マイコトキシン
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57 巻, 1 号
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原著
  • 渡辺 樹, 柿嶌 眞, 足立 吉數, 中島 弘美
    2007 年 57 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    ムベ,ハナミズキおよびコブシの葉から分離したAlternaria alternata の米培地上でのマイコトキシン産生能を調査した.薄層クロマトグラフィーと高速液体クロマトグラフィーにより,アルタナリオール,アルタナリオールモノメチルエーテル,アルタヌエンが米培地抽出物中に確認された.ムベから分離したA. alternata は米培地上でAOH, AME, および ALTを それぞれ22.99 mg/kg, 9.13 mg/kg,および2.53 mg/kg産生していた. ハナミズキの葉から分離したA. alternata は米培地上でAOH, AME, およびALT をそれぞれ1.50 mg/kg, 0.59 mg/kg, and 3.42 mg/kg産生していた. コブシの葉から分離したA. alternata は米培地上でAOH, AME, および ALTをそれぞれ 20.37 mg/kg, 0.95 mg/kg,および7.25 mg/kg産生していた.これらの結果は庭木由来のA. alternata が食物および飼料をマイコトキシンで汚染することを示唆している.
  • 青山 幸二, 石黒 瑛一
    2007 年 57 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    2004年および2005年に日本国内で流通した主な飼料原料および配合飼料(計109検体)について、フモニシンB1、B2およびB3の汚染実態を調査した。試料の精製にはイオン交換カートリッジカラムを用い、LC/MSにより定量を行った。その結果、とうもろこしおよびその副産物、マイロ(グレインソルガム)、ライ麦並びに配合飼料については、全ての試料からフモニシンが検出された。一方、玄米、綿実およびアルファルファからは検出されなかった。とうもろこしおよび配合飼料中のフモニシンB1の平均値はそれぞれ350および340 μg/kgであり、最高値はとうもろこしの1,900 μg/kgであった。
特別講演
  • ―マイコトキシンを視野にいれた考察―
    河野 芳樹
    2007 年 57 巻 1 号 p. 17-30
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    植物は、通常非宿主植物として微生物の侵入を阻止することができる。しかし、植物病害では微生物の侵入により両者の相互作用が行われ、微生物の生産する植物毒素等と、植物の生産するファイトアレキシン等が関与する。このような化学物質がマイコトキシンあるいはマイコトキシン様物質となる危険性を回避するには、このような化学物質の人・動物に対する質的・量的作用とその蓄積状況を知る必要がある。植物毒素では、宿主特異的毒素等について、その作用に重要な問題があれば、抵抗性品種・非宿主植物・収穫後などの状況下での蓄積量を知る必要が生じる。また植物側の防御物質についても同様である。
シンポジウム
  • ―オーバーヴュー
    小西 良子
    2007 年 57 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    オクラトキシンAは、Penicillium 属および Aspergillus属が産生するカビ毒である。ヒトにおいては腎毒性があることが疑われており、実験動物では腎毒性、腎臓がんを起こすことが実証されている。ヨーロッパでは、オクラトキシンAの実態調査が精力的に行われ、それを基に基準値の設定がなされている。コーデックス委員会でも、その基準値の策定が秒読み段階に来ている。しかし、わが国ではいまだ基準値設定が行われていない。そこで、本稿では国際的動向、オクラトキシンAの毒性、わが国での汚染実態、その分析法を紹介し、なぜオクラトキシンAは食品衛生上問題となるのか、今後基準値設定に向けてどのようにわが国は対処していくのかを述べる。
  • 田端 節子, 中里 光男
    2007 年 57 巻 1 号 p. 37-46
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    オクラトキシンA及びBを、やはり腎毒性を有するカビ毒であるシトリニンと同時に分析する方法を用いて、20年以上にわたり食品の汚染実態調査を行ってきた。その結果、小麦、大麦、ライ麦、はと麦、そば粉、トウモロコシ等の穀類、コーヒー豆、カカオ、製餡原料豆等からオクラトキシンAが検出された。オクラトキシンBは、オクラトキシンAの濃度が高い試料から、その1/3~1/10程度の濃度で検出された。そば、ハト麦等の穀類でオクラトキシンとシトリニンの複合汚染が高頻度で認められた。また、これまでは、確認法として使用していたTLC法及び誘導体化法の感度が低かったため、1 μg/kg未満のオクラトキシンを“検出”とすることができなかったが、LC/MS/MSを使用することにより、オクラトキシンを0.1 μg/kgまで確認することが可能となり、その結果、低レベルでの汚染が明らかとなった。近年、ブドウのオクラトキシン汚染の原因菌として注目されているAspergillus carbonariusのオクラトキシン産生能試験を行った。試験した6菌株のうち、4菌株にオクラトキシン産生能が認められた.
  • 川上 裕司, 高橋 治男
    2007 年 57 巻 1 号 p. 47-56
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    タバコシバンムシ(Lasioderma serricorne)とノシメマダラメイガ(Plodia interpunctella)は,多くの乾燥植物質を食害することで著名な食品害虫である。筆者らは,これら2種が人の住環境中に極めて普通に生息していることを明らかにし,更に,両種の体表面と消化管からは公衆衛生上問題となる真菌と細菌が分離されることを明らかにした。両種の体表面からは,真菌の中でもカビ毒産生菌として知られる Aspergillus ochraceusA. versicolorA. fumigatus などが分離された。A. ochraceusのオクラトキシンA産生能を調べた結果,タバコシバンムシ分離株では20株中18株に,ノシメマダラメイガ分離株では13株中11株に強い産生能があることが判った。また,一般住宅で捕獲されたコナナガシンクイ(Rhizopertha dominica)から分離されたA. ochraceus1株のオクラトキシンA産生能について調べた結果,前2種と同様に強い産生能があることが判った。
  • 高橋 治男, 矢崎 廣久
    2007 年 57 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/12
    ジャーナル フリー
    ペニシリウム属におけるオクラトキシン産生菌種については、Walbeekが最初にペニシリウム・ビリディカータムであると報告し、その後Cieglerがそれを追認したため混乱を生じた.しかしながら、その後PittやFrisvadが、増殖速度やマイコトキシン産生のパターンの違いから、ペニシリウム・ビリディカータムペニシリウム・ベルコーザムは異なり、オクラトキシンを産生するペニシリウムは、ペニシリウム・ベルコーザムのみであるとした.しかし、最近、Larsenが穀類からしか分離されないものと、チーズや肉類からしか分離されないものを区別し、後者を別種、ペニシリウム・ノルディカムを提唱した.ペニシリウム・ベルコーザムの増殖温度域は0-31℃、最適は20℃付近で、オクラトキシン産生はほぼ増殖温度域で認めらるが、最適は20℃付近である.増殖への最低水分活性値は0.86.オクラトキシン産生は基質や分離株によって影響を受ける.温度勾配は水分移動を引き起こし、水分量が上昇すると、カビの増殖、次いでマイコトキシン産生も可能となる.土壌、穀粒、あるいは製品の残渣はペニシリウム・ベルコーザムの汚染源となりうるため、穀物や食品の乾燥や貯蔵施設は清潔に保たなければならない.
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