2009 年 49 巻 5 号 p. 271-274
症例は71歳女性である.入院前日に行動がおかしくなり,翌日進行したため入院した.遺伝性毛細血管拡張症で上部消化管出血をくりかえし,69歳で胃全摘を受けている.入院時,落ち着きがなく高次脳機能障害をみとめた.脳波で3相波,頭部MRIのT1強調画像で淡蒼球の高信号をみとめた.食後のNH3高値,腹部CTで肝内血管異常をみとめ,肝性脳症と診断された.低蛋白食,ラクチトール,分枝鎖アミノ酸製剤で臨床症状,NH3値と脳波は正常となった.遺伝性毛細血管拡張症で全身の血管形成異常をきたすが,門脈大循環短絡はまれで,それに起因する肝性脳症の報告は少ない.しかし高齢になればシャント量も増えるため,門脈大循環短絡脳症発症の可能性を考慮する必要がある.