日本デザイン学会研究発表大会概要集
日本デザイン学会 第55回研究発表大会
選択された号の論文の185件中1~50を表示しています
  • デザイン科学の枠組み構築に向けて
    松岡 由幸
    セッションID: A01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
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    従来,デザイン学研究は対象に依存したデザイン方法や技術の研究が主流であり,デザイン対象に依存しない一般性を有するデザイン理論や方法論に関する研究は少ない.吉川らの一般設計学はその基盤をなすものであるが,デザイン科学の枠組み構築のためには,これにつづくさらなる研究が不可欠となる.本報では,今後のデザイン科学の枠組み構築の一助とすべく,デザイン理論の枠組みとしての多空間デザインモデルの概要を提示する.そして,同モデルのデザイン科学の枠組みにおける位置づけを示すとともに,同モデルに基づくデザイン推論の枠組みの構造を明示する.
  • 杉山 滝三, 栃澤 光彦, 松岡 由幸
    セッションID: A02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    建築の創造行為は,対象とその周囲のモノやコトに注目するデザインと,対象自身に注目する工学設計に分業化している.それらに関する研究も,デザインに関する建築学会計画系と,工学設計に関する建築学会構造系がある.近年,ニーズの多様化に伴い,分業化による設計は困難であり,新たな建築デザインとそのための研究が必要とされている.一方,プロダクト分野も同様に,デザインと工学設計が分業化されており,ニーズの多様化に伴い,分業化による設計は困難とされている.しかし,プロダクト分野は,デザインと工学設計を包含した統合デザインの可能性が指摘されている.そこで本研究では,デザインと工学設計を包括的に説明可能な多空間デザインモデルに着目し,はじめに両分野におけるデザイン系学会と工学設計系学会の論文を分類し,その後,両分野を比較分析することで,建築分野における研究指針を得た.デザイン系研究では,内部モデルと外部モデルの関係性に関する評価の研究,工学設計系においては設計プロセスの研究が挙げられた.
  • 斎藤 清和, 川島 淳平, 浅沼 尚, 松岡 由幸
    セッションID: A03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    近年,社会構造の複雑化やニーズの多様化に伴い,人工物は大規模・複雑化した.その結果,人工物デザインの分業化・専門化が促進され,デザイン上流過程から下流過程までの連携が難しくなっているという問題が発生している. そこで、本研究では,デザイン上流過程から下流過程まで一連のデザイン過程を連続的に展開できる手法を提案することを目的とする.まず,デザインにおける視点としてデザイン理論のフレームワークである多空間デザインモデル[注1]に着目し,同モデルに基づき,デザイン上流過程から下流過程まで一連のデザイン過程を連続的に展開できるデザイン手法を提案する.つぎに,提案手法をデジタルコンポジションシステム開発の上流デザインへ適用することにより,手法の特徴を確認する.
  • デザインの統合化を目指して
    氏家 良樹, 松岡 由幸
    セッションID: A04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
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    20世紀までのデザインは,人々の生活を豊かにした反面,多くの負の遺産も生み出した.本報は,デザインを,内部システムに主眼を置いてデザインを行う「内的デザイン」と,外部システムとの関係性に主眼を置いてデザインを行う「外的デザイン」の2つに大別し,それぞれの特徴に基づく観点から,これまでのデザインの文脈を総括する.デザインの細分化による情報の共有や協調デザインにおける難しさという課題を明確にするとともに,21世紀のデザインにおいては,細分化された各デザインの統合化と,それによる共通の基盤構築が重要となることを示す.
  • 価値成長型デザインを目指して
    栃澤 光彦, 五十嵐 浩也, 松岡 由幸
    セッションID: A05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
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    デザインの専門化・細分化により,人工物デザインは発展した.その一方,デザイン情報の共有や協調デザインが困難となり,環境問題や人為的事故の要因となっている.近年では,外的デザインと内定デザインの統合化が指摘されており,具体的な例としてデザインの奉仕化と生命化がある. 本研究では,デザインの生命化とデザインの奉仕化における特徴の考察と,両者の関連研究についての考察を行った.また,両者がもたらす更なるデザインコンセプトである「価値成長型デザイン」の可能性について考察を行った.
  • デザイン学の射程
    野口 尚孝
    セッションID: A06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
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    デザイン学の研究対象は時代的な背景をもつデザイナーという職業の内容に関する問題と、それが登場してはじめて明らかになった、時代を超えて存在する人間の普遍的デザイン行為という二重の構造を持っている。今日、職業としてのデザイナーは、消費社会のプロモーターとしての役割を果たしてきたが、その結果として消費社会全体がもたらした地球環境悪化や資源枯渇というグローバルな壁に突き当たった現在、自らの時代性を批判的に自覚し、より普遍的な立場から人間生活全般のデザインを考えなければならない地点に来た。デザイン学はそのような事態を的確に把握し次世代のデザイン理論を構築すべきであると考える。
  • 松永 絵美, 川西 翔樹, 氏家 良樹, 松岡 由幸
    セッションID: A07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
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    認知における全体と部分の関連性については,認知科学のルーツの1つであるゲシュタルト心理学において述べられている.ゲシュタルト心理学者は,「全体は部分の総和以上のものである」として全体の優位性を主張しており,ヒトの認知が要素には還元できない全体的な枠組みにより規定されると指摘している.しかし,ゲシュタルト心理学で述べられた全体と部分の関連性には定性的な知見が多く,ヒトが抱くイメージや印象などに対応するマクロ情報(全体)をミクロ情報(部分)からどのように算出すれば良いのか,という課題に対しては十分な知見が得られていない.そこで本研究では,「場」と「境界」の概念を導入することで,マクロ情報の定式化およびマクロ情報(全体)とミクロ情報(部分)の関連性解明を図る学問「マクロ感性科学」の概念を述べる.そして,形の「複雑さ」というマクロ情報に対応するマクロ情報の定式化研究および応用事例を紹介し,そこで抽出された課題と,定式化におけるマクロ感性科学の重要性について言及する.
  • 視覚障害者の2次元図形認知に関する研究(3)
    鄭 賢淑, 森 典彦
    セッションID: A08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
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    触知のための案内図記号のデザインに係わる認知力調査をした。写真を線画にした7種の基本図形に3属性として要素数E、曲線数C、直線数Lを与え、単純化したサンプルを用いて視覚障害者の分かりやすさに対する影響力を重回帰分析により分析した。その結果、女性、犬、車は直線数に、子供、男性、飛行機は曲線数、鹿は要素数に影響されていることと、望ましい単純化の程度を知ることができた。さらに、より分かりやすいデザイン作成のため、理論値が高いデザインを試案した結果、理論値が高くても分かりやすさへの影響は少なかった。また、データを基準化して一般的傾向を求めた結果、曲線数や直線数の増加がプラスに働く傾向が確かめられた。これらの調査結果は今後の触知のための案内用図記号のデザイン作成に有効である。
  • 形状として外在化された他者の感性イメージと視点の影響
    柳澤 秀吉, 村上 存
    セッションID: A09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
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    感性品質は,以下の理由により顧客の要求の抽出や客観的な記述が困難であるため,製品設計への展開が難しい.すなわち,感性品質に対する要求のイメージを外在科することが困難な感性は暗黙性,感性が人によって異なる多様性,そして,顧客自身も気づいていない感性が潜在性の三点である.このうち,本研究では,未踏の課題である感性の潜在性に着目する.これまでに,筆者らは,単純な意匠形状を対象として,潜在感性を喚起させ,それに基づく要求を外在化させる方法を基礎的な検討してきている.その方法は,複数の顧客間で,任意の感性に対する形状イメージと,その視点を相互に交換・共有させるアプローチである.すなわち,他者の異なる視点によって,対象や感性に対する新しいとらえ方を獲得させる方法である.ところが,共有する視点や感性イメージ(形状)が膨大になると,潜在感性の喚起に有効な少数の視点や感性イメージを抽出する必要性が生じる.そこで,本報では,どのような視点や感性イメージ(形状)が,他者の潜在感性を喚起させるために受け入れられるか,について被験者による実験から検討する.
  • 萩原 将文, 猿渡 潤一
    セッションID: A10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    デザイン支援システムの研究が盛んに行われるようになり、感性を考慮した研究も増えている。美を扱った従来の研究には、多変量解析などの手法を用いたものが多い。しかしながら、このようなアプローチでは個人差が大きいものへの対応は難しい。本稿では、美を考慮したデザイン支援としていけばなをテーマとして扱い、そのためのシステムの提案を行う。提案システムでは、人間がどのようにデザインを美として認識するかが考慮されている。またアプリケーションとしての完成度を高めるために、花材の追加、削除、変更機能と花器の色、形状の変更機能が備えられている。
  • 大橋 裕太郎, 有澤 誠
    セッションID: A11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、特に動物園や水族館など生き物を扱う文化施設においての学習環境デザインについて、私達がこれまで動物園と水族館で行った事例をもとに、情報デザインや学習支援の観点から述べる。2つの事例では、展示リソースを再構成することで利用者のための学習環境として利用し、学習者の参加プロセスに重点を置いた新しい展示デザインを試みている。特に、モバイル技術やネットワーク技術、映像や音声コンテンツなど複数のメディアやコンテンツを取り入れることで、これまで利用者が体験し得なかったユーザエクスペリエンスを提供することに力を入れている。
  • ヘッド・アップ・ディスプレイの視認性研究の比較研究
    千葉 茂, 川崎 晃義, 鈴木 隆
    セッションID: A12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    研究の目的は、ヘッド・アップ・ディスプレイの視認性の実験をすることで、日本人と欧米人との視認性の違いを明らかにすることである。 日本人の被験者は、日本精機株式会社の従業員及び、長岡市シルバー人材センター登録者など、合計60名である。欧米人の被験者は、上智大学の教職員と学生で、アメリカ人24名、ドイツ人9名、イギリス人8名、スウェーデン人4名など合計60名である。 実験方法は、「俯角」「輝度コントラスト」「表示距離」「表示サイズ」「色波長」の5要因に3水準を設定したスネレン視力表をランダムに表示させて、表示してから認識するまでの表示時間を測定した。 日本人と欧米人との実験結果を比較すると、「輝度コントラスト」と「表示サイズ」が最も視認性に影響した。但し、日本人は「輝度コントラスト」の高いほうを好む傾向にあり、欧米人のほうはサイズや輝度変化に敏感であることを明らかにした。
  • 佐藤 浩一郎, 松岡 由幸
    セッションID: A13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    デザイン過程を,概念デザインや基本デザインが含まれるデザイン上流過程と,詳細デザインなどを含むデザイン下流過程の2つに大別すると,それらは以下の異なる特徴を有している.まず,上流過程においては不明確なデザイン目標や制約条件のもと,デザイナーの経験に基づく知識や直観を用いて,試行錯誤的に広い解空間から多様なデザイン解の探索が行われる.そして,下流過程においては明確化されたデザイン目標や制約条件のもと,合目的に狭い解空間から唯一のデザイン解の探索が行われる.この下流過程は,デザイナーの直観に依存する部分はあるものの,最適化法やCADなどの活用によりデザイン行為に合理化がもたらされている.一方,上流過程は,いまだその多くをデザイナーの直観に依存しており,大域的な解探索を可能とする数理手法や,それを前提とした逆問題の解法を可能とする設計研究の進展が必要とされている.本報では,このようなデザイン上流過程およびデザイン下流過程に適用可能な人工物デザインである「創発デザイン」と「最適デザイン」の概念を示し,それぞれの適用条件や適用可能なデザイン問題について示した.
  • 全体性の形成から見た課題
    宮田 悟志, 松岡 由幸
    セッションID: A14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    人工物デザインの方法論として, アナリシスにもとづく方法論とシンセシスにもとづく方法論の2つの方向性が存在し, その中で創発性は, シンセシスの重要な要素として注目を集めている. しかし, 要素還元的な方法で扱うことが困難な「何か」の担い手として創発性は注目されるが, 創発性の原理的考察, 特にデザインシンセシスの為の要素としての創発性を科学的に考察する動きは少ないように思われる. 本発表では, 自然界に見られる創発性と人工的にシミュレートされる創発性の例を示すことから始め, 現在の創発的デザイン方法の状況を概説する. そして全体性とのかかわりから, 今日の創発的方法の水準に言及し, 今後デザインシンセシスの方法として, 創発性にもとづく方法が発展するために必要な要件について主張を行う.
  • 飯田 理恵, 青山 英樹
    セッションID: A15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    工業製品の市場のグローバル化によって,開発拠点は複数の国や地域にまたがって行われることが多くなった.また,消費者ニーズに応える製品をタイムリーに提供するために,製品開発のリードタイムを短縮することは重要な課題である.このような状況の下で,遠隔地との協調作業を行う機会は増加の傾向にあり,それを支援する新しい技術が必要とされている.遠隔地間の協調作業支援システムは,設計・開発のための協調作業を設計・開発者自身が移動することなく行うことを可能にし,時間とコストを削減することが期待されている. 遠隔地との協調作業設計支援システムとして,製品の設計・開発における下流のプロセスを支援するものはこれまでにも研究されている.しかし,より上流のプロセスにおいて遠隔地との協調作業を行う研究はなされていない.上流プロセスにおいて,意思決定が早くなされることは,さらなるリードタイムの短縮ならびにコスト削減につながるといわれている. 本研究では,設計プロセスの上流におけるアイデア創発段階において,直感的な3次元形状モデル構築手法を提案し,遠隔地との協調デザイン作業を支援するシステムを提案することを目的としている.
  • 総社市常盤地区公園デザインワークショップにおける実践と検証
    熊澤 貴之, 齋藤 美絵子
    セッションID: A16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    部分的な場面の構築から全体的な場面の構築に至る場面想起法を導入したユーザー参加型デザインの効果が総社市常盤地区公園デザインワークショップにおいて検証された。その結果、1)ユーザーは全体と部分のデザイン像を確立しやすいこと、2)ユーザーの満足度と納得度が得られやすいこと、3)ユーザーの意見集約と合意形成に役立つこと、4)デザインプロセスにかかる時間を短縮できることが確認された。
  • 下顎骨骨折治療用スプリントの設計手法の考察
    齊川 義則, 國本 桂史
    セッションID: A17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     医療領域におけるハードによる解決方法の提示には、装着する患者の身体の形態にあわせて、器具を制作する必要がある。そこで本研究においては歯牙や骨格や軟組織の形態にあわせたスプリント設計を事例として考察するため、まずはDICOMデータを用いた設計手法と、ラピッドプロトタイピング技術を用いたモデル制作手法を検討する。ここでは、形態データの取得からCAD上での形態的整合性と、ラピッドプロトタイピングでの再現性を検討する。その結果から、DICOMデータからの医療領域でのラピッドプロダクト手法の有効性を導き、顎間固定スプリントの設計提案と、本研究の患者へ提供するラピッドプロダクトを製造するまでの手法論確立という最終的な目標にへ向けて、ラピッドプロトタイピングの医療領域における有効活用に関わる検討も合わせて行う。 本研究では、下顎骨骨折におけるスプリントの設計手法を事例に、人体の3次元解析データであるDICOMデータをもとに光造形法を用いたラピッドプロダクトによるソリューションを実践し、その検討結果を提示した。
  • 東 大輔, 石井 明
    セッションID: A18
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    19世紀末から20世紀初頭,それまで移動手段を馬車に頼っていた人々にとって,人の能力をはるかに超えるスピードで自由に好きな場所へ移動できる自動車は人々の憧れや夢の対象であり,スピードこそがその存在意義であった.そのため,最高速度性能を向上させる目的で自動車の外形デザインに空気抵抗を低減させる空力デザイン処理が施されるのは必然の結果であった.もちろん,空気抵抗を低減する目的は最高速度性能を高めるためだけではなく,燃費を良くするためでもある.自動車は航空機ほどスピードレンジが高くなく,速度の二乗に比例する空気抵抗の影響も航空機ほどは大きくないため,一台あたりの燃費低減量は微々たるものかもしれない.しかし,世界中で稼働している自動車の数を考えた場合,その積分値たるやとても無視できる量ではない.環境問題への関心がますます高まる近年,どの企業も社会的責任を果たすべく真剣に空力デザインに再注力し始めている .そこで,本報では近年再注目されている空力デザインをより深く理解すべく,その変遷と近年のトレンドを歴史的,商業的な背景を交えて分析し,今後の展望と望ましいデザインプロセスの姿を考察する.
  • 中塚 慧, 松岡 由幸
    セッションID: A19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    近年,ニーズの多様化や市場のグローバル化に伴い,人工物を取り巻く場は多様化している.ここで場とは,製品を取り巻くヒト,モノ,環境に含まれる全ての要素および要素間の関係である.例えば,椅子の例では,従来考慮されてきた平均的な体格や着座姿勢だけではなく,体格,着座姿勢,および使用目的の多様性を考慮する必要がある.このため,多様な場に対応可能な製品を開発する方策が求められている.一方,上記の問題を解決する方策としてロバストデザインが注目されている.ロバストとは,「頑強な」または「頑丈な」という意味であり,ロバストデザインとは,場の変化による製品の様々な変動に対して,機能の安定性(頑強性)が確保された製品を作ることを目的としたデザインである.本研究では,ロバストの意味,ロバストデザインの概念,およびロバストデザイン法を紹介することにより,本デザインにおける概念を説明した.
  • 渡井 惇喜, 中塚 慧, 氏家 良樹, 松岡 由幸
    セッションID: A20
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    ロバストデザインとは,製品における様々なばらつきに対して,機能の安定性が確保された製品を開発するための方策である.過去の研究において,使用者や使用環境などの外部システムに起因するばらつき(多様場)に対応可能である手法を,多様場に対応するロバストデザイン法と称して提案した.また,同手法を,可変機構を有さないデザイン問題および特定の可変機構を有するデザイン問題に適用し,同問題における活用方法に関しての知見を得た.しかし,一般的な可変機構は多様な機構が考えられるが,同手法を用いたロバスト性評価方法および最適可変域の算出方法は,従来の研究における特定の可変機構についての知見では不十分であり,確立していない.そのため,本研究において,同手法を用いたロバスト性評価方法および最適可変域の算出方法を提案した.また,提案した方法を可変機構を有する公共車両用シートのデザイン問題に適用し,仕様選択の指針を提案した.以って,多様場に対応するロバストデザイン法による,可変機構を有するデザイン問題における,ロバスト性評価方法およびそれを用いた最適可変域の算出方法を確立することができた.
  • 久保 雅義, 西林 慶祐
    セッションID: A21
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は、近年注目されているLRTの電停のタイプ別利用者ニーズに関する研究である。数年前新設され注目を集める富山LRTと日本最長の軌道規模をもちLRT車両を導入し始めた広島電鉄に対して、ターミナル型、住宅地型、観光地型のタイプ別電停における利用者の求める要件を調査票調査ならびに実測調査にて明確にした。バリアフリー新法、道路条件や利用者目的にから鑑みて利用者にふさわしい電停の要件を考察した。
  • 下肢に不自由のある脊髄損傷者の起立と立位を補助する装置(2)
    片本 隆二, 藤家 馨, 青木 幹太, 岸 信彦, 寺師 良輝, 小林 博光, 江原 喜人
    セッションID: A22
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    車いすを利用することなどによって、受傷前と比べ立位姿勢をとる機会や、運動する機会は減少する。従来の起立台を用いた立位訓練は複数人の補助によって起立し、立位を保持して時間の経過を待つ。立位時には下肢に多量の血液が貯留するため、下肢を動かすことは循環調節に効果的であるが、下肢に不自由がある場合それが困難である。 そこで新たに、起立を補助し立位を保持した状態でさらに、上肢の前後運動によって足関節の背屈、底屈運動を含めた下肢の他動運動を行う装置を製作し評価実験した。その結果、製作物の運動機能が有効に働くこと、筋ポンプの作用が誘発されることを示唆するデータを得た。
  • 香りプロダクトの一視点
    肥田 不二夫, 清水 敏成, 土田 修
    セッションID: A23
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    「香りプロダクト」形態研究と今後の可能性について 本研究は現在市場にある香りに関わる製品=「香りプロダクト」を探し出し、それらの目的に応じて分類し、そこにカタチの共通性があるか否かを機能と形態との関係を通して考察する。 更に今後、可能性があると思われる「香りプロダクト」の新たなジャンルを予測し、今後の「香りプロダクト」の可能性を考察するものである。
  • 丹 聡子, 杉山 陽二, 木許 陽祐, 林田 直澄
    セッションID: A24
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    国内の中小企業・地域産業品メーカーでは,企画者,デザイナーなどの人材が育っていない,開発費の予算が充分ではないといった問題を抱えている.本研究は,産学連携で行った野菜収納庫の製品開発プロセスの実践を通じて,プロセスの上流部分の行程である商品コンセプトの抽出を,実務経験の浅い企画者やデザイナ,エンジニアでも,有効的かつ効果的に行うための手法を提示し,その有用性の検証を行なった.3Pタスク分析、ISM法、構造化コンセプトを組み合わせて応用することで,直感や経験に頼っていたコンセプトの抽出を論理的に行うことができた.その結果,製品開発プロセスにおける全社的なコンセンサスが容易となり,その有用性についても検証ができた.国内において ユーザニーズの多様化が進む中,中小企業や地域産業品メーカーはより独自性を持った商品の開発が必要となり,効率よくかつ効果的にユーザニーズをコンセプトに落とし込み,商品を開発していくことがこれから産業界において,生き残っていくための一つの手段となると考えられる.
  • 体験型UIデザイン学習交流の実施と課題(1)
    寺沢 秀雄, 渡辺 衆, 小泉 弘之, 星村 隆史, 酒井 宏明
    セッションID: B01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     ワークショップは,企業や地域コミュニティなどの体験型の講座として用いられる.ユーザインタフェース(UI)デザインでは人と人工物との関わりを扱うため,人の活動の場における発見的探索が不可欠である.この学びのかたちのひとつとして,ワークショップはふさわしいと考える. 本研究は,1)Found Behavior(FB)手法を体験型UIデザイン学習交流に適用するためのプログラムの作成,2)ワークショップの実施と検証を目的とする. 優れたUIデザインとは,その過程において日常生活における対話経験を多く参照したものである. FB手法とは,この考えに基づき,人のふるまい観察に主眼を置いたUIデザインの方法である.  ここでは,観察を次の2つに分ける.1)状況の観察(活動の場における人の工夫の発見):文脈におけるデザインで一般に用いられる現場の観察 2)人のふるまい観察(ついついしてしまう人の習性の発見):デザイナーの引き出しとも呼べる対話経験の参照を促す観察  FB手法を用いたワークショップは,即効的ではないが,UIデザイン発想の根拠を明示的に説明できるようになったという点で一定の効果があったと思われる.
  • 体験型UIデザイン学習交流の実施と課題(2)
    渡辺 衆, 寺沢 秀雄, 松原 毅, 竹股 恵子, 株本 正昭, 桜井 誠二
    セッションID: B02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     同業界の4社デザイン部門によるCRXプロジェクトは、ユーザーインターフェイスデザインの方法を学ぶために、学習交流ワークショップを実施した。これはUIデザイン力を得ることを目指していた。この企画運営を通して題材の制約、目的の精査、内容調整などの課題を解決した。その後、参加者の満足度と社内意見を収集した。ワークショップを成功させるためには、会社間で合意形成が最重要であることを理解した。今後は参加会社の拡大や異なる方法論の学習交流を検討する。
  • 宮入 麻紀子, 岡本 誠
    セッションID: B03
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
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    本研究の目的は,新しい感覚を創造する映像を提案することである.
    近年,映像技術は発展し,液晶ディスプレイ,CG,インタラクティブな映像が広まっている.その一方で,私たちは,初めて動画を見たときのような新しい感覚を感じることが難しくなってきている.その理由は,これらの技術が複雑すぎるあまり理解することができず,その技術や結果に驚くことができないと考えられる.
    本研究は,情報技術を用いて,新しい感覚を創造する映像表現とその方法を考える.
  • 土屋 雅人
    セッションID: B04
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
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    防災カードは自然災害の被害を防ぐ上で有効で有益な手段である.防災カードには,所有者の氏名や住所,電話番号,血液型,性別,持病などの個人情報が記載されており,また,災害が発生した時の行動手順や避難場所,自らの命を守るさまざまな有益な情報を含んでいる.本研究では,防災カードの有効性に着目し,市町村が発行している防災カードに記載されている情報の重要性を分析した.その結果,防災カードの持つ4つの機能が明らかになり,3つの防災カードのプロトタイプを作成して利用者のアンケート調査を実施した.
  • 学内の活動情報を表現するための情報デザインとインターフェイスの提案
    遠藤 潤一, 茂登山 清文
    セッションID: B05
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    コンピュータや大型ディスプレイ,プロジェクタなどの普及により,情報提供を目的とした機器やシステムが数多く登場している.大学内においてもこうした情報提供システムの導入が進んでいる. こうしたシステムでは,休講や補講といった講義に直接関係した情報の優先度が高く,学内で行われる種々の活動に関する情報は副次的に提供されることが多い.また,同時に活用している利用者の関心も低い. この活動情報を有効活用するために,利用者への負担が少なく日常的に情報を得られるインターフェイス・デザインを提案した.提案したインターフェイスはプロジェクタによる表示を行うもので,活動情報を時系列上にポイントで表すことで,日程が短時間のうちに理解でき,数を視覚的に理解できるようにした.
  • 田中 法博, 禹 在勇, 望月 宏祐, 林 一成
    セッションID: B06
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本稿では,3次元光反射モデルと分光反射率に基づいた高精度の色再現が可能なレンダリングシステムを提案する. 高精度な色再現のためには,物体表面の特性を知ることが重要である. 本研究では,物体表面の正確な色再現のためにデバイスに依存しない 物体表面の物理的な反射特性を用いる.そして,この反射特性と人間の 視覚感度特性に基づいた高精度な色再現が可能な映像生成システムを 開発する.さらに,この手法をGPU上に実装して高速化する.
  • 永井 由佳里, ゲオルギエフ ゲオルギ
    セッションID: B07
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    デザインプロセスを意味の生成プロセスと捉え、意味ネットワークの構造に着目し、人間の持つ意味構造の特徴に即した新しいデザイン方法論を提案する.本研究では,ネットワーク構造を持つ概念辞書を利用し,概念構造の可視化ツールを駆使して,評価フィードバックにより、デザイナの意味探索過程を有効にする新しいデザイン創造支援の可能性を,事例を示し論じる.従来の方法論では困難であったデザインにおける意味の生成や探索プロセスを、意味構造を利用することで可能にし、デザイン創造に有効な方法論の構築を目指す。
  • 石井 成郎, 鈴木 裕利, 藤井 隆司, 小澤 将典, 藤吉 弘亘
    セッションID: B08
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本稿では,ロボットプログラミングを題材とした創造性教育の取り組みについて,2004年度の実践の概要と2005年度に実施した学習環境の改善の効果について報告する.具体的には,2004年度に実施した創造性教育の評価に基づき,学習者の記録活動を促進させることを目標として,作業報告書の設定,リフレクションシートの記述様式の変更という2点を中心に学習環境の改善を行い,2005年度の実践を実施した.その結果,前年度と比較して,学習者の記録活動は促進され,学習者間の記録頻度の差も軽減された.また,前年度よりもリフレクションシートに記入された情報量が増加していることが確認された.
  • 南 和幸, 三浦 真磁, 大西 美妃, 妻屋 彰, 田浦 俊春
    セッションID: B09
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    工学設計の上流工程に位置する概念設計は,設計者の機能に関する抽象的なイメージを組合せ操作することによって独創的な設計解を導き出す,設計という作業において極めて重要な段階である. 筆者らは,上流の設計段階における設計者の機能に関する様々な推論行為を支援するために,汎用的な機能の言語的表現フレームワークを提案した.この言語的機能表現フレームワークを用いて,動的に新たな機能を見出す為には,設計者の推論行為を定式化し新たな機能を導き出す推論規則を導出する必要がある. 本稿では,異なる機能を合成することによって,新たな機能を生成する機能合成に注目し,提案する言語的表現フレームワークを用いて,異なる機能を持つ人工物と,その異なる機能を持つ人工物を合成することによって生成されたと思われる合成物との言語事例分析を行うことによって,語彙レベルでの推論規則の定式化を試みた. 分析の結果,合成物と,その合成物の基になった人工物の間には,言語的な推論規則が成立すること分かった.また導出された規則を用いて,これまでに無いペアの人工物における機能合成を行った結果,新規な機能を推論できることを確認した.
  • 山田 香織, 永井 由佳里, 田浦 俊春, 三谷 忠興
    セッションID: B10
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    舞台において,先のストーリを予兆させることは感動をうむ.しかし,そのメカニズムは知られていない.そこで,照明によって予兆させる効果を得るため,まず,印象形成のプロセスの解明に取り組む.照明についての印象を知るために,写真を用いて照明に関する感性評価実験を行った.これにより,写真と形容詞との距離が示された.また,この結果をもちいて,実際の舞台での照明演出を行った.
  • 宮崎 隆紀, 松蔵 高子, 永井 由佳里, 森田 純哉
    セッションID: B11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本稿は、商品パッケージのデザインプロセスを扱うものである。特に小売店における店内でのマーケティングの観点を取り入れる。その際、近年取り上げられているシナリオベースのデザイン方法論を用いる。シナリオベースのデザイン方法論とは、使用状況をシナリオとして記述することでデザインの創造的思考を支援する一つの考え方である。よって、陳列に注目した新しいシナリオベースのデザイン方法論の提案を目的としている。
  • 田中 隆充
    セッションID: B12
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     岩手県の伝統工芸である岩谷堂箪笥を事例に、飛行機の手荷物として運搬でき、自国で日本の伝統家具を簡易的に組立てられるデザインを試みた研究である。  日本の伝統家具は居住環境の変化から国内の需要が伸び悩み、将来の海外輸出を視野にいれた取り組みが必要不可欠になり、デザインの創造的発想から伝統家具を提案する必要があると考えた。日本の伝統工芸のほとんどはエンドユーザー自身で組み立てることが出来ないため、職人が組上げた完成された製品のまま輸送している。近年の原油価格高騰や円高といった背景から、特に海外輸出においては従来以上に輸送コストがあがり、結果的に販売価格が高くなり販路拡大が難しくなっている。輸送コストが最も安い方法はエンドユーザーが機内に持込み運搬することある。本研究は、前述した機内持込が可能な組立式の家具を目指すことであり、そのサイズを将来的に実現するために岩谷堂箪笥をキット化し、エンドユーザーがより簡単に組み立てられる接合部品を開発し、伝統家具をデザイン試作することが目的である。また、本研究は二年間の産学連携共同研究を経て、科学技術振興機構(JST)の平成19年度シーズ発掘試験の研究の一貫で行った。
  • 連想による季節感の特徴とユニフォーム配色の事例
    周 豊, 永井 由佳里, 田浦 俊春
    セッションID: B13
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究はデザインの手がかりとなる印象形成過程について,季節感とユニフォームの関係に着目し、その連想プロセスの構造の分析手法を提案することを目的とする.色彩を手がかりに四季(春夏秋冬)を刺激語とした連想について調査を行い、まず、統計分析により季節ごとの連想の特徴、次に連想語のネットワーク構造の可視化により中心性(後述)高い語を抽出する.季節(言葉)の連想空間とユニフォーム(デザイン目標)の連想空間を比較し、後者の方が、より収束された構造(連想の背後の構造がより明確化された)であることがわかった.
  • 欅田 雄輝, 永井 由佳里, 田浦 俊春
    セッションID: B14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    今日、照明においては明視照明から雰囲気照明への移行が見られる。この雰囲気照明においては、人間の感情に働きかける心理的機能が重視されており、その効果により連想が促されると考えられる。本研究は連想プロセスに着目し、雰囲気照明の開発に適応できるデザイン方法論を検討することを目的とする。研究の方法は、画像の印象を用いた連想実験による連想ネットワーク構造の調査と画像転換による連想概念のサポート方法の試行である。実験の結果、画像の特徴とそこから得られる印象が必ずしも一致しないこと、および同様の印象であっても異なる特徴が得られること、がわかった。このことから、デザインプロセスにおける実用的なサポートの方法として連想のネットワークで示される概念空間が有効であることが示唆された。今後、生理的指標による評価を導入し、連想プロセスの構造をさらに具体的に把握する必要がある。この研究の知見は、心理的機能を重視したデザインにおいて、連想プロセスという観点から支援するデザイン方法論の展開に寄与する。
  • 井上 勝雄, 藤井 忠夫, 久保田 秀男
    セッションID: B15
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    洋菓子店の外観デザインについて、「入りたくなり、さらに、入りやすい」という視点から、2つのデザインコンセプトを策定した。その策定法について、ひとつの試みを行った。具体的には、評価グリッド法を用いて、認知評価構造を構成する12イメージと48の認知部位を抽出した。25種類のサンプル写真に対して、12イメージの5段階のSD尺度のアンケート調査(2007年10月)を行った。この結果をもとに、区間回帰分析とラフ集合を用いて、2つの認知評価構造を明らかにした。この現状の認知評価構造から、2つのデザインコンセプトを策定した。森典彦の提唱する創造性と関係する「併合」の考え方を用いて、このコンセプトをもとにデザインスペックを求めた。得られたデザインスペックから3次元のスケッチを作成して、そのコンセプトの検証を行った。その結果、スケッチはデザインコンセプトを反映していることが明らかになった。つまり、提案のデザインコンセプト策定法が検証された。
  • デザイナーハ ジフン氏の東京デザイナーズウィークでの展示を通して
    尹 泰九
    セッションID: B16
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    展示場で鑑賞者は作品を観たり、説明を聞きながら展示を観覧する。しかし鑑賞者が作品鑑賞や説明だけで作品を理解するのには限界があるだろう。そのために鑑賞者に作品の外的な形や説明以外の作品についての解説や作家の思いを伝えるのが作品を上手く理解することに役に立つだろう。そして鑑賞者が作品を観て感じる思いを作家や違う鑑賞者と共有できるならば展示の効果はもっと高まるだろう。 最近の展示では、鑑賞者と作家が疎通できる方法としてワークショッププログラムが多く行われている。鑑賞者はワークショッププログラムに参加しながらただ観るだけの展示ではなく、ワークショッププログラムを通して鑑賞者自身の思いが表現できる。そしてデザイナーは作品についての鑑賞者の意見を聞くことが出来る。特に芸術的な性向を持つデザイナーの作品は、鑑賞者がデザイナーのアイデアを理解するのが重要である。そのためにワークショップを通した作家と鑑賞者の自由な疎通が必要である。 本研究では作家型デザイナー(artist-form designer?: 作家的な性向のデザイナー、会社のデザイナーとは違って自分の作品を作るデザイナー)とコネクタが協力してワークショッププログラムを計画してTokyo designers’ week 2007의 100% design Tokyoで展示をして色を中心にワークショップを実施した。そしてワークショップの結果を基に作家型デザイナーとコネクタが協議してデザインに反映できるようにした。
  • 藤田 良美
    セッションID: B17
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     企業が成功するには、企業内の情報交換・伝達がよい流れである必要がある。これはコミュニケーション能力が充分であるかどうかにあたる。多くの企業人や社会人は、社会学、経営学、経済学に興味を持つが、デザインには関心がない。デザインは、単にアイディアでありモノの形を生み出すものと捕らえがちであるが、人間の行動や思考や観念であり、時代の文化や社会情勢を表現している重要なものである。経営戦略の中に、今まで考慮に入れることのなかったデザイン力を強化し、独自性・ブランド力をつける方法を提案する。  コミュニケーションとデザインについての研究であるため、先行文献による歴史と理論の考察を行う。現代の社会問題や文化思想の観点から、独自のコミュニケーション・デザインの理論を構築する。  現在、企業がデザインとコミュニケーションの力にどのような期待を持っているか、訪問インタビューを行っている。
  • 性差でみるモノを選ぶ視点と尺度
    岩松 里紗, 伊藤 真市, 合原 勝之
    セッションID: B18
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     「人々は本当のところ、モノをどう捉え選んでいるのか。」その決め手には、モノの表層に表れるデザイン要素が大きく影響していると考える。個人や集団の属性によりモノの捉え方、選び方に特徴的な傾向が存在するという視点に立ち、このテーマを考察する。  本考察は、デザインの善し悪しではなく、モノの選択における視点とその魅力要素を探るものである。デザインをある属性の切り口で見たときの具体的欲求、モノの捉え方に関する実態を明らかにすることを目的とする。  自分の感性、身体感覚にぴたりと合うモノを私たちは求めている。モノを選択する際、個人の意思決定はとても複雑だ。いくつかの情報が、重要度を変えて結びつき、全体の価値を決定する。全く同じモノを見たとしても、人それぞれ魅力と感じる所が違う。感覚的な選択にも思えるが、そこには確かに合理的な価値基準が存在しているはずだ。  デザインの捉え方は、人の側の属性で左右される。例えば、性別は典型的な属性だ。今回の調査視点として、まず性別を取り挙げる。しかし、性別だけでは捉えきれない実態があるのではないか。脳の性別という切り口を新たな手がかりに加え、デザイン選択の実態を探る。(499字)
  • 森田 克己
    セッションID: B19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    結び目は、数学における結び目理論にしたがえば、「3次元ユークリッド空間R3内の単純閉曲線」として定義できる。また複数の結び目の集合を絡み目という。それらは、造形的な視点から見れば、大変魅力的な存在として位置づけることができる。両者は、大いに興味深い関係にあるといえる。以上の観点から、本研究は最も基本的なトーラスを用いた絡み目の形に注目し、結び目理論に基づき、CGを用い、造形的に魅力のある絡み目の形を追求したものである。
  • 対数螺旋の役割について
    吉田 美穗子
    セッションID: B20
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    植物ならびに動物をモチーフとした古建築の文様を、CADを用いて対数螺旋とその変形に分解し、それらの組み合わせによる複合体としての表記を試みた。特に日本の古建築を対象とした分析は前例がなく、多くの装飾文様の輪郭を対数螺旋の組み合わせによって近似させ、そこに確実な再現性が確認された。
    日本の伝統的建築意匠において経験的に応用されてきた対数螺旋というデザイン要素が、過去から現在を通じて、建築・空間デザインにおいて継承されてきた重要な形態要素であり、さらに、直線的でありしかも曲線的でもあるという、相反する性質を併せ持つがゆえに数多くの基本図形を生成することができる点に着目し、それ自体を分解・再構成した図像における「美」を提示することにより、制作者の意思を確実に伝える役割を果たすものであることを明らかにした。また、フラクタルの特徴である自己相似形を繰り返し使用することにより、部分から全体にわたって通底するひとつの形態の訴求力を高め、確実に第三者の意識を喚起するデザイン要素としての、基礎的な幾何学形態の重要な役割を確認した。
  • 平面コンポジションの定量的評価方法について
    木下 武志, 河野 康宜
    セッションID: B21
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    これまでに発表者らは,基礎デザイン教育から各専門デザイン分野での教育(応用デザイン教育)を連係させる造形教育として「コンポジション」に注目した.バウハウスでの教育カリキュラムに示される「KOMPOSITIONLEHRE」は教育現場での試行錯誤の段階で中断されていると考えられる.この「コンポジション」の教育方法の成立させることについて検討を行なってきた.今回は,これまでの我々の先行研究の中で設定した課題制作に対して評価項目について,画像計測と認知科学を用いて行なった定量的な評価方法の提案に関する研究成果の概要を解説する.対象とするのは,コンポジションされた平面図形の中に形成される色面における各色面間の「面積比のばらつき」,「明度のばらつき」,「色相のばらつき」と「形態のまとまり」に関する「形態のアウトラインのまとまり」,「コンポジション・エレメントの視認性」を取り上げる.これらの評価項目においての定量的評価方法は教育者の評価における相関関係において正の相関を示しており、有効であることが示されている.しかし検討を行なっていない評価項目が多く残され、今後の研究課題として取り組んでいきたい.
  • 川西 翔樹, 木下 武志, 青山 英樹, 氏家 良樹, 松岡 由幸
    セッションID: B22
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
     コンポジションとは,円や矩形等の複数の幾何形態を要素とし,その配置や組み合わせによってデザインを行う手法であり,バウハウスで初めてデザイン教育として取り入れられた.コンポジションは,造形における視的技法を体験的に学べる手法であり,デザイン教育として有効であるといわれている.しかし既存のコンポジション手法においては,準備や実施に手間と時間がかかるという課題を抱えており,現在では実施されなくなりつつある.一方,現在ではCADやDTPのように様々な作業がPC上で可能となっている.これにより,従来の作業と比べて効率化を主とした利点が得られており,また従来の作業では実現できなかった機能も得られている.コンポジションにおいても,デジタル化することによって同様の利点が得られると考えられる.本研究ではコンポジションをデジタル化したデジタルコンポジションシステムにおける,概念デザインを行った.ここで概念デザインとは,デザイン対象に関連する要素の構造を明確にすることであり,本研究では多空間デザインモデルに基づくデザイン手法および多変量解析を用いて要素の構造の明確化を行った.
  • その新たな発想力教育に向けて
    伊豆 裕一, 松岡 由幸
    セッションID: B23
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    プロダクトデザイナの多くは,デザインのアイディアを発想し第三者に伝えるコミュニケーションの手段として,平面上に立体を表現した透視図法によるスケッチを活用している.しかし,スケッチで自由に形を表現し,デザインの発想を行うためには,ある程度の訓練が必要とされ,デザイン教育においてはそのために多くの時間が使われている.本報でははじめに,それまでデザイン教育を受けたことのない理工系の大学生に対する,基礎的なスケッチテクニックの習得と,スケッチを活用したデザイン発想を目的とした授業を通して,デザインの発想法についての考察を行う.次にその結果を踏まえ,デザイナとしての教育を受けたことのない,デザインのアウトサイダーによる,新しいデザイン発想の可能性について述べる.
  • 陳 郁佳
    セッションID: B24
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    視覚比喩には媒体と主体の二項目がある。媒体は主体(広告対象)の宣伝内容の特性を、比喩を用いて示されることにより、ユーザの情報理解に大きな役割を果たす。本研究ではデザイン評価の高い媒体と主体の関係を探り、視覚比喩を用いる広告デザインの在り方を論じる。まずは分類実験を行った。参加者は実験サンプルから両者の類似タイプ(外観、関連性、外観と関連性の複合)と表現タイプ(並置、融合、独立)、または両者の差異度合い、関連度合いなどの関係を判断し、分類を行った。次は効果実験を実施した。参加者に6つの項目(わかりやすさ、好き、創意的、印象的、面白さ、合理的)について評価を求めた。最後に二つの実験結果をクロス分析で比喩の関係から考察し、評価対媒体と主体の関係を明らかにした。その結果、媒体と主体両者が外観と関連性の複合タイプ及び、差異度と関連度が大きいという関係の場合は、効果的であることがわかった。
  • シナリオ手法の活用
    山崎 和彦
    セッションID: C01
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    本研究は,使いやすい製品やサービスのための人間中心設計(UCD)手法を拡張してより総合的なデザインアプローチを提案することを目的とする。  ここでは、UCD手法の一つであるペルソナ手法とシナリオ手法を活用して、開発プロセスに一貫してシナリオを活用することを提案する。  ユーザーシナリオ手法とは、ユーザーが商品やサービスを利用する場面を想定して,できるだけ具体的にシナリオを記述することによって,デザイン上の考慮点や問題点を発見したり,あるいはそれらを解決する手段として用いる手法である.ユーザーシナリオとは,どのようなユーザーが,どのような環境で,どのような行動をとるかについて記述したストーリーである.
  • 函館市の観光案内における経路探索
    林 佳音, 岡本 誠
    セッションID: C02
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/06/16
    会議録・要旨集 フリー
    ユビキタス社会が進むにつれ,外国人観光客でも旅行先で多様な情報を即座に手に入れることが可能になった.また,豊かな国の観光客は団体行動に拘束されることなく,自由な個人旅行を望む傾向にある.そのため,昨今の観光客のニーズは著しく変容している.観光案内情報をグローバルな視点で再検討する必要がある.しかし,現在の観光案内における地図や観光地の様々な情報は文化の差異などの問題によって、実際の空間に認知的な混同を起こしている場合が多い.従って,異なる文化圏の利用者でも使いやすい観光案内の情報システムのデザインが一層重要になってくると思われる. 一方,函館市は外国人観光客にも優しい観光振興政策を実施していて,特に,台湾-函館間の交流は益々盛んになっている.海外からの観光客のために有効な観光案内デザインは観光客の現実の観光体験からニーズを解明すべきである. 本研究では,シナリオの要求分析を通じ,函館市西部地区の観光環境に対して,観光客の経路探索における行為やニーズを解明することを目的とする.台湾人の観光客が体験したユーザストーリから,観光活動に関する要求事項や問題点を分類し,集約する.また5W1Hの方法で概念シナリオを作成した.函館市西部地区の観光活動に注目し,特にグローバルな視点から,観光客の要求事項や問題点抽出する研究を行った.
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