日本臨床免疫学会会誌
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31 巻, 1 号
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第35回総会ポスター賞受賞記念論文
総説
  • 山本 元久, 高橋 裕樹, 苗代 康可, 一色 裕之, 小原 美琴子, 鈴木 知佐子, 山本 博幸, 小海 康夫, 氷見 徹夫, 今井 浩三 ...
    2008 年 31 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      ミクリッツ病は涙腺・唾液腺腫脹を,自己免疫性膵炎は膵のびまん性腫脹を呈し,ともに腺組織中へのIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする疾患である.私たちは,当科における全身性IgG4関連疾患(systemic IgG4-related plasmacytic syndrome ; SIPS)40例の臨床的特徴(腺分泌機能,血清学的評価,合併症,治療および予後)を解析した.男性は11例,女性は29例で,診断時の平均年齢は58.9歳であった.疾患の内訳は,ミクリッツ病33例,キュッツナー腫瘍3例,IgG4関連涙腺炎4例であった.涙腺・唾液腺分泌低下は,約6割の症例にみられたが,軽度であった.抗核抗体陽性率は15%,抗SS-A抗体陽性は1例のみ,低補体血症は30%に認められた.また自己免疫性膵炎,間質性腎炎,後腹膜線維症,前立腺炎などの合併を認めた.治療は,臓器障害を有する症例で治療開始時のステロイド量が多く,観察期間は最長16年のうち,臓器障害の有無に関わらず3例で再燃を認めた.ミクリッツ病をはじめとするSIPSの現時点における問題点と今後の展望について述べてみたい.
  • 高橋 尚美, 森尾 友宏
    2008 年 31 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      分類不能型免疫不全症は血清イムノグロブリンの低下と感染に対する感受性の増加を特徴とする原発性免疫不全症である.患者は様々な臨床症状を呈し,細胞レベルおよび免疫学的においても多様な欠損があり,自己免疫疾患を合併しやすく悪性腫瘍への感受性も高い.最近CVIDの原因となる4つの遺伝子の欠損(ICOS, TACI, BAFF-R, CD19)が同定され,CVIDにおける遺伝的基盤の多様性を実証している.これら遺伝子の異常はそれぞれ異なる段階でB細胞の成熟,機能および分化を障害する.原因遺伝子の解明にも関わらず,それが免疫不全に結びつく分子メカニズムは未だによく理解されていない.本稿では,CVIDの分子基盤について概説し,分子の欠損が自己免疫にどのように結びつくかについての知見を紹介する.
  • 中里 款, 野々村 美紀, 宮坂 信之, 上阪 等
    2008 年 31 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)に対する新たな治療法として,罹患関節の滑膜に直接的に抗リウマチ分子を発現させる遺伝子治療が検討されている.また一方で,滑膜細胞に対する遺伝子導入は治療標的分子の解明においても有用なツールであることは言を待たない.これまでアデノウイルスベクターなど増殖性の低い細胞にも導入可能な感染性ベクターを中心に病変滑膜に対して有用な導入系が構築されているが,本稿では関節滑膜における各種の遺伝子導入法について特性と現状を総括し,その有用性について我々の研究結果を絡めて論ずる.
      現時点における遺伝子導入系はウイルスベクターと非感染性ベクターの二種に大別されるが,2007年にはアデノ随伴ウイルスベクターを用いた関節リウマチの治験が行われており,ウイルスベクターの実用化に向けた強いアプローチとなっている.一方で非感染性ベクターについても有用性の高い新規担体が開発されつつある.いずれの導入系も臨床レベルの実用化には今後も検討を必要とするが,遺伝子治療は “Bench to Clinic and Clinic to Bench” を理想的に体現しうる技術であり,今後の応用が期待される.
総説
  • 長谷川 稔
    2008 年 31 巻 1 号 p. 23-36
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      全身性強皮症は,皮膚や内臓臓器の過剰な細胞外基質蛋白の沈着と血管障害により特徴づけられる自己免疫疾患である.その病態はいまだ不明であるが,ほとんどの症例がレイノー現象という虚血再還流による臨床症状で発症する.繰り返すレイノー現象による血管内皮細胞障害がトリガーとなって,組織への細胞浸潤,浸潤細胞からのサイトカイン産生が生じ,組織の線維化が生じる可能性が考えられる.これらの過程において,ケモカインは白血球の浸潤,活性化とそれに引き続く浸潤細胞と線維芽細胞との相互作用などを介して,重要な役割を果たしているものと考えられる.これまでに,強皮症やそのモデルマウスにおいて多様なケモカインの発現異常や病態への関与を示唆する知見がみられるが,中でもmonocyte chemoattractant protein-1 (MCP-1/CCL2)とその受容体であるCCR2の役割が重用視されている.本総説では,これまでに報告されている各種ケモカインの強皮症において想定される役割について概説する.
  • 鈴木 春巳, 小田 浩代
    2008 年 31 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      低分子Gタンパク質は細胞の増殖,アクチン再構成,膜輸送をはじめとする様々なシグナル伝達に広く関与している分子群であり,GTP型とGDP型とに相互変換することで分子スイッチとして働いている.ところが,150種もある低分子Gタンパク質の中には,この大原則に従わない「非定型Gタンパク質」も多数存在する.近年これらの分子の機能が明らかになるにつれ,次第に注目を集めるようになってきた.Rac1の選択的スプライシング産物であるRac1b分子は非定型Gタンパク質であり,大腸がんや乳がん細胞において過剰発現していることから腫瘍化との関連が指摘されている.この稿では,造血系細胞に特異的に発現する非定型RhoファミリーGタンパク質,RhoHに着目し,T細胞の分化,シグナル伝達におけるRhoHの新しい機能について,最近の我々のデータも含めて解説したい.
  • 宮地 清光, 宮川 浩, 織田 正也, 堀米 恒好, MJ FRITZLER
    2008 年 31 巻 1 号 p. 47-55
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      原発生胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis, PBC)患者血清に抗ミトコンドリア抗体が発見されてから50年になる.PBCの患者の85~95%に本抗体は出現しますが,対応抗原はミトコンドリア内膜にあるピルビン酸脱水素酵素群(pyruvate dehydrogenase complex, PDC)群のE2と,E3 binding proteinなどであることが解明された.抗セントロメア抗体もPBCの20~30%に認められるが,培養細胞(Hep 2など)を用いれば,AMAとともに容易に検出できる.しかし,抗核膜抗体,抗multiple nuclear dot抗体は他の抗核抗体が併存するとその検出は困難である.最近PBCに出現する抗核膜抗体の中では抗gp210抗体が高頻度であること,抗multiple nuclear dot抗体の対応抗原がsp100であることが証明された.この2つのリコンビナントタンパクを利用してELISAで検索すると容易に検出でき,特にAMA陰性PBCにも検出された.これらの抗体の臨床的意義は明らかにされていない部分があるが,抗gp210抗体はPBCの予後が悪いマーカーで,進行と関係があるという報告が多い.
症例報告
  • 嶋元 佳子, 尾崎 吉郎, 安室 秀樹, 孫 瑛洙, 今村 麻衣子, 谷尻 力, 横井 崇, 矢木 泰弘, 伊藤 量基, 米津 精文, 福原 ...
    2008 年 31 巻 1 号 p. 56-61
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      我々は3例の縦隔気腫合併筋炎を経験した.症例1は61歳,女性のamyopathic dermatomyositis,症例2は57歳,女性の皮膚筋炎であった.両者とも間質性肺炎の合併は軽度であったが,皮膚潰瘍を伴う皮膚血管炎の治療に難渋し,皮下気腫,縦隔気腫を合併した.症例2は感染による縦隔炎を併発した.症例3は63歳,男性の多発性筋炎.間質性肺炎が難治性であり,気胸発症後に皮下気腫,縦隔気腫を合併した.
      症例1,2は血管炎が縦隔気腫の主たる発症成因と疑うことができた.また,症例2ではステロイドによる組織の脆弱化や易感染性も影響したと考えられた.症例3は間質性肺炎が強く,ステロイドの投与歴も長いことから,これらが気腫発症に起因したと考えられた.
      3症例は各々異なる機序による気腫病変を合併したと考えられ,多発性筋炎/皮膚筋炎に合併する縦隔気腫の機序を考える上で貴重な症例と考えられた.
  • 越智 小枝, 窪田 哲朗, 杉原 毅彦, 小川 純, 駒野 有希子, 野々村 美紀, 宮坂 信之
    2008 年 31 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      症例は64歳,女性.1988年,労作時呼吸困難が出現し,間質性肺炎(IP)と診断された.Prednisolone (PSL) 40 mg/日による治療が開始され,1991年からは5 mg/日の維持量が投与されていたがIPは緩徐に進行し,1993年に在宅酸素療法導入となった.2002年3月より関節炎が持続し,X線所見,病理所見から関節リウマチの診断が確定し,salazosulfapyridine投与が開始された.同年10月,突然の背部痛の後呼吸困難が生じ,胸部X線像およびCT像にてIPの増悪と多発肺嚢胞を認めた.Methyl-prednisoloneパルス療法を行い,その後PSL 30 mg/日を経口投与したところ,関節炎は改善し肺嚢胞も縮小したが,第55病日には前胸部の絞扼感とともに縦隔気腫が出現した.IPが遷延し,血清KL-6値が依然として高値であったため,tacrolimus 3 mg/日を併用しながらPSLを減量した.その後縦隔気腫の消失とIP及び関節炎の改善を認め,第87病日退院となった.近年皮膚筋炎/多発性筋炎などに合併したIPに対するtacrolimusの有効性が報告されているが,本例はtacrolimusが関節リウマチに合併するIPに対しても有効であることを示唆する症例である.
  • Yuji NOZAKI, Yasuaki NAGARE, Koji KINOSHITA, Fumiaki URASE, Masanori F ...
    2008 年 31 巻 1 号 p. 68-70
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      A 22-year old female suffering from recurrent oral ulcers, genital ulcers, erythema nodosum, and folliculitis, was diagnosed as having Behcet's disease (BD). She has also hypopigmentation of skin and hair, and optic changes associated with albinism including hypopigmentation of the retina, nystagmus, strabismus, and reduced visual acuity. In this report, we discuss the possibility of precipitating factor in BD that the hypersensitivity, mental stress, and drug resistance which is caused by albinism.
  • 田中 康博, 瀬尾 龍太郎, 永井 雄也, 森 美奈子, 戸上 勝仁, 藤田 晴之, 倉田 雅之, 松下 章子, 前田 明則, 永井 謙一, ...
    2008 年 31 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/01
    ジャーナル フリー
      症例は58歳の女性.31歳より全身性エリテマトーデス(SLE)および抗リン脂質抗体症候群(APS)のためprednisoloneとazathioprineを内服しSLEとAPSは安定していた.2004年10月,発熱を伴う感冒様症状が出現したので近医に入院.抗生剤は無効で血小板減少が出現したので,SLEの増悪との診断のもとステロイドパルス療法が施行された.しかし,汎血球減少へと進展したので当院へ転院となった.骨髄穿刺で血球貪食像が認められ,胸部CTで肺門部を中心とするスリガラス影が認められた.同日のcytomegalovirus (CMV) antigenemiaが陽性であった.以上より,CMV関連血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome ; HPS)およびCMV肺炎と診断.azathioprineを中止しprednisoloneを減量してgancyclovirを開始.これにより解熱し汎血球減少は改善した.現在,外来通院中でCMV感染の再発を認めていない.SLEなどの膠原病にCMV関連HPSを併発することは稀であるため報告する.
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