日本薬理学雑誌
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総説
非線形回帰法によって薬理研究の精度は向上する
─酵素阻害薬の阻害定数の推定の事例─
山崎 亜紀子久米 英介田中 澄子浜田 知久馬吉村 功
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2008 年 131 巻 3 号 p. 195-203

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抄録

酵素阻害定数Kiの推定には統計学的には非線形回帰法を用いることが推奨されている.しかし,アンケート調査を行った国内製薬企業の創薬研究ではLineweaver-Burkプロットなどの直線を当てはめる方法(従来法)が使用されていた.従来法は非線形回帰法に比べて推定精度が劣り,ときに極端に偏って推定された値の発生をもたらす.実際の実験データを用いて従来法と非線形回帰法で阻害定数Kiを推定したところ,両者の間には3倍から1/4倍の違いが生じた.また,従来法はMichaelis-Mentenモデルに整合しない結果をもたらしやすかった.さらにモンテカルロ法で定量的な性能比較を行ったところ,従来法は非線形回帰法に比べて推定精度が悪く,真値から大きく外れた推定値が生じることがあることが分かった.従来法の欠点は論理的な考察からも明らかなので,阻害定数Kiの推定には非線形回帰法の活用を推奨する.

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