2015 年 26 巻 2 号 p. 45-49
要旨 脳梗塞急性期治療において,微小循環障害や出血性変化を抑制しうる脳保護療法の開発が期待されている.脳血管内皮を標的とした脳虚血発症前の介入により,良好な転帰が得られることは多くの研究により示されている.しかし脳虚血発症後の介入により有効性を発揮しうる脳保護薬の開発は楽観視できないのが現状である.我々は脳虚血急性期の血管内皮機能障害の分子メカニズムを検討し,内皮型一酸化窒素合成酵素(endothelial nitric oxide synthase; eNOS)機能不全がその原因の一つである可能性を報告してきた.脳血管内皮においてeNOS が産生するNO は脳血流維持や抗血栓作用など脳内の恒常性維持に重要な役割を担う.しかし機能不全をきたしたeNOS はスーパーオキシドの産生源となり,酸化ストレスを亢進させることにより組織損傷を拡大させる.このような問題点を一つ一つ明らかにしていくことが脳梗塞急性期における脳保護療法の開発につながるものと考えている.