日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
吸入ステロイド喘息治療薬ブデソニド吸入用懸濁液(パルミコート®吸入液)の薬理作用と臨床効果
渡辺 秀子矢野 誠一影山 明彦
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2007 年 129 巻 3 号 p. 197-207

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抄録

吸入ブデソニドは,持続性の局所抗炎症作用および気道選択性を有し,気管支喘息の治療薬としての高い効果が期待されてきた.細胞内のブデソニドは,エステル体では不活性だが,組織リパーゼによる緩徐な加水分解を受け活性化される.この可逆的エステル化により,組織内での曝露および受容体飽和が持続し,長時間の抗炎症作用が発揮される.この特性に関して,in vitro(ヒト気管上皮細胞)において脂肪酸エステル体生成が確認され,吸入投与後のヒト切除肺組織内においてもブデソニドと共にブデソニドエステル体が実際に存在することが確認された.さらに,副腎摘出ラットの気管内注入の研究では,ブデソニドは,エステル化を受けないプロピオン酸フルチカゾンと比較して,局所抗炎症作用がより長時間持続することが示された.一方,ブデソニド吸入投与後,血漿中および末梢組織内では,エステル化がほとんど認められないことがラットの研究で示された.ブデソニドの水性懸濁液によるブデソニド吸入を用いた米国での小児気管支喘息患者を対象とした臨床試験では,12週間投与における試験成績(4試験)より,有効性および安全性が確認され,52週間投与における試験成績(4試験)より,長期の安全性が示された.本邦では,6ヵ月から5歳未満の小児気管支喘息患者を対象に第III相オープン臨床試験(試験0765)が実施され,24週間投与での有効性および安全性が確認された.さらに,本試験の投与継続試験である試験0768では,最長96週間の長期投与においても安全性に懸念を示唆する所見ならびに徴候は認められなかった.以上より,ブデソニドは気管支喘息に対して高い効果と安全性が示された.本剤の導入によって,既存のステロイド薬の吸入を効率的に行えない乳幼児患者に対して,新たな治療薬を提供する機会を得たと考える.

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