日本血管外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-767X
Print ISSN : 0918-6778
20 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 新垣 勝也, 神谷 千里, 新垣 涼子, 前田 達也, 喜瀬 勇也, 仲栄真 盛保, 盛島 裕次, 永野 貴昭, 山城 聡, 國吉 幸男
    2011 年 20 巻 2 号 p. 53-59
    発行日: 2011/04/07
    公開日: 2011/04/23
    ジャーナル オープンアクセス
    【目的】弓部大動脈瘤に対する手術成績は各種補助手段等の発達にて向上してきたが,未だ術後脳合併症予防には多くの課題が残されている.その原因は大動脈からの粥腫の飛散による脳塞栓症が主で,患者の高齢化とともに高度粥状硬化を伴う弓部瘤が増加しており早急に解決すべき問題である.今回,われわれはかかる患者に対する脳梗塞予防策について検討したので報告する.【方法】2005年4月~2010年12月までの弓部大動脈置換術症例59例のうち,瘤内に粥腫を有し,かつ,腹部大動脈~大腿動脈にも粥状硬化病変を有する13例(22%)を対象とした.術中の粥腫の飛散による脳塞栓症を回避する目的で,以下の工夫を行った.まず両側の腋窩動脈に8 mmの人工血管を吻合,さらに左総頸動脈には直接穿刺法でカニューレを挿入し送血路を確保した.その後に体外循環を開始し,開始と同時に左総頸動脈基部を遮断した.それにより灌流血は両側鎖骨下動脈から大動脈方向に流れ,左総頸動脈は体循環から遮断されるため粥腫の脳循環への飛散・流入を回避しうる.本法を13例に対して行い,上行,胸部下行大動脈置換を含む全弓部置換術を行った.【結果】手術死亡は2例(15.4%)で,多臓器不全,肺炎にて失った.うち1例は重篤な意識障害を伴っていた.本症例は両側内頸動脈に狭窄を有していた症例であった.他の11例は術後脳合併症なく軽快退院した.【結語】本法は瘤内に粥腫を有する術後脳合併症の高リスク症例に応用しており,その治療成績としては許容でき,有用な手段と考えられた.しかしながら,本法は弓部三分枝より末梢に及ぶ動脈硬化病変を有する症例の脳合併症については予防できなかった.
第39回 日本血管外科学会学術総会予稿集
抄録
feedback
Top