Palliative Care Research
Online ISSN : 1880-5302
ISSN-L : 1880-5302
4 巻, 2 号
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原著
  • 秋山 美紀, 的場 元弘, 武林 亨, 中目 千之, 松原 要一
    2009 年 4 巻 2 号 p. 112-122
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/29
    ジャーナル フリー
    【目的】診療所医師の在宅緩和ケアの実施状況および困難感を明らかにし, がん緩和ケアを地域で推進するための有効策を検討することを目的とした.【方法】緩和医療資源が十分でないと考えられる地域の全診療所69カ所の医師を対象に, 質問紙調査によって在宅緩和ケアの実施状況と今後の対応の意向を評価したうえで, 62カ所の診療所医師のインタビュー調査により在宅緩和ケア実施の阻害要因などを明らかにした.【結果】質問紙の回収率は81%で, 在宅緩和医療の実施率は, 比較的末期のがん患者の在宅診療27%, モルヒネ内服による疼痛管理29%, 精神面サポート12%などであった. インタビュー内容分析の結果, 緩和スキルの向上, 病院医師との関係構築, 患者・家族・一般市民の啓発などの必要性が示された. 【結語】在宅緩和ケア推進のためには, 地域で研修会などを開催し, 病院, 診療所間で良好な関係を築きながらスキルアップを行うとともに, 一般市民の在宅ケアへの理解を培うことが重要である. Palliat Care Res 2009; 4(2): 112-122
短報
  • 岩満 優美, 平井 啓, 大庭 章, 塩崎 麻里子, 浅井 真理子, 尾形 明子, 笹原 朋代, 岡崎 賀美, 木澤 義之
    2009 年 4 巻 2 号 p. 228-234
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/07
    ジャーナル フリー
    本研究では, がん診療連携拠点病院を中心とした緩和ケアチームで一定の活動経験のある7名の医師および看護師を対象に, フォーカスグループインタビューを実施し, 緩和ケアチームが心理士に求める役割について検討した. インタビュー内容の質的分析の結果, 緩和ケア領域に携わる心理士が役割を果たすために必要な知識として, 第1に, 基本的ならびに専門的な心理学的知識とスキルが挙げられた. 第2に, がんに関する全般的ならびに精神医学的知識が挙げられた. その他に, 他職種の役割と医療システムに関する知識が求められており, 医療者への心理的支援を望む声も認められた. 以上より, 本研究で明らかにされた心理士に求める役割とは, がん医療に関する幅広い知識をもとに他職種と十分にコミュニケーションをとりながら, 心理学的な専門性を活かして, 患者・家族, および医療者に心理的支援を行うことであった. Palliat Care Res 2009; 4(2): 228-234
  • 根東 順子, 山田 達治, 平田 明裕, 上松 俊夫
    2009 年 4 巻 2 号 p. 235-239
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/03
    ジャーナル フリー
    【背景】がんによる消化管閉塞に対して行う消化管バイパス手術は, 必ずしも十分な効果をもたらさない. そこで, バイパス手術による食事摂取の改善の程度を評価した.【対象と方法】バイパス手術後に原病死した30例で, 手術前後に食事摂取が不能であった期間および可能であった期間を調査した. 「食事摂取が不能となってから死亡するまでの期間」に対する「バイパス手術後に食事摂取が可能であった期間」の割合(食事摂取改善率とする)を算出した.【結果】食事摂取改善率の平均値は41%であった. 5%未満の症例は大腸がんにはなかったが, 胃がんは9例中1例, 膵胆道がんは12例中5例, 尿路がんは2例中1例であった.【結論】食事摂取が不能となってから死亡するまでの期間のうち, 41%の期間においてバイパス手術は食事摂取を改善した. がんの原発部位による食事摂取改善率の差異が示唆され, さらに多くの症例で手術適応を詳細に検討していく必要がある. Palliat Care Res 2009; 4(2): 235-239
症例報告
  • 村上 望, 新敷 吉成, 角谷 慎一, 村杉 桂子, 田辺 公一, 北澤 英徳
    2009 年 4 巻 2 号 p. 321-329
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/03
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代, 女性. 胃がん術後のSchnitzler転移と診断され, 人工肛門造設となった. この後, 抗がん剤治療を行ったが, 嘔気および下腹部痛が増悪したため入院となった. がん性腹膜炎の増悪と考え, 酢酸オクトレオチドの持続皮下投与を開始したところ, 著効を示した. 食欲不振STASは最大スコア4から, 1週間後にはスコア1にまで改善した. 患者・家族の意向をふまえ在宅ホスピスケアへ移行した. その後, 酢酸オクトレオチド投与によって在宅においても良好なQOLが保持された. 酢酸オクトレオチドはがん性腹膜炎に伴う嘔気・嘔吐や腹部膨満症状の緩和に有効な薬剤であるが, 入院においての使用には制約が発生する. 在宅ホスピスケアにおいて患者のQOLの保持・向上のために酢酸オクトレオチド投与は症状改善においても, また経営面においても有用であり, 今後の在宅ホスピスケアの重要なツールとなりうると思われる. Palliat Care Res 2009; 4(2): 321-329
  • 渡邊 紘章, 栗原 幸江, 奥津 輝男, 中澤 秀雄, 西崎 久純, 大坂 巌, 青木 茂, 安達 勇
    2009 年 4 巻 2 号 p. 330-333
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/20
    ジャーナル フリー
    【目的】がん終末期のせん妄の20~50%では可逆性を認めるとされ, その診断は終末期がん患者のquality of life維持に重要と考える. 今回われわれは, ビタミンB1静脈投与によりせん妄の改善を得た終末期がんの1例を経験したので報告する. 【症例】83歳, 女性. 進行子宮頸がん, がん性腹膜炎を合併していた. 入院後に睡眠覚醒リズム障害, 注意集中困難などの症状が出現し, せん妄と診断した. 薬剤, 器質的脳疾患など明らかな原因を認めず, 血液検査上ビタミンB1濃度が低値(19ng/ml)であったため, ビタミンB1欠乏症と診断し, 静脈投与を開始した. その後, せん妄症状は1週間ほどですべて改善した. 【結論】本症例は, 安定した経口摂取中に, 腸管通過障害に伴う吸収不良が原因と考えられる, ビタミンB1欠乏症によるせん妄を発症した. がん終末期には, 経口摂取不良や発熱による利用亢進, 消化管合併症による吸収障害などをきたしやすく, 原因の不明確なせん妄には, ビタミンB1欠乏症の検討も必要と考えられた. Palliat Care Res 2009; 4(2): 330-333
  • 荒木 裕登, 山中 幸典, 酒井 崇, 松浦 明子, 岡井 美鈴, 田中 友晴, 齋藤 友季子, 青沼 宏深, 向井 賢司, 片山 直之, ...
    2009 年 4 巻 2 号 p. 334-338
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/08/28
    ジャーナル フリー
    【目的】ホットフラッシュは終末期前立腺がん患者のQOLを損なう難治性な症候である. 男性のホットフラッシュにガバぺンチンが著効した症例を経験したので報告する. 【症例】70歳代, 男性. 前立腺がん(stage D). LH-RHアゴニストを投与され, 投与開始2カ月目よりSTAS-J, 自覚症状共に3/4-4/4程度のほてりが出現し, QOLが著しく損なわれていた. 鎮痛補助薬としてガバぺンチン400mg/日の投与を開始したところ, 投与開始7日目には, ほてりがSTAS-J, 自覚症状共に2/4にまで改善した. 以降, ガバぺンチン増量し, 1,000mgまで増量した投与開始17日目にはSTAS-J, 自覚症状共に0/4にまでほてりは劇的に改善した. 1,200mgまで増量し維持量としたが, 以降, ホットフラッシュは出現せず, QOLが保たれた. 【結論】本症例は, 鎮痛補助薬として使用したガバペンチンによって, 前立腺がんホルモン療法の副作用であるホットフラッシュが著明に改善された. 本症例および文献的考察により, ガバペンチンは終末期前立腺がん患者のQOLを改善する可能性があると考える. Palliat Care Res 2009; 4(2): 334-338
  • 澤田 貴裕, 畑地  豪, 安田 麻衣子, 玉井 宏一, 坂川 美保, 大戸 五百子
    2009 年 4 巻 2 号 p. 339-345
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/10/30
    ジャーナル フリー
    進行がんの浸潤によって生じた皮膚潰瘍は, その自壊による悪臭(がん性悪臭)を伴うことが多い. われわれは胃がんの胸膜転移の胸壁進展によって生じた皮膚潰瘍部のがん性悪臭にメトロニダゾールが有効であった症例を経験した. 症例は60歳代, 男性. 胃がん術後の吻合部縫合不全により生じた左横隔膜下膿瘍から経横隔膜的に膿胸となり, 胸腔ドレーンを留置した. また両側肺野と胸膜面への転移が認められた. その後, 胸腔ドレーンと胸壁との間隙を介して胸膜転移巣が胸壁に進展し, 自壊して潰瘍を形成し, 悪臭を発するようになった. メトロニダゾール軟膏の塗布を開始したところ, がん性悪臭の改善がみられた. 臭気測定器を用いた評価に加え, 患者自身による主観的評価スコアによっても有効性が確認できた. Palliat Care Res 2009; 4(2): 339-345
  • 大井 裕子, 小穴 正博, 林 裕家, 相河 明憲, 山崎 章郎, 石巻 静代, 鈴木 道明, 近藤 百合子, 山本 美和
    2009 年 4 巻 2 号 p. 346-350
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/12/30
    ジャーナル フリー
    緩和ケア領域で経験する頭頸部がんや各種がんの皮膚転移, 非切除乳がんなどの体表部悪性腫瘍の出血に対しては, 有用な方法がなく止血に難渋していた. 今回われわれは, 中咽頭がん再発病巣から出血を繰り返し, 1日に5回前後の包交を必要としていた患者に対して, Mohsペーストを使用することにより著明な止血効果と滲出液やにおいの軽減が認められた症例を経験したので報告する. Mohsペーストは, 安価な材料を用いて院内調製が可能であり, その作用機序は主成分の塩化亜鉛が潰瘍面の水分によりイオン化し, 亜鉛イオンのタンパク凝集作用によって腫瘍細胞や腫瘍血管, および二次感染した細菌の細胞膜が硬化することによる. 本症例においてMohsペーストは, 予後の限られた患者が出血や滲出液, においに悩まされることなくQOLを維持するために効果的であった. 今後, 製剤の安定性や使用方法が確立され, 本法が普及することが期待される. Palliat Care Res 2009; 4(2): 346-350
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