 p. 184-191
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    アフリカの塩害地でアジアイネとアフリカイネの種間交雑種NERICAを作付けすることによってイネの収量が改善されるかどうかを検討するために,NERICA 1の耐塩性を親品種(WAB56-104,CG14)および日本陸稲 2品種とともに調査した.イネは水田土壌を詰めた1.8 Lポットで成熟期まで湛水条件で栽培した.3つの塩処理開始時期(播種後35,49,63日)と3段階のNaCl濃度(100,200,300 mM)を組み合わせた塩処理区と塩を加えない対照区を設けた.対照区の収穫時の乾物重に対する塩処理区のそれの相対値で耐塩性を評価したところ,耐塩性はアジアイネ親のWAB56-104では大きく日本陸稲品種程度であったが,アフリカイネ親のCG14で小さく, NERICA 1はそれらの中間であった.耐塩性は茎葉部のNa含有率が低いほど大であり,この関係には品種で差がなかった.CG14でNa含有率が高かったのは,CG14がNaを蓄積しやすいためであった.Naを蓄積する性質はWAB56-104とNERICA 1で同程度であったが,NERICA 1は塩ストレスを受けた期間が長かったため,そのNa含有率が高くなったと推定された.以上の結果から,アフリカイネ親の耐塩性は低かったがNERICA 1の耐塩性はそれほど低くなく,塩ストレスに対する反応はNERICA 1とアジアイネ親で似ていると考えられた.
  • 和田 義春, 添野 隆史, 稲葉 幸雄
    2010 年 79 巻 2 号 p. 192-197
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    イチゴの促成および半促成栽培では,光合成速度を高めて収量や品質を向上させるためにCO2施肥技術が使用されている.本研究は,最近の主力品種のひとつである‘とちおとめ’を用いて,CO2濃度が葉光合成に及ぼす効果を特に日射と温度との関係において調査した. CO2-光合成曲線は,どの生育段階でもCO2濃度800~1000ppmで飽和したため,1000ppmを大幅に超えるCO2施肥は効果的でないと判断された.光-光合成曲線は,CO2濃度400ppmでは光強度1000μmol m-2 s-1で飽和したが,CO2濃度1000ppmでは1000μmol m-2 s-1以上でも上昇し続けたため,CO2施肥の効果は光強度が高いほど大きくなった.温度―光合成曲線は,CO2濃度400ppmのときには20℃以上でほぼ一定となったのに対して,CO2濃度1000ppmでは30℃まで増加し続けたので,CO2施肥の効果は,高温条件で高いことがわかった.以上の結果から,イチゴ品種‘とちおとめ’に対するCO2施肥は,晴天日には,午前の換気時刻を遅らせ,光強度の高くなる12時頃までCO2濃度800~1000ppmを施肥すると光合成の促進に効果的であると考えられた.また,曇天日には,気温が低く光強度も低いため,1日中換気はほとんどせずハウス内温度を高め,CO2を施肥し続けCO2濃度800~1000ppmを保つことで光合成速度を高められると考えられた.
収量予測・情報処理・環境
  • 宮﨑 成生, 齋藤 匡彦, 高橋 行継, 吉田 智彦
    2010 年 79 巻 2 号 p. 198-204
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    成分調整・成型豚ぷん肥料を用いて水稲を栽培し施用効果を検討した.基肥として含有窒素の84%が豚ぷん由来の豚ぷん肥料を,追肥として慣行の化学肥料を施用して水稲を栽培した場合,慣行栽培に比べ追肥期までの生育がやや劣ったものの,同等の収量および品質となった.この場合,化学肥料の窒素成分量を慣行栽培の50%削減したことになった.また,水稲栽培終了後の土壌に窒素が23 kg ha-1 残ると試算され,豚ぷん肥料の連用による土壌への窒素成分の蓄積を確認する必要があった.
研究・技術ノート
  • 高田 聖, 坂田 雅正, 亀島 雅史, 山本 由徳, 宮崎 彰
    2010 年 79 巻 2 号 p. 205-212
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    高知県の水稲早期栽培の主要品種コシヒカリ,ナツヒカリの2品種について,白未熟粒割合の年次,地域間差に関与する要因を解析した.白未熟粒割合には品種間差が認められ,年次に関わらずコシヒカリではナツヒカリに比べ白未熟粒割合が有意に高かった.また,年次間の白未熟粒割合にはコシヒカリでは有意差が認められ,ナツヒカリでは有意差は認められなかった.コシヒカリでは,登熟前・中期の日最低気温が23℃以上で,登熟中期の日照時間が6hr/日以下でそれぞれ基白粒割合,乳白粒割合が高い試験地が認められ,登熟前・中期の日最低気温が高い年には基白粒,登熟中期の日照時間が短い年には乳白粒が多発したことが年次間差を生じさせた要因と考えられた.さらに,品種,年次に関わらず白未熟粒割合には大きな地域間差が認められた.白未熟粒割合の地域間差には登熟期間の気象条件の違いのみならず,出穂期における生育の違いも関与していることが指摘され,コシヒカリでは登熟前・中期の日最低気温が高い年には少肥栽培により基白粒の発生が,登熟中期の日照時間が短い年には多肥栽培により乳白粒の発生が助長されることが地域間差を生じさせた要因と考えられた.一方,ナツヒカリでは登熟期間の気象条件に関わらず穂長が長く,m2当たり籾数が多かった場合に白未熟割合が高まると推察された.
  • 太田 和也, 小山 豊, 在原 克之
    2010 年 79 巻 2 号 p. 213-220
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/05/24
    ジャーナル フリー
    温暖地にあって水稲の早期栽培が行われている千葉県において,熟期及び草型の異なる「ひとめぼれ」及び「コシヒカリ」を,栽植密度,窒素施用量及び穂肥施用時期を変えることによって幅広い条件で栽培し,玄米品質(千粒重,乳白粒等の未熟粒割合,及び玄米中粗タンパク質含有率)の品種間差とその低下要因を,特に籾数と登熟歩合の変動に着目して検討した.2000年及び2001年に試験を行ったが,両品種ともに出穂期は7月15~20日頃で,登熟期間は一年のうちで気温が最も高くなる条件であった.両品種ともに著しい倒伏は認められなかった.「ひとめぼれ」は「コシヒカリ」と比較して籾数が多くなり,籾数の増加に伴って,登熟歩合が大きく低下して,玄米品質も著しく低下した.また,籾数が等しくても,「ひとめぼれ」の方が「コシヒカリ」と比較して登熟歩合が低かった.2001年のみの結果ではあるが,一次枝梗着生玄米と二次枝梗着生玄米それぞれの平均粒厚の分布範囲が「コシヒカリ」では重ならなかったが,「ひとめぼれ」では1.95~2.10mmの間に重なっており,かつ籾数に対する平均粒厚の変化が大きかった.以上のことから,「ひとめぼれ」では一次枝梗着生玄米と二次枝梗着生玄米との間で炭水化物の競合が大きいことが推察され,千葉県をはじめとする温暖地早期栽培において「ひとめぼれ」を栽培する場合,単位面積当たりの籾数を適正な範囲内とするとともに,二次枝梗籾数の増加による一穂籾数の過剰を避ける必要があると考えられた.
日本作物学会シンポジウム紀事
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