高分子論文集
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66 巻, 9 号
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総合論文
  • 閻 培, 天間 知久, 多賀谷 英幸, 幅上 茂樹
    2009 年 66 巻 9 号 p. 341-348
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/25
    ジャーナル フリー
    銅(I)-ビスオキサゾリン錯体を触媒として用いた 2 種類の 2-ナフトール誘導体間の選択的ラジカルカップリング反応である酸化クロスカップリング反応において,触媒量のルイス酸を添加することにより,より高度なクロスカップリング選択性および立体選択性の制御が可能であることを見いだした.たとえば,2-ナフトールと 3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸エステルの CuCl-Phbox 錯体を用いた酸化カップリング反応を Yb(OTf)3 存在下で行うことにより,クロスカップリング体のみが特異的に得られた.この新規な混合触媒系では,さまざまな銅-ジアミン錯体を触媒として用いることが可能である.また,この反応系を 6,6′-ビ-2-ナフトール誘導体あるいは 3,7-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボン酸メチルをモノマーとして用いた単独重合,共重合へと応用することにより,クロスカップリングユニット比 99%以上,すなわち,ほぼ完全な head-to-tail 構造や交互共重合体構造からなるポリ(ビナフトール)の合成に成功した.
一般論文
  • 清水 秀信, 和田 理征, 岡部 勝
    2009 年 66 巻 9 号 p. 349-354
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/25
    ジャーナル フリー
    ポリビニルアルコールをジメチルスルホキシド(DMSO)と水の混合溶媒に溶解させ,その熱溶液を室温まで冷却すると,ポリマーの微結晶を架橋点とする熱可逆性ゲルが生成する.本研究では,ゲル化溶媒である DMSO と水の混合溶媒組成を変化させたときに得られたゲルの架橋長 ζ,高分子/溶媒間の相互作用パラメーター χ12,ヤング率 E を求め,それらの相関性について検討を行った.架橋長 ζ は田中-Stockmayer の理論式から,高分子/溶媒間相互作用パラメーター χ12 は膨潤度測定から,ヤング率 E は引張り試験の応力-ひずみ曲線から,それぞれ評価した.その結果,ζ, χ12, E の値はいずれも,DMSO の割合(XDMSO)が増えると徐々に増大し,XDMSO=60 vol%近傍で最大値を示した後,XDMSO をさらに高くすると逆に減少するという傾向を示した.以上の結果は,力学強度が優れた PVA ゲルを作製するためには,架橋長 ζ と高分子/溶媒間の相互作用パラメーター χ12 ができるだけ大きくなるようなゲル化溶媒を選択する必要があることを示している.
  • 宋 学方, 姜 海光, 小柴 康子, 吉野 英武, 柴田 洋志, 長谷 朝博, 上田 裕清
    2009 年 66 巻 9 号 p. 355-362
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/25
    ジャーナル フリー
    炭酸カルシウム(CaCO3)のリン酸化反応により球状水酸アパタイト(HAp)を合成し,さらにシランカップリング剤,ソルビン酸および液状カルボキシル化ポリブタジエン(LB)により表面処理した.HAp および表面処理 HAp を構造の異なる 3 種のスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)に充てんし,複合体の力学特性に及ぼす影響を CaCO3 およびシリカ(SiO2)充てん複合体と比較して検討した.HAp を充てんしたスチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)複合体の低伸長域の応力は,SiO2 と CaCO3 充てん複合体に比べて高く,引張永久ひずみ(TS)は小さくなった.表面処理 HAp の充てんにより,複合体の 300%伸長時のモジュラス(M300)と破断強度(TB)はさらに向上し,TS は低下した.今回用いた修飾剤を比較すると,LB による表面処理効果が最も高かった.また,LB を含む溶液中で合成した HAp(IS-HAp)は,LB と HAp の複合粒子から形成されていた.IS-HAp は,不飽和の TPS に対して良好な補強効果を示し,充てんした複合体の耐熱性も向上した.
  • 藤原 広匡, 山辺 純一郎, 西村 伸
    2009 年 66 巻 9 号 p. 363-372
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/25
    ジャーナル フリー
    硫黄加硫アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)の化学構造解析を固体 1H および 13C NMR を用いて実施した.固体 NMR スペクトルの詳細な帰属を,加硫ゴムの膨潤状態における溶液 NMR スペクトルおよび原料ゴムの溶液 NMR スペクトルと比較検討することにより決定した.とくに,これまで詳細な帰属が報告されていなかった 13C NMR スペクトルにおいて 33 ppm に見られる単一ピークはアクリロニトリルのメチンとメチレンピークの重なりであることが DEPT 測定により判明した.また,1H NMR における 1,4-ブタジエンのメチレンに帰属される 2.09 ppm のブロードピークは,隣接する官能基がメチレンあるいはメチンの場合で異なる 2 種のピークの重ね合わせから形成されていることが二次元 NMR により確認された.この結果,NMR スペクトルの詳細な帰属を決定することにより共重合体である NBR のモノマーユニット比の決定が可能になった.
  • 葛西 裕, 阿布 里提, 浦山 健治, 瀧川 敏算
    2009 年 66 巻 9 号 p. 373-380
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/25
    ジャーナル フリー
    架橋度の異なる架橋スルホエチルセルロース(CL-SEC)膜を作製し,イオン交換容量(IEC),含水率,熱的化学的安定性,力学強度,プロトン伝導度およびメタノール透過係数(PM)を調べ,架橋効果の検討を行った.熱安定性は膜の架橋度による違いはほとんどなかったが,酸化安定性と吸水状態での引張強度は高架橋膜が優れていた.IEC と含水率の高い CL-SEC 膜は Nafion® 112 に匹敵するプロトン伝導度を示した.架橋により膜の含水率が減少するためプロトン伝導度は低下したが,メタノール透過性は抑制された.25℃ での CL-SEC 膜の PM とプロトン伝導度(σ)の比(σ/PM)は架橋度およびメタノール水溶液のメタノール濃度が高くなるほど大きくなり,高架橋度の膜は 1 M 以上のメタノール水溶液について Nafion® 112 の 5 倍以上大きな σ/PM 値を示した.CL-SEC 膜は高濃度メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池用電解質膜への応用の可能性があると考えられる.
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