日本作物学会紀事
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82 巻, 3 号
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研究論文
栽培
  • 廣瀬 大介
    2013 年 82 巻 3 号 p. 209-214
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    焼酎もろみ粕肥料の有効な利用方法を明らかにすることを目的に焼酎もろみ粕肥料と化学肥料の混合施用がオオムギ(ニシノホシ)の収量と品質に及ぼす影響を調査した.その結果,慣行の窒素施用量の50%を焼酎もろみ粕肥料で施用した場合,化学肥料のみの慣行区以上の収量が得られた.また,粗タンパク質含有率,澱粉価およびアルコール収量は慣行区と焼酎もろみ粕肥料に化学肥料を混合した区の間に差が見られなかった.これらのことから,焼酎もろみ粕肥料を50%混合して施用すれば,化学肥料のみの栽培と同等の収量と品質が得られることが示された.
  • 石川 直幸, 石岡 厳, 窪田 潤, 竹田 博之
    2013 年 82 巻 3 号 p. 215-222
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    近年,暗渠排水と地下灌漑の機能を兼ね備えた地下水位制御システム(FOEAS)の田畑輪換圃場への導入が各地で進められているが,コムギ栽培に対する地下灌漑の効果は明らかになっていない.FAOのマニュアルによれば,コムギが良好に生育するためにはコムギ栽培期間中に 450~650 mm の水が必要とされている.瀬戸内地域(山口県と広島県西部を除く)におけるコムギ栽培期間の降水量は 400~500 mm 程度と少ないが,コムギ栽培時に灌漑は行われていない.そこでポット栽培により,多収を得るのに必要なコムギの生育時期別の消費水量の推移を明らかにするとともに,瀬戸内干拓地のコムギ栽培圃場における灌漑の要否について考察した.ポット栽培における 1 日当たり消費水量は,播種から2月上旬までは約 1 mm で,その後増加して出穂期頃には約 8 mm に達した.登熟中期まで消費水量の多い状態が継続し,登熟後期に減少した.生育期間全体の消費水量は 612 mm,そのうち出穂後は 326 mm であった.本年(2011 年 11 月~2012 年6 月)の降水量は生育期間全体で 338 mm(平年より 77 mm 少ない),そのうち出穂後が 72 mm(平年の半分以下)であった.供試圃場の地下水位は,無灌漑圃場では –40~–60 cm,地下灌漑圃場では –30~–50 cm 程度だった.無灌漑圃場と灌漑圃場の間には,コムギの生育や収量等に差が認められなかった.これは,灌漑しなくても地下から十分な量の水が供給されているためと考えられる.
  • 千葉 雅大, 松村 修, 渡邊 肇, 高橋 能彦, 寺尾 富夫
    2013 年 82 巻 3 号 p. 223-232
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    深水栽培は高品質米の生産技術として有効な栽培法である.深水栽培の稲体では,分げつの発生が抑制されて,ソース機能が高い強勢分げつ中心の構成になり,これが白未熟粒発生に影響していると考えられる.そこで,強勢と考えられる主茎と弱勢と考えられる2次分げつ(慣行区のみ)および最上位1次分げつについて,ソース機能に関与する形質として,穂揃期の葉身窒素量と葉鞘・稈の非構造性炭水化物量および登熟期の葉面積を測定した.また,穂内の1次および2次枝梗の着生籾数を調査した.その結果,深水栽培では,主茎と最上位1次分げつの両方で,慣行栽培に比べて,籾あたりのソース機能は増加し,白未熟粒割合が低下した.つまり,深水栽培では,強勢・弱勢にかかわらず,すべての次数の茎で籾あたりのソース機能が増加し,白未熟粒の発生が抑制された.したがって,1穂籾数が増加して,品質が低下しやすい2次枝梗籾の割合が増加しても,ソース機能の増加により,白未熟粒の発生が抑制されたと推察される.
  • 竹田 博之, 佐々木 良治
    2013 年 82 巻 3 号 p. 233-241
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    転換畑ダイズ作における生育・収量の安定化と作期拡大を目指して,梅雨期に播種するダイズの出芽・苗立ちに対する地下水位制御システム(FOEAS)の効果を検討するとともに,同システムによる土壌水分の制御が梅雨明け後に播種するダイズの出芽・苗立ちおよび生育・収量に及ぼす影響を調査して梅雨明け後播種栽培の可能性を検討した.7月上旬に不耕起狭畦栽培方式で播種したダイズ品種サチユタカの出芽・苗立ち率は,額縁明渠のみ施工した慣行区では3カ年平均44%であったのに対してFOEASにより平均85%に向上した.7月下旬から8月上旬の播種では,播種数日前に水位を–5 cmに一時的に上げて土壌水分を高める水管理により69~87%の出芽率が得られた.しかし,播種時期が遅くなると播種から開花期までの期間や開花期から莢伸長始期までの期間が短縮し,さらに稔実莢数や粒数の減少などにより収量は低下した.7月下旬の播種では7月上旬播種のFOEAS区よりも30%程度減収すると推定されたが,同時期の慣行区に比較すると10%程度の減収であったことから,FOEASを利用したダイズの梅雨明け後播種栽培は,梅雨期における出芽不良のリスク分散や作期拡大の観点から実行可能性は十分にあると考えられた.
品質・加工
  • -2009年と2010年の比較-
    石突 裕樹, 菊川 裕幸, 齊藤 邦行
    2013 年 82 巻 3 号 p. 242-251
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    日本晴とヒノヒカリを供試し,岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センターの水田で対照区,遮光区,高温区を設けて,2009年と2010年(夏季高温年)に圃場栽培を行った.高温処理は水田内に側面自動開閉装置を装着したビニールハウス内で栽培を行い,出穂期以降ハウス内の気温が36℃以上で開放,25℃以下で閉鎖するように制御し,遮光処理は出穂期以降黒色寒冷紗(遮光率50%)で群落上層を被覆した.2009年,2010年の収量は対照区に比べ,それぞれ高温区で登熟歩合と千粒重の低下により10–21%,30–33%,遮光区で登熟歩合の低下により16–24%,32%の減収が認められた.2009年に比べ高温であった2010年は千粒重が低下したにもかかわらず,粒厚はより大きい側に分布する傾向がみられた.対照区に比べ,高温区では2009年は粒厚がより大きい側に分布したが,2010年は逆にやや小さい側に分布する傾向を示し,遮光区では両年ともに粒厚がより小さい側に分布する傾向がみられた.高温は玄米の肥大成長を促進し,遮光は抑制すると考えられた.両品種ともに粒厚が小さくなるほど整粒割合が低下し,白未熟粒割合が高まった.2010年には,粒厚が大きくなるほど基白粒割合が特異的に高くなった.炊飯食味計による食味値は日本晴に比べヒノヒカリで高く,粒厚が小さいほど食味値は低下する傾向を示し,その程度は日本晴に比べヒノヒカリで小さくなった.遮光区,高温区ともに食味値が対照区に比べ低下したが,その程度は日本晴で著しかった.食味値と白未熟粒割合との間には2009年には正の,2010年には負の有意な相関関係が認められ,これには食味値の高い粒厚の大きい玄米で基白粒が増加したことに起因すると考えられ,2010年にみられた基白粒の発生が食味に及ぼす影響は小さいと推察された.粒厚選別機の篩目を調節することにより,整粒割合,食味を調節できる可能性が示された.
  • 石突 裕樹, 松江 勇次, 尾形 武文, 齊藤 邦行
    2013 年 82 巻 3 号 p. 252-261
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    日本晴とヒノヒカリを供試し,2009年に岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センターの水田で栽培した対照区,遮光区,高温区の玄米を粒厚別に選別して食味官能試験(基準米は各区粒厚1.8 mm以上の精玄米)を行った.総合評価は対照区で粒厚が小さくなるほど低下し,1.9 mm以下で顕著な低下がみられ,高温区では2.0 mm以下,遮光区では1.9 mm以下で急速に低下した.外観,味,粘りにおいてもほぼ同様の傾向が確認されたが,硬さには明確な傾向はみられなかった.ヒノヒカリも日本晴とほぼ同様の傾向を示したが,粒厚が小さくなるのに伴う各食味評価項目の低下程度が日本晴に比べ小さかった.各区の粒厚1.9 mm以上の玄米について,穀粒判別器により整粒と白未熟粒を選別し,整粒と白未熟粒を混合(整粒割合100,75,50,25,0%)して,基準米を整粒割合75%の玄米として食味官能試験を行った.整粒割合が低下(白未熟粒割合が増加)するほど,総合評価,外観,味,粘り,硬さが低下する傾向が認められた.食味関連形質間の相関関係を検討したところ,粒厚は総合評価,外観,味,粘り,アミロース含有率,最高粘度,ブレークダウン,整粒割合と正の,タンパク質含有率と負の相関関係(P<0.001)がみられた.粒厚が大きいほど整粒割合が高く(白未熟粒割合が低く),タンパク質含有率が低く,アミロース含有率は高まるものの,アミログラム特性に優れ,食味に優ることがわかった.白未熟粒割合と総合評価,外観,味,粘り,アミロース,最高粘度,ブレークダウンと負の,タンパク質と正の相関関係(P<0.001)がみられ,白未熟粒が増えるとタンパク質含有率が高まり,アミロース含有率が低下しても,アミログラム特性は低下して,食味が劣ることがわかった.また,硬さとの間にも負の相関関係(P<0.05,0.1)がみられ,白未熟粒が増えると柔らかくなる傾向が認められた.対照区の玄米は整粒と白未熟粒のタンパク質含有率の相違は小さかったことから,通常栽培で発生する白未熟粒の食味低下にはタンパク質やアミロース以外の要因が関係していると推定された.
  • 杉浦 和彦, 本庄 弘樹, 林 元樹, 野々山 利博, 山下 和巳, 虎澤 明広, 山内 章
    2013 年 82 巻 3 号 p. 262-269
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    愛知県における水稲品種コシヒカリの品質低下要因を現地調査から解析した.2006~2009年の4年間に延べ68ほ場で調査を実施した結果,高温により発生する白未熟粒のうち基部未熟粒の発生割合が最も多かった.乳白粒は出穂後寡照となった2009年をはじめ,全ての年次で基部未熟粒より発生が少なかった.したがって愛知県のコシヒカリにおける外観品質低下要因は,主に基部未熟粒の多発によるものと考えられた.基部未熟粒の発生は,出穂後20日間の平均気温,日照時間との間に有意な正の相関が認められたことから,気象の影響が大きいことがうかがわれた.一方,基部未熟粒は穂揃期の葉身窒素含量,玄米タンパク質含量と有意な負の相関が認められた.また,土壌窒素発現量と施肥窒素量をあわせた窒素供給量と基部未熟粒の間に有意な負の相関が認められた.調査ほ場の施肥窒素量は,目標収量から推定した最適施肥量に比べ平均1.47g m-2不足していた.以上のことから,本県では窒素供給量が不足している傾向があり,基部未熟粒の発生を抑制するためには,窒素供給量を増やすことが必要であると結論づけられた.
研究・技術ノート
  • 石川 哲也, 箭田 佐衣子, 阿部 薫
    2013 年 82 巻 3 号 p. 270-274
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    関東地方の水田において,二毛作の六条大麦とイネをともに発酵粗飼料(WCS)として生産する可能性について,予備的検討を行った.茨城県つくばみらい市の中央農研谷和原水田圃場において,2001年から2012年まで,3品種・系統を供試して10月下旬~11月下旬に播種し,苗立ち,生育ステージと乾物生産を調査した.すべての試験区で前作と後作に飼料用イネを栽培した.供試品種・系統は4月上旬~下旬に出穂し,出穂後約30日の糊熟後期(収穫期)は5月中旬~下旬となり,後作の飼料用イネは6月中に支障なく作付できた.収穫期の地際刈り乾物重は,2007年の関東皮81号が1122 g m-2と最大だったが,倒伏も生じた.さやかぜは2010年標準播種区と2011年標準施肥区で1000 g m-2を上回り,全刈り乾物収量もすべての試験区で700 g m-2を上回った.収穫期の乾物率はほぼ30%以上で,ダイレクト収穫が可能であった.品種・系統を込みにすると,400本 m-2以上の穂数で,地際刈り乾物重がほぼ1000 g m-2に達した.飼料用イネとの9組み合わせにおける二毛作の合計地際刈り乾物重は平均で2588 g m-2となり,このうち六条大麦の比率は平均で38.7%だった.収穫期地際刈り乾物の飼料成分では,さやかぜの粗タンパク質含量は約6%で,推定可消化養分総量(TDN)は60%を上回った.以上の結果から,関東地方の水田において,飼料用イネと六条大麦の二毛作によるWCS生産が可能であると判断された.
  • 藏之内 利和, 田宮 誠司, 中谷 誠
    2013 年 82 巻 3 号 p. 275-282
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    紫サツマイモを用いた蒸切干は黒変しやすく外観が劣ることが多い.そのため,黒変が少なく色調の優れた蒸切干の作製法を開発することを目的に,Lアスコルビン酸処理効果の確認ならびに処理条件の検討を行った.その結果,同処理により色調の改善が可能であることが示された.処理液濃度は2 g/L,処理液温度はサツマイモのデンプン糊化温度付近である75℃が黒変抑制効果と食味とのバランスの点で最も適していた.
  • 大久保 和男
    2013 年 82 巻 3 号 p. 283-288
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/01
    ジャーナル フリー
    脱粒割合を評価指標とした穂の握り締めによるイネ品種の脱粒性評価の省力化を目的とし,以下の解析を行った.一度に握る穂数を1穂,3穂,5穂の3通りとし,4人の調査者が7品種(脱粒性は難,中,易,極易)について各50株を調査したデータを用いて,重複のない無作為抽出によって模擬的に調査株数を増減し,各条件におけるデータ抽出と脱粒割合の計算,およびその角度変換値を用いた遺伝率の計算をそれぞれ20回ずつ行い,評価結果の変動と遺伝率を用いた評価結果の再現性の変動を比較検討した.抽出データ数が減少するにつれて遺伝率は低下する傾向にあったが,一度に握る穂数が3穂では,遺伝率が1穂や5穂よりも高く,抽出データ数を25に減らしても遺伝率が0.99と極めて高かった.未供試の極難とやや難について,脱粒し難い品種の脱粒数の分布が二項分布に従うと仮定し,脱粒する確率(p)と調査株数(n)から脱粒数の頻度分布の理論値を求め,脱粒性難および中の品種における脱粒数の実測値との比較から脱粒性の評価が可能か否かを検討した.その結果,抽出データ数が25の場合,脱粒性極難とやや難は,難の品種との区別が困難であった.また,供試品種のうち,50株のデータに基づく脱粒割合が脱粒性中と易の品種の中間の値を示す品種をやや易とみなすと,抽出データ数が25の場合,やや易と易の判別は困難であった.調査株数を25株に減らして調査する方法は品種の大まかな脱粒性の評価を行う簡便法として使用すべきであると判断した.
情 報
日本作物学会ミニシンポジウム要旨
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