日本薬理学雑誌
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総説
中枢ヒスタミン神経系と扁桃核キンドリング
亀井 千晃大熊 千尋
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2001 年 117 巻 5 号 p. 329-334

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抄録

扁桃核の反復電気刺激によりキンドリングを形成したラットの脳内ヒスタミン含量は, 大脳皮質, 海馬, 視床および視床下部のいずれの部位でも減少する傾向を示したが, 有意差は認められなかった.しかし, 扁桃核では, 有意なヒスタミン含量の減少を示した.扁桃核キンドリングが完成したラットを用いたヒスタミンならびにH1作用薬を側脳室内に投与して検討した結果, 扁桃核キンドリング発作はこれらの薬物により有意に抑制された.しかしH2作用薬では効果は認められなかった.ヒスチジンおよびヒスタミン-N-メチル基転移酵素の阻害薬であるメトプリンの腹腔内投与でもキンドリング発作は抑制された.H3受容体はヒスタミンの合成および遊離を調節している自己受容体であり, その拮抗薬は, ヒスタミンを投与した場合と同じ効果を示すと考えられる.H3受容体拮抗薬であるチオペラミド, AQ0145およびクロベンプロピットは, 側脳室内投与でも腹腔内投与でもキンドリング発作を抑制した.ヒスタミン, ヒスチジンおよびH3拮抗薬の投与により生ずるキンドリング発作抑制作用は, H1拮抗薬であるジフェンヒドラミンおよびクロルフェニラミンにより拮抗されたが, H2拮抗薬であるシメチジンおよびラニチジンでは拮抗されなかった.従って, ヒスタミンによるキンドリング発作抑制作用はシナプス後膜に存在するH1受容体を介して発現することが明らかとなった.ヒスタミンによるキンドリング発作抑制作用の作用機序解明を試みた結果, GABA神経系を活性化させるジアゼパム, バルプロ酸およびムシモールによりヒスタミンの効果は増強され, GABA拮抗薬であるビククリンにより拮抗された.これらの成績より, ヒスタミンによるキンドリング発作抑制作用はGABA神経系と密接に関連していることが明らかとなった.

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