臨床神経学
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小脳性運動失調をともなう孤発性片麻痺性片頭痛の1例
岩中 行己男岡田 和将赤松 直樹魚住 武則足立 芳樹辻 貞俊
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2009 年 49 巻 5 号 p. 267-270

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抄録

症例は34歳の男性である.小児期より体幹のバランス不良が緩徐に進行し,18歳頃よりろれつ不良が出現した.33歳時より右上下肢の異常感覚と脱力,運動性失語,健忘症状,嘔気をともなう左側頭部の激しい拍動性頭痛発作をくりかえした.発作間欠期の神経学的所見では軽度の失調性構音障害と体幹失調のみをみとめ,頭部MRIでは小脳上虫部から前葉に中等度萎縮をみとめた.頭痛発作間欠期の脳波では左前頭側頭部に間欠性δ波をみとめた.本例の頭痛発作は片麻痺性片頭痛の臨床的特徴と合致し,家族歴がなく,小脳性運動失調をともなう孤発性片麻痺性片頭痛(SHM)と診断したが,小脳性運動失調は孤発性ではきわめてまれであり,CACNA1A遺伝子異常による家族性片麻痺性片頭痛(FHM1)の約50%にみとめられるため,本例は臨床像の類似性よりFHM1と共通の病態機序を有することが推測された.

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© 2009 日本神経学会
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