失語症研究
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原著
半球間離断症状を呈した多発性硬化症
飛田 真理河村 満小松 隆行高橋 三津雄北野 邦孝
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1995 年 15 巻 4 号 p. 323-328

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抄録

     症例は多発性硬化症 (以下MS) の40歳右利き女性で,右不全片麻痺,左手の観念運動性失行・交叉性視覚性運動失調,プロソディー異常を呈した。左手の観念運動性失行・交叉性視覚性運動失調は脳梁幹後半部が,構音障害は脳梁膝がそれぞれの責任病巣と考えられた。
    MS では失語,失行,失認などの高次大脳機能障害はほとんどみられない。ことに半球間離断症状はまれで,2症例の報告があるのみである。限局性の脳梁病変は,病理学的検討では大脳plaqueの4~20%,MRI では大脳限局性病巣の30%を占めるとされ,決して低頻度ではない。これは, MS における半球間離断症状は,一過性であるために脳血管障害と異なり見落とされている可能性を示唆しているものと思われる。

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© 1995 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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