Chem-Bio Informatics Journal
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ヒト初代培養肝細胞において肝毒性物質および抗代謝薬により誘導される核内受容体スーパーファミリーの特徴的な遺伝子発現プロフィール変動
高乗  仁江口  至洋牧野  公子寺田  弘
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2016 年 16 巻 p. 13-24

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抄録

ヒト初代培養肝細胞における核内受容体スーパーファミリーの遺伝子発現に及ぼす19種類の肝毒性物質および20種類の抗代謝薬の影響を、トキシコゲノミクスデータベースOpen TG-GATES内の核内受容体に関係するデータを抽出して評価した。多くの薬物が単独で多数の核内受容体の有意な遺伝子発現変動を誘導することが明らかにされた。40%以上の薬物により有意な遺伝子発現変動を示す核内受容体は22種類存在するが、その中で12種類(COUPβ, FXR, HNF4α, LRH1, LXRα, PPARα, PPARδ, PXR, RORα, RXRα および TR4)が肝毒性物質および抗代謝薬に共通であり、3種類(GCNF1, RARβ, および TRβ)が肝毒性物質に特異的、7種類(ERα, GR, RARα, REVERBα, RXRβ、SHP および VDR)が抗代謝薬に特異的であった。また、本核内受容体の中、9種類が生殖、発生、成長に関与するcluster Iに、13種類が栄養吸収、代謝、排出に関与するcluster IIに分類された。更に、8種類の時計遺伝子核内受容体(ROR, Rev-erb, PPAR, FXR, TR およびTR2/TR4)の中、時計振動体遺伝子REVERB α,β およびRORαを入れて6種類が含まれ、また、9種類の薬物代謝酵素の遺伝子発現を調節する核内受容体(CAR, FXR, GR, HNF4α, LXR, PXR, PPAR, RAR およびVDR)の中、8種類が含まれるという特徴を有していた。薬物により動員される核内受容体のクラスター分析では肝毒性物質と抗代謝薬の間でプロフィールに相違が認められた。これらの結果に基づき、核内受容体の薬物に応答する遺伝子発現変動プロフィールは薬物特異的核内受容体群と時計遺伝子および薬物代謝酵素の遺伝子発現調節遺伝子から構成される生体恒常性維持に関わる中核の核内受容体群との協同により決定されるという仮説を提唱した。薬物に関するクラスター分析では、肝毒性物質に関しては、凝固障害作用を有する群とその他の2群に分類された。一方、抗代謝薬は4群に分類され、一般に類似薬理作用を有する薬は同一群に分類されたが、例外も存在した。核内受容体スーパーファミリーの遺伝子発現に対する作用に基づく薬物の分類結果は薬物の毒性作用様式に関して再検証の必要性を示唆する。

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