日本薬理学雑誌
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治療薬シリーズ (4) 脳梗塞急性期
脳梗塞急性期におけるアストロサイト特異的タンパクS100Bの役割
品川 理佳下田 泰治鏡石 佳史鎌中 喜久
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2006 年 127 巻 6 号 p. 485-488

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抄録

アストロサイトは神経細胞の支持細胞として細胞外イオンおよび神経伝達物質の恒常性維持や神経栄養因子の供給などの機能を有し,脳機能を制御する重要な役割を担っている.脳虚血などで,アストロサイトの異常活性化に伴って産生,分泌が亢進するS100Bは,高濃度では神経細胞やミクログリアさらにはアストロサイト自身にも作用して,炎症性因子の発現を増加させ,病態悪化に関与している.Arundic acidはアストロサイトに取り込まれて,S100B産生を抑制し,神経傷害性に働くグルタミン酸,フリーラジカル,炎症性酵素などの産生を抑制して神経細胞保護作用を示すことがin vitro実験で明らかとなった.また脳梗塞動物モデルを用いた検討でも,アストロサイトの活性化を抑制して,脳梗塞巣の拡大を抑制し,神経症状を改善する効果が認められた.以上よりArundic acidはアストロサイトの異常活性化を抑制することによって脳保護作用を発揮する世界初の薬剤であり,急性期脳梗塞治療薬としての有用性が期待される.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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