イチゴの促成および半促成栽培では,光合成速度を高めて収量や品質を向上させるためにCO
2施肥技術が使用されている.本研究は,最近の主力品種のひとつである‘とちおとめ’を用いて,CO
2濃度が葉光合成に及ぼす効果を特に日射と温度との関係において調査した. CO
2-光合成曲線は,どの生育段階でもCO
2濃度800~1000ppmで飽和したため,1000ppmを大幅に超えるCO
2施肥は効果的でないと判断された.光-光合成曲線は,CO
2濃度400ppmでは光強度1000μmol m
-2 s
-1で飽和したが,CO
2濃度1000ppmでは1000μmol m
-2 s
-1以上でも上昇し続けたため,CO
2施肥の効果は光強度が高いほど大きくなった.温度―光合成曲線は,CO
2濃度400ppmのときには20℃以上でほぼ一定となったのに対して,CO
2濃度1000ppmでは30℃まで増加し続けたので,CO
2施肥の効果は,高温条件で高いことがわかった.以上の結果から,イチゴ品種‘とちおとめ’に対するCO
2施肥は,晴天日には,午前の換気時刻を遅らせ,光強度の高くなる12時頃までCO
2濃度800~1000ppmを施肥すると光合成の促進に効果的であると考えられた.また,曇天日には,気温が低く光強度も低いため,1日中換気はほとんどせずハウス内温度を高め,CO
2を施肥し続けCO
2濃度800~1000ppmを保つことで光合成速度を高められると考えられた.
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