日本鳥学会誌
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55 巻, 2 号
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原著論文
  • 堀江 玲子, 遠藤 孝一, 野中 純, 船津丸 弘樹, 小金澤 正昭
    2006 年 55 巻 2 号 p. 41-47
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル フリー
    栃木県那須野ヶ原において, 2000年または2001年にオオタカによって使用された営巣木と営巣地 (n =36) について, ランダムプロット (n =50) と比較し, その特徴を調べた. オオタカが営巣木として最もよく選択していたのはアカマツであり (91.7%), 落葉広葉樹を忌避していた. 営巣木の平均胸高直径は34.8±1.2cmで, 営巣木として胸高直径30cm超クラスを選択し, 胸高直径20cm以下クラスを忌避していた. 営巣環境においては, アカマツの優占度が75~100%クラスを選択し, 50%以下クラスを忌避していた. 高木層の平均胸高直径は25.2±0.7cmで, ランダムプロットと比較して有意に太かった. 全立木密度, 高木層と亜高木層の立木密度はともに有意な差が認められなかったが, 林内開空度は営巣地で有意に高かった. 以上のことから, 那須野ヶ原においては, 架巣に適したアカマツの存在と巣への出入りを容易にする林内空間の存在が, オオタカの営巣地選択に影響していることが明らかになった.
  • 植田 睦之, 百瀬 浩, 中村 浩志, 松江 正彦
    2006 年 55 巻 2 号 p. 48-55
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル フリー
    平地から低山にかけて生息する猛禽類の代表的な種であるオオタカ, サシバ, ハチクマ, ノスリの営巣環境について栃木県宇都宮近郊と長野県安曇野周辺で調査を行なった. オオタカの営巣木は栃木ではスギが多かったが, 長野ではアカマツが多く, 地域による差が認められた. また, 栃木のサシバ, 長野のノスリとハチクマは, いずれもアカマツへの営巣が多かった. 栃木県のオオタカとサシバの営巣木と周囲にある針葉樹の樹高と胸高直径について比較した結果, オオタカの多くは周囲の樹木の中でも最大級の木に営巣したが, サシバはそうではなかった. 各種猛禽類の営巣林の地上高別の被度と巣の位置をみると, オオタカの営巣林は栃木, 長野ともに巣のある樹冠部の被度は高いが, それより低い位置では被度が低くなり, 地上付近に近づくと再び被度が高くなっていた. それに対してサシバ, ノスリ, ハチクマは, 巣のある位置もそれより低い位置もあまり被度がかわらない林だった. これらの結果に基づいて, オオタカとサシバの保全対策について言及した.
  • 吉田 保志子, 百瀬 浩, 山口 恭弘
    2006 年 55 巻 2 号 p. 56-66
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル フリー
    茨城県南部の農村地域において, 繁殖に成功した場合の平均巣立ち雛数はハシボソガラスで2.37羽, ハシブトガラスで2.62羽であった. 繁殖成否不明のつがいを除外して算出した, 繁殖に成功したつがいの割合はハシボソガラスで76%, ハシブトガラスで87%であった. 両種とも季節が遅いほど1巣あたりの巣立ち雛数が少なかった. 巣周辺の植生・土地利用および他のつがいの存在が巣立ち雛数に及ぼす影響を一般化線型モデルによって解析したところ, ハシボソガラスでは隣のハシブトガラス巣との巣間距離が長く, 巣周辺の採餌環境の面積割合が高く, 隣のハシボソガラス巣との巣間距離が短い場合に巣立ち雛数が多かった. 一方ハシブトガラスでは, 今回の解析からは巣立ち雛数を説明する有効なモデルは構築できなかった. 異種間の平均巣間距離361mは, ハシボソガラス間の410mとハシブトガラス間の451mのいずれと比べても短かった. これはハシブトガラスでは隣接する場所に営巣するハシボソガラスの存在が繁殖に大きな影響とならず, 繁殖開始時期が遅いために, 既に営巣しているハシボソガラスの位置に構わずに巣を作ることが理由である可能性がある.
  • 松家 大樹, 藤岡 正博
    2006 年 55 巻 2 号 p. 67-77
    発行日: 2006年
    公開日: 2007/07/06
    ジャーナル フリー
    アユの放流がカワウの採食分布に与える影響を明らかにするため, 利根川水系鬼怒川の46kmの区間で2005年3月~8月にカワウの分布を19回調査した. この間に16地点で延べ26回, 2,417kgのアユが放流された. アユは放流後6日目まで放流地点付近で群れており, カワウの捕食にあいやすいとみなした. 調査ごとのカワウ総個体数はその時点でカワウが利用可能と推測されたアユ放流量とは有意な相関はなく, アユ放流が始まる前から多くて放流アユがまだ大量に群れていると考えられる4月下旬に激減した. 全区間内のカワウ採食個体数に対する放流地点付近 (上下500m以内) での採食個体数の割合は放流前の方が放流後より高かった. また, 15の放流地点のうち12地点においては放流後に付近で採食しているカワウが確認されなかった. 以上のことから, 本調査地ではアユの放流は, 調査区間全体への飛来数にも調査区間内でのカワウの採食分布にも大きな影響は与えていないことが示唆された.
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